あの「風に吹かれて」のボブ・デュランがアメリカンスタンダートをうたうなんて、なんて時代になったのかと嘆くか、驚喜するか。もはやフォークのキングではなく、大人の上質なスタンダードシンガーではないか。
しっとりとした渋い声が年輪を感じさせる。ひとことひとことに意味と思いを込め、丁寧に歌唱する姿からはかつての、フォークの時の絶唱の片鱗もないが、でも、これがボブ・デュランとは思わなければ、とても心に染みいる濃密な歌唱だ。しわがれ声が、高精度でハイクオリティに捉えられるのが、ハイレゾのボブの魅力だ。
FLAC:192kHz/24bit
Columbia、e-onkyo music
平原のヴォーカルは、情報性が豊かだ。輪郭がしっかりと明確に描かれ、音楽用語でいうと、「マルカート」(一音一音をはっきりと奏する)的な明瞭さとくっきりさが特徴だ。輪郭が張っているので、音の伸びがクリヤーで、テンション感が高い。
本アルバムでは、一曲目の「結婚しますが」の音調がフラットでエコーも少ないから、平原の歌声の特質がよく分かる。2曲目「約束のこの瞬間(とき)」に以降はエコーをたっぷりまぶせた響き豊潤型になるので、平原の本当の歌の素晴らしさが、エコーでカバーされてしまう。ゴージャス感もよいが、「結婚しますが」の生成り調はとても素敵だ。
FLAC:48kHz/24bit
EMI Records、e-onkyo music
ライブならでの興奮感とエモーションにも拘わらず、歌音がたいへんクリヤーだ。拍手がなければ、この歌声の解像感ととすっきりと伸びるヌケ感はライブとは思えないほどだ。
バックのバンドの輪郭の切れはいまひとつだが、とにかく八神の鋭角的な透明な声質は、まったく以前と変わらないのが驚異だ。編曲があまりに現代風なので、オリジナルに親しんだ向きには戸惑いを覚えるほど。「パープル タウン ~You Oughta Know By Now」は8ビートのロックになり、疾走する。歌はどこまでも透明だが。
FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Direct.、e-onkyo music
ニュー・サウンズ・イン・ブラス 2017
東京佼成ウインドオーケストラ
まさに豪華絢爛を地でいく、ゴージャスで、音数の多い録音だ。大編成としてのマッシブ感、スケール感、雄渾さは当然として、細部まで目が行き届き、スムーズで質感の高い音調でもある。吹奏楽団としてのノリの良さと、各楽器が集積される重層的な感覚が、高い次元でバランスする名録音。
音場は横に、奥に広く展開する。華麗な音のバラエティを、洪水のように浴びたい人向け。
FLAC:flac 88.2kHz/24bit
USM JAPAN、e-onkyo music
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