週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

AK380との差はどれだけあるか

注目の新プレイヤー「KANN」を比較とロードテストで遊び尽くす

2017年05月02日 15時00分更新

一期一会のプレイリストを愉しむシャッフル再生

 せっかくだからKANNの特徴で遊び尽くす使い方もしてみたい。

 僕が第1報を聞いたときに最も興味を惹かれたのは「フルサイズSDに対応」という部分。ハイスペック化によってファイル容量も増大している昨今、容量は多ければ多いほどいい。アルバム数枚分のお気に入り曲をヘビロテするような曲の聴き方ならば16GB程度のカードで十分だが、街を歩いていてふと3年前に買った曲が聴きたくなったときに、手元に音源があるならばやっぱりその音を聞きたい(もちろんできるだけいい音で)。大容量カードはそんな音楽の楽しみ方を提供してくれる。

 それ以上に、大容量カードの恩恵は、多くの楽曲を一度にスタンバイできることだと僕は思う。複数枚のカードを用意すると、カードの挿し替えが面倒で結局同じカードの収録曲しか聴かなくなる。この点が最も活きる聴き方はシャッフル再生だろう。試しに256GBのカードを入れてみたところ、アッサリと使うことができた。ただ、カードを挿しっぱなしにしていると起動時に「データが破損しています」というエラーが借用期間中に一度だけ発生した。

 実はこれ、僕のリファレンス機でもあるAK380でも時々出る現象で、Windows機に接続して「エラーチェック」と「ドライブのスキャン」をかけると復活する。今回も同じ方法で修正したが、iriverにはぜひこの点を修正してもらいたい。

 ちなみにカードスロットに関してもうひとつ。カードは段差なく完全に本体内へ収まる設計になっているため使用中不用意に取り出されることはないが、爪が短いと挿入と取り出しに少々苦労するかもしれない。そんなわけで、個人的なTB級ライブラリーの中からジャンルを問わずに色々なアルバムを256GBのカードに詰め込み、通勤時間を使ってシャッフル再生を試してみた。

 まず流れてきたのはビートルズ「I should Have Known Better」、次はノラ・ジョーンズ「The Long Day Is Over」、そしてまたビートルズの「The Long And Winding Road」という面々。後期ビートルズとノラ・ジョーンズでなんだかスロウな気分になったところで、次に流れたのはアンネ=ゾフィー・ムター「モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第1番 第2楽章」。普段は協奏曲を通して聴く自分のスタイルと違い、第2楽章だけが抜き出されて流れるのもシャッフルの面白さだ。そしてなにより、MP3圧縮では味わえない高音質をシャッフルで聴くというのがいい。KANNの実力もともなってヴァイオリンの響きが心地よかった。そんないつもと違う流れのなか、新鮮な気持ちでムターの響きに聞き惚れていた。

ビートルズ、ノラ・ジョーンズ、ビートルズ、アンネ=ゾフィー・ムター。前3曲はともかく、この流れにムターはなかなか入らない。こういう選曲を容赦なくやってくるのがシャッフル再生の面白いところ

 ところがこのゆったりムードはサルヴァトーレ・アダモ「Mes Mains sur tes Hanches」で一転。思わぬチューンにちょっと面食らった。だが流れを無視したこんな選曲は自発的にはなかなか難しいから、コレはコレで楽しい。

 その次はまた後期ビートルズの「Good Night」。普段はあまり聴かないディスクが掘り起こされた気分。アダモもビートルズもメンズボーカル、つまりKANNの得意分野で、厚いサウンドを楽しむことができた。やはり高音質には音楽世界へ引き込む力があり、それが強いほどシャッフルでまったく違うジャンルに連れていかれるのが快感になる。

 「オルフ カルミナ・ブラーナ 3.Cour d'amours Steit Sella」の静かなソプラノが流れてくる、まるで音楽のジェットコースターのように、次から次へとジャンルもサウンドの性質も違う曲がかかる。これらをひとつひとつ丁寧に鳴らし切るというのは、KANNがオールラウンダーであることの証だ。繊細なベル・カントが終わると、またまたビートルズの「Blackbird」。

アダモ、ビートルズ、カルミナ・ブラーナ、そしてまたビートルズ。前4曲以上にこの選曲はなかなかない。ところでこのシャッフルプログラム、ビートルズ好きすぎじゃないですか? 256GBをほぼ満杯にして、わずか数曲間で半分がビートルズ

 最後にキロロの代表曲「Best Friend」が流れたところ終わらせた。ボーカル曲の比率が高かったが、KANNは最後まできっちりと音楽を聴かせてくれた。

キロロでほっこりしたところで駅に到着し、駅を出た所でATSUKO姐さんのハイテンションな歌声に元気づけられた。こんな一期一会のプレイリストを膨大なライブラリーを使って楽しめる

思い切った大型化による恩恵が見られる

 短い期間だが、KANNに対する僕の印象はズバリ「価格以上」。音質レビューではAK380を引き合いに出してしまったためにネガティブな言葉が少なからず出たが、そもそも両者には圧倒的な価格差があるなかで、あれだけ肉薄した比較ができるというのは見事なものだ。

 中でも少し大柄な本体のおかげで容量もサウンドパワーも増大したことは特筆すべきで、たしかにこの方向のプレイヤーというのは見た覚えがない。こういうサウンドや機能を求めていた人にとってはど真ん中のプレイヤーではないだろうか。ガチガチのリファレンス機にはない、使う楽しさがKANNには詰まっている。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります