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HiFiMANのSHANGRI-LA

ヘッドフォン祭 2017が開幕、約600万円の超ハイエンド機が登場

2017年04月29日 12時50分更新

 フジヤエービック主催の春のヘッドフォン祭 2017が4月29日、中野サンプラザで開幕した。200に迫る国内外のブランドが集結。さらにこの会場で発表される新製品も多数登場する日本最大規模のオーディオイベントのひとつだ。

約600万円のド級ヘッドフォンが登場

 イベントの皮切りとなる、29日の午前には、HiFiMANのド級ヘッドフォン再生システム「SHANGRI-LA」が登場した。静電型ヘッドフォンに真空管アンプを組わせたシステムで、価格は594万円。受注生産で、ゼンハイザーの「HE-1」と並ぶ、世界最高峰クラスの製品と言えるだろう。

SHANGRI-LA

 発表会にはHiFiMANからCEOのファン・ゲン氏が登壇。同社は10年を超す歴史の中で、静電型/平面振動板採用のヘッドフォンに積極的に取り組んでおり、「HE1000」「Edition X」「HD400S」など歴代製品を開発などを紹介した。

 数1000の試作を重ねて開発されたSHANGRI-LAは、これまでもいくつかの展示会で登場していたが、ようやくアンプなどの使用部品もフィックスした製品版の試聴が可能になった。

 製品は静電型ヘッドフォンとそれをドライブする真空管アンプ部分で構成。特徴は0.001mm以下と非常に薄い振動板「ナノ・ダイヤフラム」だ。ナノテクを応用用した、細かい粒子で表面をコーティングし、水をたらしても漏れないという。同時に軽く、人間の背の高さから落としても、下に落ちるまで数十秒かかるほどだという。

 この極薄のダイヤフラムに加え、従来のヘッドフォンで起因していた、電極設計に起因する音質劣化を避けるため、50μm以下と非常に細いメッシュを利用している。そうすることで1MHzの高周波の音も歪みなく透過できるという。

 これらの技術を使い、7Hz~120kHzと非常に広帯域な再生周波数帯域を得ている。

 アンプ部分は、カスタム生産した真空管「300B」を4つも使用する。ドライブ段に使うが、300Bとヘッドフォンの間にはコンデンサーも変圧器も入れていない。

 ゲン氏は「300Bは中域はいいが低域や高域が劣るというが、それはアンプの設計の問題。SHANGRI-LAでは、300Bの優れた音をそのまま聴くことができ、高域も低域もいいということを実感できる」とした。

 音量調整はリレーベースのステップアッテネータを利用する。10ppmと高い精度の抵抗を合計23個使用しており、24段階の調整が可能。ボリューム変更時の音質劣化が非常に少ないとした。

 SHANGRI-LAのヘッドフォン部分は重量374g。アンプ部分のサイズは幅437.8×奥行き458.9×高さ335.8mmで、重量は16㎏となる。

約70万円の平面駆動型フラッグシップ機も

 平面駆動型ヘッドフォンのフラッグシップモデル「SUSVARA」も登場した。価格は70万2000円。これまでの平面駆動型ヘッドフォンでは、磁気回路に起因する音の変化があったとゲン氏は話す。振動板の駆動のために、耳と振動板の間に磁石が必要となるが、その隙間を音が通る際の角度によって、音が干渉し、ひずみが生じるのだ。

 着想を得たのが「電波が反射しない」ステルス戦闘機だ。これを「音波が反射しない」に応用できないかと考え、特許技術「ステルスマグネット」を開発した。特殊な形状のマグネットを使い、電極を抜けて音が通る際の干渉を減らしている。またSHANGRI-LA同様、ナノテクを利用した非常に薄い振動板を使用する。

 SUSVARAは、ヘッドフォンとしては低能率でドライブが難しいこともあり、新しいフラッグシップアンプ「EF1000」も発表した。こちらもSHANGRI-LA同様、ステップアッテネーターのボリュームを採用している。価格は未定だが、米国での販売価格は1万5000ドル。国内では165万円程度で販売する予定だ。

 真空管アンプとなっており、ヘッドフォン出力は20WのA級動作。S/N比は110dB、ダイナミックレンジは111dB、全高調波歪み率は0.15%。当初は所有しているスピーカー「TAD CR-1」(能率86dB)用のアンプとして開発していたが、結果が良かったため、ヘッドフォンアンプに応用したそうだ。ただし、ヘッドフォンに応用するためにはより高いS/N比が求められるなど難しさもあった。そのために電源を分離するなどのS/N比を向上するための対策をとったという。

独特なダイヤフラム形状を持つハイエンドイヤフォンも

 20万円を超す超高級なイヤフォンの新製品も発表した。

 ゲン氏は前提として、これまでの高級イヤフォンの問題点を指摘した。BA型ユニットは、小さな箱の中に収められユニットの内部で多数の反射や屈折を受ける。そのため広い音場の実現が苦手。一方、ダイナミック型は分割振動という問題がある。

 そこで開発したのが、トポロジーダイヤフラムという表面に特殊なメッキを施し、独特な幾何学模様を形成する振動板だ。幾何学模様の形状、配合物、厚さなどを調整することで、周波数レスポンスのコントロールができるという。そのためにゲン氏が研究していたナノテクの応用で実現した。

 トポロジーダイヤフラムの技術を最初に採用したのが「RE2000」だ。

 直径9.2mmのダイナミックドライバーにトポロジーダイヤフラムの技術を応用している。カスタム型とユニバーサル型があり、周波数特性は20~20kHz、インピーダンスは60Ω、感度は103dB、真鍮製ハウジングを使用する。重量は13.8g(ケーブルを込みで23g)。22万6800円。

 「RE800」はその弟分に当たる機種で、直径9.2mmのトポロジーダイヤフラムや真鍮製ケースを採用している点は同様。周波数特性は20~20kHz、インピーダンスは60Ω、感度は105dB、重量は27g。価格は8万2800円。よりコンパクトで女性でも使いやすいサイズだという。

 今回発表した製品は基本的に5月中に販売開始する予定だが、SHANGRI-LAに関しては受注生産となるため、販売時期が異なるとのことだ。

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