ダンボールで作る棚やカメラアクセサリーが商品化
サービスが始まってから商品化された例は2つある。ひとつは王子産業資材マネジメントが募集した「オープンデザインを活用した新しいダンボール家具」。製紙業で有名な王子グループであり、社内外への創造的な総合包装提案する、2015年4月にスタートした若い会社だ。
お題は軽量かつ強靭で、木材やスチールの代用として採用される「ハイプルエース」というダンボール材を使った新しい家具のコンセプト。使う人が自分の生活や環境に合わせてデザインできる、「オープンデザイン」を活用してほしいという募集をした。
応募は61案あり、選ばれたのは2案。うち「D plus」という案が商品化された。D plusは自分でカスタマイズできる、ディスプレー向きの棚だ。ハイプルエースに規則的な十字の隙間が開けられ、そこにパーツを差し込むことで棚を作り、物を置けるようになる。軽く、自由にレイアウトを変えられるので店舗のディスプレーで使われる事例があるという。
もうひとつはオリンパスのレンズだけカメラ、「OLYMPUS AIR」のアクセサリーだ。オリンパスはアウトドアでの新しい撮影体験コンセプトを募集。3Dプリンターで生産できること、という条件も付けた。応募は30案あり、カラビナマウンターなど3案が製品化された。
コンセプトのプレゼンは現在も閲覧できる。商品化されたコンセプトはどれもシンプルで、すっきりとした内容であり、わかりやすくて理にかなっている。メーカーを納得させるアイデアとプレゼンはこういうものなのかと、うなるようなものばかりだ。
日本のモノづくりは2016年あたりから変わった
今後の大きな目標を聞くと「僕らの手を介さずに数十、数百というプロジェクトが毎月あり、商品が生まれ、その収益が関わった人たちに還元される。そういうエコシステムがWemakeにできるのが目指すところ」と山田さんは答えてくれた。
また余談ながら、最後に日本のモノづくりについての現状と問題を山田さんに聞いた。
現状については「起業してから大きな潮目が2つあったと思う。ひとつは2012年にクリス・アンダーソンの『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』によるメイカーズムーブメント。もうひとつは2016年の頭くらい。オープンイノベーションが完全に実行ベースに入ったと思った」と話す。
2016年についてはソニーのクラウドファンディング「First Flight」が大きいという。ソニーもこういうことをやるんだというところにインパクトがあり、さまざまなメーカーの人の認識を変えたと考えているそうだ。事実、エイスに問い合わせが増えたのも2016年頭以降とのこと。
問題点は企業の現場組織が、Wemakeを借りてコンセプトや商品を作り上げる、オープンイノベーションに適していない場合がまだまだあることを挙げた。オープンイノベーションを取り入れないといけないとは思っていても、やってみると現場がどうしたらいいのか戸惑う、という場面に出くわすそうだ。
山田さんの実感や、ベンチャー企業やクラウドファンディング(いまでは多くがマーケティングのためのものになってしまっているが)によって新しい製品が次々と出てくるいまの状況を見るに、日本のモノづくりが変化していることは確かなようだ。
その中でWemakeのような、視点が変わったサービスが登場しているのはとてもおもしろい。
今後どういう商品が出てくるのか、どういった企業がオープンイノベーションを取り入れるのかが気になるところ。歴史に残るようなものが登場することを期待したい。
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