どもどもジサトライッペイです。
インテルが家庭向けの宅内IoTプラットフォームの実証実験を始めました。期間は2017年4月~2018年3月までの1年間、各サービス事業社との共同実験となります。
IoTに係る機器すべてにインテル入ってる状態に
さて、IoTとはなにか? 最近巷でよく聞くITキーワードのひとつですが、いまいちピンと来てないのは方も多いのではないでしょうか? そんな方にざっくり説明すると、IoTとは近い将来PCやスマホだけではなく、身近にあるさまざまなモノに通信機能が備わり、それらから得られた膨大なデータを解析して世のため人のために役に立てようってコンセプトの次世代ビジネスです。
例えば、ある飲み屋さんを一例に挙げましょう。ビールサーバーに重量感知センサーと通信チップが入っていると、1日にどれぐらいビールが消費されたかというデータが取れます。そのお店だけでそのデータを使っているうちは、例年より多いか少ないか、ある一定期間の仕入れ量に対してどうだったかなど、情報としての価値が低い状態です。しかし、このデータを気象データ(天気や気温)や、プロ野球の試合日データなど、ほかのデータと連携して解析すれば、どの日にどれぐらい仕入れれば、どのぐらい売れるかといったかなり精度の高い需要予測が可能になります。無駄がなくなれば、その分利益も上がります。
というわけでIoTが普及した未来では、例に挙げた企業はもちろん、個人もそのありがたーい集積データからもたらされる恩恵にあずかれる可能性が高いのです。通信機能を実現するための通信チップ製造会社も儲かりますし、さらに膨大なデータを処理するためのサーバー事業社もウハウハで、インテルの目論見はそれぞれの機器に「インテル入ってる」状態を作り出せると超うれぴーというわけであります。
しかし、このIoTに参入するチップ製造会社はインテルだけではありません。また、あらゆるモノが通信できるようになっても、送信するデータのルールなど、プラットフォームとして共通化されなければ、データ解析は効率よく進みません。共通プラットフォームができなければ、IoTで使う通信チップやそれにともなうインフラへの投資がしづらい状況です。なので、さまざまな会社がIoTの重要性はわかってはいても及び腰な状況が続いている印象を受けます。
そんな中での今回のインテルの発表は、かなりアグレッシブでした。実証実験は、関西地区のファミリー世帯100戸に対し、インテルのAtomプロセッサー搭載ゲートウェイ、及びQuarkプロセッサーを搭載した環境センサーを配置し、宅内IoTプラットフォームを構築するというもの。そこで、“宅内インフラの確立”と“ビジネスモデルの策定”を目指すそうです。つまりは、来たるIoT社会では家屋の中もIoT化(スマートホーム化)される、そのシミュレーションというわけです。
では、実際どんなことをするのかというと、インテル入っている環境センサーで取得したさまざまなデータをインテル入ってるゲートウェイに集積し、クラウドに上げずに解析(エッジアナリティクス)し、ユーザーが確認できるようにします。しかし、そのままではサービス事業社のメリットはありません。そこで、ゲートウェイで匿名化した情報をクラウドにアップし、サービス事業社に有益なデータとして提供するとのこと。この強固なプライバシー保護も実証実験の大きなテーマです。そしてもちろん、クラウドはXeonサーバーを使っているので、クラウドにもインテル入ってるということになります。
また、この実証実験はインテルだけでは行えません。協力パートナーとして、電気使用量の見える化で名高い「関西電力」、IoTクラウドプラットフォームを運用する「Kii株式会社」、IoTゲートウェイの製造を担当する「ぷらっとホーム株式会社」が参加しております。
関西電力は、家庭向けサービスの提供窓口として「はぴeみる電」を運営しており、会員数は203万人もいるそうです。なぜこんなに人気なのかといえば、過去の電気使用量や電気代金の閲覧のほか、独自ポイントの運用(マイレージを含む各種ポイントの交換も可能)や、パソコン訪問サポートキャンペーンなど、ほかの事業者との連携キャンペーンなど、高付加価値なサービスになっているからです。
実証実験の100世帯はこの関西電力の「はぴeみる電」ユーザーから選ばれ、4~8月の間に機器を設置、9月からさまざまな実験がスタートするとのこと。また、配置される環境センサーには、人感センサー、温度・湿度センサー、CO2センサー、照度センサー、震度センサー、COセンサーを搭載しています。これらの情報を集めてそれをもとに、どんなサービスが提供できるか、またそれらはビジネスモデルとして成り立つのか、といったことを考えていくそうです。
また、実証実験はIoTの標準化団体である“Open Connectivity Foundation”(OCF)の仕様に準拠したオープンソースプロジェクト“IoTivity”を、日本で初めて宅内ゲートウェイのプラットフォームとして採用した異種デバイス間の相互運用の検証となるそうです。
IoT時代はどんなデータが誰の役に立つかわかりません。ひょっとしたら、個人で集積できる情報に高い価値が付き、例えばサービス事業社にデータを送ることを了承するとポイントがもらえるとか、そういったことも実現するかもしれません。いずれにせよ、個人的には「どこでもいいから強烈なリーダーシップを取れるところが一刻も早くIoTの共通プラットフォームを確定させ、早く運用して国益を上げまひょ」という気持ちでいっぱいなのですが、IoT社会を実現するためのフェーズはまだまだ序盤。有益な結果が得られる実験になることを祈ります。
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