数年後の主流を先取りする、意欲的な製品
日本HPは現在、「コア」「成長」「将来」の3つの領域でデジタルデバイスやプリンディングソリューションを展開している。Sproutは、その製品ラインアップの中でも、「将来」を見据えた、新しい領域を切り開く製品となっている。
この領域でHPが掲げるキーワードが「Blended Reality」だ。デジタルと現実世界をシームレスにつなげることで、もっと便利な世界を実現していくのが狙いだ。
会見には、日本HPの代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏が出席した。
「Sprout(スプラウト)は辞書で引くと芽生えといった意味が書かれている。(この名前から分かるように)将来はこういう方向に進んでいくとHPとして提案していく製品だ。海外では3世代前から開発を進めてきた製品だが、ようやく日本でも実用的な商品として提供できるレベルになった」(岡氏)
「(3つのうち)将来とは、2年以上先にマーケットが広がってくるはずだと考える領域で、HPとしてここに投資していくんだと決めていく分野。デバイスという観点では、イマーシブ(没入型)のARやVRといったもの。また、3Dプリンターもマスプロダクションの世界で使われ、よりコンピューターの需要が高まる。プリンティングとデバイスではこの2種類を攻める」(岡氏)
PC/プリンター市場は復調の兆し、2020年に向けた成長を
世界市場で見た場合、HPの2017年第2四半期の売上は7%増の1億2300万ドル(約1兆4000億円)と好調。3四半期期連続での成長となったが、PC(6割)/プリンター(4割)という同社の主軸事業のうち、PCの売上は10%増、プリンターの売上は2%増と両方がプラス成長になった。これは実に6年ぶりだという。
特にPCのシェアは個人・法人含めて世界No.1に返り咲いてから伸長を続けており、直近で21.3%(+2.3%)のシェアを獲得した。PCはグローバルで見てもトレンドがプラス成長に転じている。その中でHPは、PCのボリューム(販売台数)を追うよりは、ブランドやプレミアム性を重視しているが、その戦略が堅実に実を結んでいるとのこと。
一方、プリンター市場は厳しさがあるが品ぞろえを広げ、産業・商業プリンター、3Dプリンターの出荷を開始したという。
「世界市場においてHPのビジネスPCのシェアはずっとナンバー1だが、マーケット以上の伸びを広げて2位以下との差を広げている。かつてはホワイトボックスと言われ、世界に500~600のベンダーがあったが、PCベンダーの寡占化が進んでいる。小規模のベンダーのビジネスが小さくなるなか、PC以外のビジネスに移行していく現状がある」(岡氏)
日本HPは、国内のビジネス向けPCでも3位のシェアを占める。このシェアも市場の成長率を超えた、安定的な成長が得られているという。マーケットとしても、XPサポート終了の特需などがあった一昨年の前年対比-40%という状況から復活している。岡氏も「PCのビジネスはまだまだ終わらない。次のリプレースメントサイクルに入って、2020年まで安定的に伸びていくだろう。日本でもビジネスを成長させられるかが課題だ」とコメントした。
Sprout Proは教育を中心に、店頭端末や製造業でも応用できる
製品説明のため登壇した、パーソナルシステムズ事業本部 ワークステーションビジネス本部の小島順本部長は、「ひとことで言えば、本当のオールインワンコンピューター」と製品を位置づけた。
特に「キャプチャーソリューション」が多様で、これまでも機器を組み合わせればできたが、1台で完結し、しかもここまで簡単に使えるシステムに組み上げたものはないのではないかと自信を示した。
操作性にも配慮されており、ランチャー機能を使って、主要機能(アプリ)を一瞬で呼びさせたり、専用アプリ(WorkTools)を見つやすくするGUIなども用意している。コンテンツ管理、2Dキャプチャー、3Dキャプチャーなどに加え、スタイラスを利用し、紙に近い摩擦感のあるマットの上で作画するクリエイティブ用途や、タッチ操作を組み合わせたリテール向けのディスプレー用途など多彩な応用が利く製品だ。
3Dスキャンは物体を手で持って様々な角度から撮影するだけで可能。精度は工業向けなどと比べれば低いが、教育現場とかで、簡易的に3Dスキャンができる。より高精度にスキャンしたい場合には、「HP 3D Scan Software Pro v5」を使い、ターンテーブル上に置いた物体をスキャンすることもできる。
市場別に使い方を提案していくが、一番のターゲットは教育だ。教室のどこかに置いておいて自由に使える。芸術系の作品や工作をスキャン。ウェブ上で展示。考古学 遺跡を発掘してすぐにスキャンし、3次元資料にして伝える。芸術分野でデジタル作画への応用するなど、1台で完結した利用が可能だ。
一方製造業では、組み立て、組み付け修理などへの応用が有力だという。パーツなどを机の上に置き、上から光を当てられるので、このパーツをここに組み付けろという指示がより分かりやすくなる。また、建築であれば、ウォークスルーで中に入っていける コマみたいなのを平面図の上で動かして視点を変えるなど、マウスキーボードだけでは違和感のある操作も直感的になる。
さらにリテール用途、つまり小売店のキオスク端末やデモンストレーション端末などにも使えないかと検討中だ。手書き文章を入れたり、注文書をスキャンしたりといったことも可能で、手元で操作しながら結果を画面に出すなど2画面のオペレーションもできる。また、銀行の無人窓口で、手書きのサインを取り込めたり、ウェブカムを利用して、遠隔地にいる行員と会話しながら操作するといったことも可能になりそうだ。
テストマーケティング的な意味合いが強いため、発売当初は台数限定のプロモーションプライスで販売していくことを考えているとのこと。具体的な利用イメージは下のムービーを見ると分かりやすい。
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