3月末に「Galaxy S8」が発表になり、今年上半期の各社の新製品が出そろいました。これから夏のボーナスに向け、どの機種を買うか悩ましい日が続くでしょう。
そうやって最新モデルのことばかり考えるのも楽しいものですが、たまにはちょっと昔のビンテージスマホや携帯電話を思い出すのもいいかもしれません。
ミラノの街の電気屋さんは携帯マニア垂涎の店だった
先日取材でイタリアのミラノを訪れていた時、昔ながらのダイヤル式の固定電話機などをショーケースに並べている店を発見。古いラジオなどもあり、昔からある街の電気屋さんのようでした。
ところが、ショーケースを順番に眺めていると、かなり昔の携帯電話もずらりと陳列されています。いったい何故なのでしょう?
しかも、並べられている携帯電話の中には、もう知る人はいないであろう、ドイツメーカー製のフェラーリ携帯が置いてあるじゃないですか。ドイツのHagenukが1998年につくったモデルで、よく見ると後ろにはそのオリジナルバージョン(非フェラーリ)も置いてあります。古いだけではなくマニアが喜びそうなこんな端末があるなんて、店主はタダモノではありません。
店内に入ってみると、中古携帯電話の販売コーナーがありました。しかし、どこにも最近のモデルはありません。2000年代前半に出てきた製品がずらりと並んでいるのです。
手前の左にあるのは2002年発売のノキアの最初のスマホ「7650」ですが、このなかではこれがむしろ新しいと感じるくらい。右手にはPalm OSの「Treo180」が見えますが、これも2002年の製品。
ショーケースは4段になっていて、3番目の段(下記写真の上段)の中央奥にノキアのコミュニケーターが鎮座しています。また、左に見えるのは東芝のPocketPCでしょうか。最下段には自動車電話らしきものも。
自動車電話をよく見ると、メーカー名は不明。SIPのロゴと模様が見えますが、この模様は現在テレコムイタリア(TIM)が使っているもの。調べてみると、SIPは元々国営固定電話会社で、当時はそこが自動車電話を出していたようです。「NTTとドコモ」、みたいな関係でしょうか。
なお、その右側にノキアのQWERTYキーボードスマホ「E61」などがあるのを見つけると、ちょっと安心します。これはいまでもまだ使おうと思えば使える端末ですから。
モトローラとノキアの激レア端末も
このショーケースの中で筆者が最も気になったものが、モトローラの「StarTAC」(スタータック)。昔の映画によく出てきた携帯電話ですね。そのStarTACはさまざまなカラーバリエーションがあったのですが、その各色のパーツを組み合わせたレインボーカラーバージョンというものが存在したのです。
コレクターの筆者は1台持っているのですが、ここに置いてある製品とはカラーの組み合わせが違います。当時このカラーがあったのか、誰かが独自に組み直したのかは不明です。ちなみに、売り値は300ユーロ(約3万5000円)! レア度がわかる人しか買わないだけに、強気の価格設定です。
次に気になったのが、ノキア初のプレミアム携帯電話「8810」。プラスチックボディーに金属メッキですが、1998年の発売当時は「携帯電話界のポルシェ」とも言われた製品で、売値は10万円近くしたとか。傷も少ないいわゆる「ミント状態」でしたが、いまとなっては入手困難な貴重品です。
そして、こちらは映画「マトリックス」で有名になった、フリップ部分がシャキーンと伸びるバナナフォンことノキア「8110」。実機はフリップ部分を手でスライドさせます。
後継機の「7110」はボタンひとつでフリップ部分が飛び出るようになりました。7110は世界初のWAP(Wireless Application Protocol)対応携帯電話。日本がiモードで世界の携帯電話インターネットをリードしていた時代、それを打倒するためヨーロッパやアジアで採用された規格です。まあ、結局いまはスマホに置きかわってしまいましたね。
ところで、普段スマホで使っているSIMカード。現在は「ナノSIM」が一般的ですが、携帯電話時代は「ミニ(標準)SIM」が使われていましたよね。しかし、どの携帯電話もミニSIMを使うのに、なぜわざわざ「ミニ」と呼ぶのでしょうか。
それはさらに古い時代、2000年以前はSIMカードの大きさが名刺サイズ、つまりいまのSIMの台紙そのものだったからです。このノキアの古い携帯電話や、前述のStarTACは大きいカードをそのまま本体に挿入して使いました。いまのようなSIMトレイやSIMスロットではなかったのです。
手で持ち運べる自動車電話は元祖・携帯電話か
こんなSIMが入る携帯電話を見せてくれた後、店主は店の奥からプラスチック製の小型アタッシュケースに入った端末を出してきました。開けてみるとそこにはアナログ回線を使う携帯電話が入っています。
メーカー名はシーメンス、いや、シーメンステレマティクス。シーメンスは昔、携帯電話をつくっていましたが、さらに昔は携帯電話専門の会社があったということでしょうか? ここまでくると筆者ももうわかりません。
この謎の携帯電話に興奮していると、店主はさきほどの自動車電話にストラップを付けた姿を見せてくれました。ストラップと言っても端末を手首にかけるのではありませんよ。肩からかけるのです。きっと当時はこれがiPhoneを持っているくらいカッコイイ姿だったのでしょう。
イタリア語を勉強してまた来てみたい!
この後は、ソニーのジョグホイール搭載携帯電話「Z5」(2000年)や、ノキアのファッションスティック携帯電話「7380」(2005年)などを見せてもらいました。筆者は携帯電話コレクターなので、ここに置いてある端末の大半はすでに所有しています。
しかし、古い端末の現役時代の話をしてくれる人に出会えて興奮しっぱなしでした。とはいえ、店主が話すのはイタリア語。話よりも身振り手振りで意思疎通でした。
スマホがあればPCもカメラもいらない、そんな時代になろうとしているいま、レトロな製品に出会うと、通話だけするならこんな端末を現代によみがえらせて使ってみたいな、と感じました。
たぶん、こんな骨董品を買いに来る客はそうそういないでしょう。また、来年もミラノへ行く予定なので、次回は少しイタリア語を勉強して店主とレトロ端末談義で盛り上がりたいものです。
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