評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!
新『ロータスの伝説』である。昨年暮れに日本のソニーミュージックの倉庫で、サンタナの1973年7月3、4日大阪公演を収録したアナログ・16チャンネルテープマルチテープが、発見された。本テープからLPの収録時間の関係で当時カットされた未公開音源7曲(約35分)を加え、全29曲の演奏曲順通りの完全版に仕立てた。
あらゆる意味で完成されたセッションバージョンと異なり、本ライブはまさにラテンロックバンドとしての快適な乗り、乱舞するギターの色彩感、そしてリズムのキレとスピード感が体感できる貴重な音源だ。44年前のアナログ録音だから、最近のハイレゾ録音のような解像感、精細感は望めないが、音の太さ、剛性感、輪郭の量感……など、アナログ的な、そしてライブでなければ得られない音質的な記号性が満載だ。熱気と官能性が高く、サンタナのギターの歪み感が心地良い。冒頭、左チャンネルからMCが、「これからサンタナは一分間の瞑想に入ります」といって、本当に無音(会場ノイズはあるが)になり、瞑想するのである。正真正銘のライブ全収録である。
DSF:11.2MHz
Sony Music Labels Inc.、e-onkyo music
『MY ROOM side1』
Hiroko Williams
2014年9月から始まり、これまで5作品がリリースされ、ウィリアムス浩子の人気を不動のものにした“MY ROOM”シリーズ。その第1作のハイレゾ化だ。
オーディオルームでのレコーディングがミソだが、どこのだれのルームかは明らかにされていない。「電源からルームアコースティックの細部にまでこだわったオーディオ的配慮」を行ったとe-onkyo musicの当該ページでは述べている。
ギターとヴォーカルというシンプルなデュエット。実にクリヤーでクリーンな音だ。電源を整えたオーディオ・ルームとのことだが、まずS/Nの水準が高いことに驚かされる。周波数特性も癖っぽさが少なく、バランスの佳さが聴ける。ウィリアムス浩子の声は、ピラミッド的な安定的なF特を持ち、フレージングが濃い。声の質感が清潔で、ニュアンス感の揺れ動きなど、キメ細かく再現されている。馬場孝喜のギターの質感も細やかで、優雅。落ち着いた丁寧な輪郭にて、上質でスムーズな音調。耳の快感だ。
WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit
Berkeley Square Music、e-onkyo music
『R.シュトラウス:楽劇《薔薇の騎士》』
レジーヌ・クレスパン、イヴォンヌ・ミントン
マンフレート・ユングヴィルト
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・ゲオルグ・ショルティ
アナログの絶頂期のウィーンフィルならではの妖艶で香り高い音調が濃密に伝わってくる。ウィーンの貴族生活での婚礼にまつわる、愉快なエピソードを音にするに、ウィーンフィルほどふさわしい楽団はあろうか。
「ウィーン」という記号性のみならず、ウィーンフィルの持つ音色、音質、メッセージ性は、この退廃の貴族文化を描くに最適だ。ゾフィエンザールの豪華で華麗な音色もこの演目にふさわしい。当時のデッカの録音技術の高さが分かる華麗絢爛にして、細心丁寧なのである。当時のデッカの看板コンビ、ショルティ/ウィーンフィルならではの優秀作品だ。1968年11月、1969年6月、ウィーン、ゾフィエンザールで録音。
FLAC:192kHz/24bit
Decca、e-onkyo music
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります