Optane Memoryの32GBモデルの販売が始まった。Optane Memoryは、ストレージ向けのキャッシュソリューションで、主にHDDのキャッシュとして利用することを想定した製品である。Optane Memoryの16GBモデルのレビューはすでに行なっているので、本稿では32GBモデルのOptane Memoryをあれこれいじってみた結果をレポートしよう。
そもそもOptane MemoryはNVMe SSD
最初にOptane Memoryについておさらいしておこう。本稿で紹介しているOptane Memoryは、IntelとMicronが共同開発した不揮発性メモリー「3D XPoint」を採用している点が特徴のストレージ製品である。主にHDDのキャッシュとして利用することを想定した製品となっており、記録容量は16GBのモデルと32GBのモデルが用意されている。
Intelでは以前「Smart Response Technology」(SRT)というSSDをストレージのキャッシュに利用する機能をチップセットに搭載しているが、Optane Memoryで実現するキャッシュ機能はこの拡張版に相当する機能だ。なお、Optane Memoryそのものは容量が少ないだけで、“普通”のNVMe SSDとして設計されている。このため、OS起動ドライブとして利用することも可能な製品となっている。
Optane Memoryのストレージ単体としてみたときの特徴は、3D XPointという高速な不揮発性メモリーを採用していることで小容量でも読み書き速度が非常に速く、寿命も従来のNANDメモリーと比べて一桁以上長いことである。例えば、現在の主流のTLC NANDメモリーでOptane Memoryと同容量のSSDを設計すると、16GBモデルなら読み込み速度で約10分の1、書き込み速度は6分の1ぐらいとなる。これから考えると、Optane Memoryは容量の割には非常に高速な製品と言えるだろう。
プラットフォーム機能としてのOptane Memory
一方で、Optane Memoryには“プラットフォーム機能”としての側面もある。同社ではOptane Memory及びそのロゴを「個々のコンポーネントで構成された“プラットフォーム機能”を表す」としているからだ。Optane Memoryのプラットフォーム機能とは、Optane Memory対応機器で実現するシステムドライブ(OSの起動ドライブで、通常はCドライブとなる)のキャッシュ機能である。
対応機器の詳細は公式情報を参照してほしいが、基本的には、ストレージとして販売されているOptane Memoryに加え、Intelの最新チップセット「200シリーズ」を搭載し、かつ対応UEFIを適用したマザーボード、CPUにはKaby Lakeこと第7世代Coreプロセッサーを必要とする。
また、マザーボードに搭載されているM.2スロットは、PCHに接続されている必要があることに加え、「PCH Remapped PCIeコントローラー」機能をサポートしていること。そして、インテルのRST(Rapid Storage Technology)15.5以降のドライバーまたはOptane Memory用に配布されているドライバーをインストールする必要もある。
なお、PCH Remapped PCIeコントローラーの機能は、NVMe SSDを利用してRAIDを構築する場合に必須の機能でもある。このため、NVMe SSDのRAIDをサポートしたIntel 200シリーズチップセット搭載マザーボードと第7世代Coreプロセッサーを利用していれば、Optane Memoryのプラットフォーム機能を実現するためのハードウェア要件を基本的には満たすことができる。
また、Optane Memoryのプラットフォームで加速できるストレージは、512バイトセクターのストレージまたは512バイトセクターのエミュレーションを行なっている512eタイプ(AFT)のSATA接続のストレージに限定されている。しかし、4KネイティブフォーマットのHDDやSSDは、一般的にはほとんど販売されていない。このため、一般的なユーザーの利用環境であれば、加速するストレージが問題となってOptane Memoryのプラットフォーム機能が実現できないことはないだろう。
と、このようにプラットフォーム機能としてOptane Memoryを利用するとさまざまな制限があり、その中でもOS起動ドライブでしか使えないという点が導入のハードルを高くしている。また、RAID機能を使うということは、UEFIでSATAの動作モードをAHCIからRAIDに変更しなくてはならないため、AHCIで運用しているユーザーはOSを新規インストールしなければならないのも難点だ。
となると、すでにOS起動ドライブで高速なNVMe SSDを使っているユーザーにとっては、この2点のせいでなかなか扱いづらい製品に思える。しかし、後述するが32GBモデル限定で、実はOS起動ドライブではないDドライブなどのデータ格納用ドライブでも、Optane Memoryをキャッシュとして使う方法がある。順序立てて説明していこう。
OSを新規インストールしなくてもキャッシュ機能を利用可能
Optane Memoryをストレージキャッシュとして利用する方法は2つある。1つは、対応機器で利用する場合のOptane Memoryプラットフォームとしてのキャッシュ機能である。もう1つは、Intel SRTを利用したキャッシュ機能だ。Intel SRTは、9シリーズチップセット以降、NVMe SSDのサポートを行なっており、NVMe SSDをSRTのキャッシュとして利用できるようになっている。ストレージとしてのOptane Memoryは、OSからは単なるNVMe SSDとして認識される。このため、SRTを利用してもOptane Memoryをストレージキャッシュとして利用できるのだ。
Intel SRTを使えば、Intel 100シリーズチップセットなどのプラットフォーム非対応機器でもOptane Memoryをキャッシュとして利用できる。ただし、Intel SRTでの利用は、上記のOptane Memoryプラットフォームの要件を満たす利用方法ではない。つまり、Intelが公式にサポートしている利用方法ではないので、自己責任で利用することになる。
また、Optane Memoryのキャッシュ機能の利用はOSの新規インストールを行なわなくても、現環境から移行できる。例えば、すでにSATAのHDD/SSDをシステムドライブとして使っている環境にOptane Memoryのキャッシュ機能を追加することが可能だ。逆に速度が遅くなる可能性があるため利用者はいないと思うが、OS起動を行なっているNVMe SSDにキャッシュとして追加することもできる。
次にOptane Memoryをストレージキャッシュとして利用するための設定についてだが、Optane Memoryをプラットフォーム機能として利用する場合も、Intel SRTで利用する場合も、キモとなるポイントはまったく同じだ。1つは、UEFIの設定変更。もう1つは、Intel製のデバイスドライバーのインストールである。
UEFIの設定は、CSM(Compatibility Supported Module)の設定を「オフ」または「UEFI First」に設定することに加え、SATAの動作モードを「RAID」または「Intel RST Premium With Intel Optane System Acceleration(RAID)」にセットし、Optane Memoryを装着したM.2スロットの「PCH Remapped PCIeコントローラー」の機能を「オン(Enable)」にすることである。
PCH Remapped PCIeコントローラーの機能の設定項目名は、マザーボードによって画面上の表記は異なるが、通常は「M.2_X PCIE Storage RAID Support」や「RST Pcie Storage Remapping」などと表記されている。PCH Remapped PCIeコントローラーの機能をサポートしたマザーボードならSATAの動作モードをRAIDに変更すると、これらの設定項目が表示されるので、Optane Memoryを装着したM.2スロットの設定を「オン(Enable)」に設定する。
なお、PCH Remapped PCIeコントローラーの機能をオンにしたM.2スロットは、PCHのRAID機能の管理下におかれ、通常のM.2スロットとは別の制御となる。このため、デバイスドライバーもWindowsに標準で備わっているNVMe用のインボックスドライバー(StoreNVMe.sys)ではなく、IntelのRAIDドライバーをインストールする必要があることを覚えておいてほしい。
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