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池澤あやかの自由研究:深センは「スマホ決済社会が到来したら」を体現する街だった

2017年05月09日 10時00分更新

文● 池澤あやか 取材● 中山智 編集● 鈴木誠史/ASCII

 中国・深センといえば、世界一の電気街であり、世界中の工場が集まる街でもあり、ハードウェアスタートアップが生まれる街でもあります。さまざまな側面のある深センですが、今回注目したいのは「スマホ決済サービス」についてです。

 アメリカはクレジットカード社会、日本は現金社会だと言われていますが、中国は完全にスマホ決済社会です。テンセントの「WeChat Payment」や、アリババグループの「Alipay」などのスマホ決済サービスが広く一般に普及しています。

 「広く一般に」というのは誇張表現でもなんでもなく、デパートはもちろん、タクシーや個人営業のお店でもこれらのサービスを使って決済することができます。

日本の駄菓子屋のような風情が漂うお店でも、WeChat Paymentで会計することができました

スマホと深セン通(SuicaやPASMOのような交通ICカード)さえあれば、財布を持たずに生活できるため、深セン通のストラップをスマホにつけている人も。写真はキティちゃん型の深セン通

アリババグループが運営する「ジーマ信用(芝麻信用)」では、今までの決済履歴によって人の信用度が可視化できる機能があるそうです。このスコアによって通販での対応が変わるのだとか

 デパートの中に入っていたシャオミの直営店でさえ、WeChat PaymentやAlipay、Apple Payに加え、中国独自のクレジットカードサービスであるUnionPayに対応するのみで、VISAやMastercardといった国際クレジットカードは使えませんでした。

シャオミの直営店では、モバイルバッテリーを買いました。5000mAhのもので780円ほど。深センで売られているものは「安かろう悪かろう」だと言いますが、シャオミくらい大企業になると、安い上に品質もとても良いです

 カードスキャナーなどの設備の必要があり、手数料の割合が高いクレジットカード決済に比べ、スマホ決済は、スマホからQRコードを発行すれば導入できるため、事業者にとっては大きなメリットがあります。

 いちユーザーとしても、常に手元にあるスマホで決済するため、いちいち鞄から財布を取り出す手間が省けて便利だと感じました。WeChat Paymentでは、送金や割り勘が簡単に行えるというのも大きなメリットです。

WeChatのユーザー同士で送金できる機能

グループチャット内での割り勘機能も用意されています

 WeChat Paymentの利用を開始するためには、基本的には中国の銀行に口座を持つ必要があるそうなのですが、少々面倒な手続きを踏めば口座がなくても利用することができます。

  1. WeChat Paymentを使っているユーザーから少額送金してもらい、それを受け取ります。
  2. 本人確認のため、クレジットカードをアプリケーションに登録します。登録自体は日本で発行したクレジットカードでOK

 こうすることでWeChat Paymentが使えるようになりますが、クレジットカードから支払いができるようになるわけではありません。クレジットカードの登録はあくまで本人確認のためのものです。

 クレジットカードからチャージできないので、お金をチャージする場合は誰かから送金してもらう必要があります。例えば、ホテルのフロントやお店に現金を渡して、WeChatにチャージしてもらうように頼んで使っている知人もいます。

 WeChat Paymentは外国人が使うことを想定していないはずなので、チャージされたお金の保証はできませんが、スマホ決済社会を体験するのはとても刺激的です。観光で中国に行く機会がある方は、ぜひ利用してみてください。

急成長している中国のスマホサービス

 そんなスマホ決済が隆盛を極めている深センでは、それに付随するようなスマホサービスが急成長をとげています。例えば、自転車レンタルサービス「ofo」。スマホでレンタルから決済までの一連の処理を行うことができます。

街中の至るところに自転車が置いてあります

アプリからQRコードをスキャンしてレンタル開始

 まず、乗りたい自転車の後部についているQRコードを専用アプリでスキャンして、レンタルを開始。そして、降りたいところで自転車を乗り捨てて、アプリからレンタル終了処理を行います。アプリはWeChat Paymentと連携することができ、レンタルした時間分だけ決済を行えばOKです。

 昨年冬ごろに街中に自転車がばら撒かれ開始されたサービスですが、既にたくさんの市民に利用されるサービスとなりました。現在では他社も似たようなサービスを開始しています。ただし、中国の電話番号がないとサービスに登録できないため、残念ながら現段階では観光客が使うのは難しそうです。

 レストランでは、スマホだけで注文から決済まで行えるところが増えてきました。テーブルについているQRコードをWeChatでスキャンするとお店のメニューページに飛びます。そこで注文したい料理を選択し、WeChat Paymentで決済を行います。これを利用すれば、店員と会話せずとも、注文から決済まで行うことができそうです。

テーブルについているQRコードをスキャンするとメニューに飛びます

 変わった商品だと、美顔用のパックを取り扱っている自動販売機。街なかにあり、こちらもWeChat Paymentで支払うことができました。

これがパックの自動販売機

 ちなみにこのパックの自動販売機についている光るセンサーに頬を当てると、肌質診断をしてくれて、自分の肌質にあったパックをレコメンドしてくれます。

光るセンサに頬を当てると……

肌質の診断結果が出て、肌質に合うパックをレコメンド

 余談ですが、深センではこういったテクノロジーをフル活用したモノが、何気なく街中に存在しているところに恐ろしさを感じます。このハイテクパック自動販売機もきっと、アーリーアダプターではなく女子向けに設置されたものなのでしょう。

 足を運ぶたび、深センは面白い街だなあと感じます。経済特区に指定されているだけあり、急スピードで変わりゆく街です。昨年10月に行ったときには、中央通りは絶賛工事中で、自転車レンタルサービスも存在していませんでした。

 常に経済的実験が行われているような状態だからこそ、どの側面を切り取っても目新しく、面白く感じるのだと思います。

昨年10月に行ったときには絶賛工事中だった中央通り

現在は工事箇所はほとんどなく、地下鉄も新しい線が増えたそうです

 以上、深センより池澤がお送りしました。

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