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東芝・片岡氏が語る、アニメの視聴傾向(2016年秋版)

レグザの録画データから「自分の趣味に合う作品」を探す方法がないか考えてみた

2017年04月08日 11時00分更新

自分と趣味が近い人が観ている“アニメ作品”を見つける

── 2017年の新年度が始まりました。今年もアニメ視聴分析、続けていくんですね!

片岡 はい。今回、新規の取り組みとしては「ファン層の分析」を取り入れました。「○○の作品が好きな人」が「一緒に観た作品」は何か? という分析をしようと思った場合、単純なクロス集計だと、どうしても「みんなが見ている」、つまり「全般的に人気がある作品」が上位に来てしまいます。

 例えば、2016年の秋アニメ(10~12月期)でいえば『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』。こういう作品は「アニメファンなら誰もが観る」という感じで、どの作品でも上位のスコアを示してしまいます。これだと差が分からないので、どう除外して、純粋に趣向の近いファンが支持する作品を見つけられないかと工夫しました。

舟を編むを観た人が、ほかのどんな作品を観たかを分析したグラフ

坪井さんによる基礎集計。舟を編むはきれいに色分けされているが、これは視聴層がハッキリしていることのあらわれ。

 その基礎集計を坪井さんがして、各作品から人気作品を除外する分析を片岡がしました。2016年秋アニメは作品数が多いので、すべてではないのですが、われわれが「接触率」(再生数+ライブ視聴数)と呼んでいる数値で順位付けした「トップ20」作品を対象に、試行錯誤しながら、「ファン層が共通する作品」を見つけようとしています。

 ちなみに、アニメ視聴ログ分析ギルドさんが頒布する同人誌「アニメの見られ方」の第3弾では、ファン層の違いが明確な3作品、『ドリフターズ』『舟を編む』『ガーリッシュナンバー』を選んでいます。グラフは20作品ぶんあるのですが、この3作品はファン層があまり「かぶらない」結果が出たからです。

 まずレグザのTimeOn全体の視聴集合(A集合)があり、2016年秋アニメの上位20作品を最終4話のうち少なくとも3回は観た集合(B集合)、そしてB集合のうち、特定の作品に触れた機器の集合(C集合)というのを想定して、その関係をみています。なお最終回直前の視聴履歴だけを考慮しているので、『ユーリ!!! on ICE』(2016年10~12月期)とか『けものフレンズ』(2017年1~3月期)のように、回を重ねるうちに盛り上がりを見せた作品を「途中から見はじめた人」もはいります。

 グラフの見方ですが、簡単に言えば左上にプロットされている作品ほど、『舟を編む』のファンと親和性の高い作品です。縦軸は「他作品接触率」と書いていますが、『舟を編む』と「かぶって」観た人が多い作品が上に来ます。横軸は「総接触率」で、ライブもしくは録画して観た人が多い作品ほど右に来ます。

 グラフでいうと『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』や『ジョジョの奇妙な冒険』はそもそもの視聴数が多く、補正をかける必要があるわけです。そこで右斜め上に上がっていく点線を引きました。その点線より上にプロットされ、かつ距離が離れている(つまり左上にある)ほど、『舟を編む』との親和性が高いユーザーということになります。

 具体的には『ハイキュー!!』よりも『うどんの国の金色毛鞠』のほうが、『舟を編む』との関連性が強いということになります。

かけ離れた設定か、リアルな世界か
そして、みんなが観ていた亜人

坪井 過去何回かデータを公開したところ「視聴数が多かった作品の順位」と「俺の中での今期ベストランキング」と違うという感想が多くて。それはそうだよね、うまく反映できないかな……と工夫した結果ですね。

片岡 ランキング上位20作品は右側に並べています。○○の作品を見た人のうち、併接触率が高い順に並んでいます。

『ドリフターズ』は架空世界を舞台にバトルやアクション、物語を展開していて、リアルライフとかけ離れた設定に喜びを感じる層が支持しているように見えます。

『舟を編む』のファンは『3月のライオン』『ハイキュー!!』『夏目友人帳』など、リアルな日常に近い設定+人間ドラマを軸にしたストーリーが好きな層です。現実に近く、理解しやすい舞台設定が好き。リアルな世界の延長で展開されるドラマを好む。

『ガーリッシュナンバー』も、リアルの世界が舞台ですが、「果たしてそんな奴がいるのか」という、ちょっと誇張の入ったアクの強いキャラクターが登場します。『WORKING!!!』なども当てはまるかもしれませんが、ある意味あり得ない人が出てきて、そこにギャグやラブコメ的な要素、萌要素などで入って楽しませている。人間関係もそこまでシリアスには描かない。

 ちょっと面白いのは『亜人』の接触率がどの作品でも高いという点です。トップにはならないけれど、なぜかどの作品でも5位以内に入るんですね。『亜人』を見る人は、アニメを「いろいろ観てみよう」と思う層なのかもしれません。総接触率という意味で、絶対数は必ずしも多くはない。しかしほかの作品を見る多くの人に併せて見られている。そういう興味深い作品です。

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