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末娘と片づけられない高音質

JH Audioの「Michelle」はマッチョから繊細な音へ

2017年05月03日 13時00分更新

 よく製品ラインアップの上位・下位を姉妹機などと呼んだりするが、JH AudioのSIRENシリーズはまさにそのままのネーミングが特徴だ。

 簡単に言うと、製品のすべてに女性の名前が付けられた4姉妹(最近LOLAという機種も追加された)で、しかも全部がいい音で歌う。ある意味ウハウハのラインアップだが、敢えて言うなら、末娘が一番かわいい。「お前は何を言っているのか?」とツッコミたくなった読者はまったく正しいが、ここ数ヵ月末娘の「Michelle」をじっくり聞き込んできて、何となくそう思っている。

 JH Audioの「SIREN」は形容するなら、豊満というか、ファットというか、基本濃い口の味付けだ。擬人化すれば、間違いなくグラマーな美女を描いてしまうだろう。しかしまあ実際に近くにいてもらうなら、清楚で小柄なユリの様な少女のがいいではないか。そんな爽快さと癒される感じがあるなとMichelleにはあるなと感じている。

若干、どっちつかずな価格帯ではあるが……

 10万円を超す高級イヤフォン市場がにぎわっている中、2016年は上位機種の技術をより安価に提供する製品が増えてきた。

 特に1万円程度のハイレゾイヤフォンや、中国系企業の安価で高音質な製品が増えてきている。製造ノウハウが蓄積され、数1000円モデルでも十分満足度の高い製品がてきたのだろう。

 あくまで主観的なものだが、(音質)÷(価格)=コスパでみた場合、実際のところこれまでの基準をだいぶ補正しないといけない気がする。そんな中、Michelleは実売で5万円を超える価格帯。「このクラスの中~高級価格帯の製品を買う意義はどこにあるのか?」についてはしっかり考えたいところだ。

 一般的に、5万円以上となると、マルチBAもしくはシングルやハイブリッドでもそれに匹敵する高い再現性、リケーブル含めたカスタマイズ性などを備えている機種が多い。ただし、こういう仕様の有無自体はそんなに本質的な問題ではないかもしれない。

 高級イヤフォン、特に海外ブランドを選ぶ際に、より大事にしたいのは、ブランドを体現するような、突出した個性があるかどうかではないかと個人的には思う。

末娘は少し毛色が異なる清純派

 前置きはこのぐらいにして、「Michelle」について紹介する。

 価格は上述のように5万円台(6万円弱)。米国JH Audioのイヤモニ“THE SIREN Series”の中では最も手軽な製品だ。韓国アイリバーの高級ブランド「Astell&Kern」とコラボしたユニバーサルモデルである。

 JH Audioはそのブランド名にもあるように、カリスマ的な録音エンジニアJerry Harvey(ジェリー・ハービー)氏が主宰するイヤーモニターのブランドだ。耳型を採取して作る、カスタムIEM(In Ear Monitor)と呼ばれる製品が有名だが、ハイエンド機種では最大12ドライバーを内蔵し、金属筐体や堅牢性の高いコネクターやケーブル、ライブ感を重視したガッツリと太い低域など、ハービー氏の意向が存分に入ったかなり個性的なブランドになっている。

 JH Audioの製品には耳型を取って作る“カスタム”タイプのイヤモニと、汎用型の“Universal Fit”がある。最上位に君臨するフラッグシップ機・Layla IIは実売30万円程度の非常に高価な機種で、片側12ドライバーを搭載する。

 この企画・販売については、ここ数年JH AudioとAstell&Kernと協業を進めている。過去に「Layla II」「Roxanne II」「Angie II」「Rosie」などがリリースされていて、これらはAstell&Kernと共同開発し、ダブルブランドを冠した製品だ。販売もAstell&Kernの代理店(国内ではアユート)が担当する。

 MichelleはUniversal Fitタイプで、3ドライバー内蔵の末娘的な存在。ハイエンドイヤモニの代表的なシリーズであるJH Audioのサウンドをより手軽に手に入れられる歓迎すべき選択肢である。

 ちなみに名前の由来はビートルズではなく、Guns N'Rosesの『Appetite for Destruction』収録の「My Michelle」だそうだ。

 ただし上位モデルのイメージでMichelleに接すると少々肩透かしを食らうかも。音の性格が変わっている個所がかなりあるのも事実なのだ。本国サイトのUniversal Fitのラインアップにも、Michelleの紹介がないようで、やや特殊な位置づけの製品なのかもしれない。

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