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野蛮な自撮り棒は捨てよう! 自撮りドローン「Air Selfie」は教えてくれる

2017年05月22日 15時00分更新

 私は、ドローンというのはデジタルのいまを教えてくれるサイコーの教材だと思っている。スマートフォンやArduinoなどによる高度で安価なチップやセンサー、そしてソフトウェアで、これから何が起きるかを目の当たりにできるからだ。

先週末に筆者の手元にも実機が届いた「Air Selfie」

筐体はコンパクト。ファミコンのカセットより一回り小さいサイズだ

 最初のホビー用ドローンのヒットは2010年のフランスPARROT社の「AR.DRONE」だ。並行するように、任天堂WiiのヌンチャクコントローラーとArduinoを組み合わせた「MultiWii」なるオープンソースのプロジェクトが登場。その間に、中国のDJIが頭角をあらわしてきた。ドローンの歴史は、現状、これですべてだと言ってもよい。

 それ以前に、草分けの米国「DraganFly」もあるし、『Hunter Killer : Inside America‘s Unmanned Air War』(T・マーク・マッカーリー中佐、ケヴィン・マウラー著、深澤誉子訳、角川書店=私は解説を書かせてもらった)のとおり、「いまや戦場はドローンで溢れかえっている」。軍事用ドローンもCICADAやLOCUSTと小型・コモディティ化が進んでいるのではあるが、ここではあくまでホビーというお話。

難しいという意見もあるが……

 さて、昨年暮れにKickstarterに登録されるや世界中から注目された「Air Selfie」が届いた。「自撮り」(Selfie)専用(?)のドローンで、国内でも体験会が行われたのだが「コントロールが難しい」とか「画質があんまり」という評判が先行してしまった。ライターの方々が正直に伝えてくれたのは、もちろん正しい姿勢だといえる(過度な期待を持たせるのは良くないですからね)。

 しかし、今回、私がAir Selfieを飛ばしてみた感想は、次のとおりなのだ。

  1. ドローンの初心者でも2、3回で安定して飛ばせそう。
  2. 正しい使い方をすれば十分シャッターが押せる余裕があるくらいの安定感。
  3. Selfieモーションコントロールモードがお勧め。
  4. 画質はお世辞にも良くない。動画はブレまくる。
  5. パーティでも使える! オタクの集まりなら大受け間違いナシ(たぶん)

 ドローンには、2種類の製品があることを、ドローンユーザーの方々はご存知のはずだ。1つは、空中に放りだしてコントローラから手を離したら、よそ見をしようが、トイレに行ってこようが、ずっと空中の同じ場所にホバリングしている製品。もう1つは、まったく逆に、コントローラの操作を一瞬でも誤るとすぐに墜落か、壁などの障害物に激突してしまう製品である。

 つい1年ほど前まで、国内発売されているホビー用ドローンでは、中国DJI Phanton シリーズとフランスParot社の製品しか1つ目の種類のドローンとは言えなかった。全国に、それを知らずに買ってドローンを墜落させて泣いたユーザーがどれだけいたことか(2014年に私が書いた記事をちゃんと読んでくれたらそんなことはなかったのにと本当に思う)。

 Air Selfieは、Parrotの「mini Drone」シリーズの安定感まではいかないが、それに近いレベルを実現している(以下のビデオを見てもらうのが早い)。このデザインを考えるとなかなか凄いことである。

どんな画が撮れるのか?

Air Selfieを筆者が飛ばしているところ

Air Selfieが撮影した映像

 これを見ると、「なんだいままでのドローンと変わらないじゃん」と思われる人がいるかもしれない。実際に、スマートフォンを傾けることで位置をコントロールしている。重要なのは、それほど神経を使わなくても安定して空間のほぼ同じ地点に留まるので、十分にスマートフォンから手を放してシャッターを切る(画面の一部をタッチする)余裕があることだ。ビデオでは、まだ慣れないため無理やり手で受けとめているが、スマホ画面の操作で一発で着地させることもできる。

撮影サンプル

 マニュアルにあるとおり、この種の画像やセンサーを使って安定飛行するドローンでは、床の色や材質や部屋の明るさが、コントロールに影響する。また、飛行前に平らところに置いて10秒間のキャリブレーションも必要である。ライバルといえる製品は、顔認識でいろいろ遊べる「Dobby」だが、199グラムもある。それに対してAir Selfieは上から落ちてきても気にならないほどの61グラム(ファミコンカセットなみの重量)しかない。

底部にセンサーが付いている

 だいたい、自撮り棒というのが、なんとも人を喰った野蛮な道具である(棒なのでどんな乱暴を働きそうかキケンな匂いすらする)。それに対して、こんな未来を感じさせるクラウドファンディングの製品が期待を大きく裏切らなかっただけでも奇跡ではないか? 3万円ちょっとで、ここから未来のことを考えられる。Air Selfieは、ドローンの歴史に、小さいながらも足跡を残す製品だといえる。

Air Selfieのカメラは水平固定だ。高さ20メートルまで上げられることになっているが(風を気にしなければだが)、高い視点からの撮影は相応の距離をとる必要がある。ここは、Dobbyのようにカメラの角度の変更ができるようにしてほしかった。

4GBのmicroSDカードと260mAhの7.4vバッテリーを内蔵、約3分間の飛行が可能。充電には約40分かかるが、10分で50%まで充電可能。パワーバンクで出先でも気軽に再充電できるので意外にストレスはない。

パワーバンクがケースにもなっているので、いままでのドローンのように小さくても専用の箱に入れておそるおそる運ぶなんて必要はない。まさに生活空間にドローンがやってきたと感じさせてくれる。

Air Selfie 公式サイト:http://www.airselfiecamera.com/

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。2010年よりドローンを飛ばしている。著書に『ソーシャルネイティブの時代』、『ジャネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著、アスキー新書)、『NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座』(講談社)など。

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