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日本は医療データ後進国?海外で進む医療ICT化の充実

2017年04月19日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第12回テーマ:電子カルテ x 海外事例

 安価なコストにより、徐々に普及しているクラウド型電子カルテ。とはいえ、日本の診療所における電子カルテ普及率は約35%と、まだまだ決して高い数値とは言えない。

 一方スウェーデン、デンマーク、イギリス、オランダでは、すべての開業医が電子カルテを使用。フランス、アメリカでの導入率はすでに約70%に達しているなど、欧州や英語圏では幅広く利用されている(関連記事)。

 カナダでは政府主導で電子カルテの普及事業が進められていたり、アメリカでは分野ごとの診療情報共有を民間のデータセンターで行なっているなど、国ごとによってプロセスの違いはあるが、医療ICT化の充実を目指しているのだ。

 では、日本は医療データ後進国なのか? それについては、クラウド型電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説を見てほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


「電子カルテのデータを医療の質向上に活用する」とはどういうことか

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 2017年2月、OECD(経済協力開発機構)のウェブサイトに下記のグラフが掲載されました。

 グラフのタイトルは「Countries’ readiness to use electronic health data for quality improvement」つまり、診療記録として蓄積されたデータを医療の質向上に活用する準備が整っているかを2つの軸で評価したものになります。このグラフによると、日本は縦軸(Data Governance)、横軸(Technical and Operaational)のいずれにおいても、ここに掲載されている23ヵ国の中で最低の評価を受けています。

Countries’ readiness to use electronic health data for quality improvement

 「電子カルテのデータを医療の質向上に活用する」というのは具体的にはどのようなことでしょうか? 上記のグラフで右上に位置付けられているイギリスでの事例をご紹介します。少し古いですが、2013年に東京財団が出したレポート「英国プライマリ・ケア事情―日本の医療制度改革に向けたヒント」にまとめられています。

 以下、レポートから興味深い箇所を抜粋してみました。(カッコ内は筆者注記)

・すべての国民はGP(かかりつけ医)に登録することが義務付けられている
・GPごとの患者満足度、待ち時間などがネットで公開されていて、国民がGPを選ぶことができる
・(あるGPでは)登録されている8500人のうち高血圧の患者が1500人に上ることが把握できる
・高血圧を持った1500人のうち、血圧が150から90以下にコントロールされている人は1200人というデータを把握できる
・(インフルエンザワクチンについて、登録患者)8500人のうちハイリスクの人は2500人といったデータを把握できるため、診療所はハイリスクの人に手紙を送るとともに予防接種を打つ

 このように、イギリスでは電子カルテに蓄積されたデータを活用して、患者がかかりつけ医を選択する際に参考となる情報を公開したり、検査結果から診療の質(ここでは血圧コントロール)を評価したり、エビデンスに基づいた効率的な予防接種を行なったりしていることがわかります。これらの取り組みは、制度としての仕組み(=縦軸のData Governance)と、診療所のICT化(=横軸のTechnical and Operaational)の両方がそろって初めて実現できます。

 ICTサービスを提供する私たちのような企業の役目は、クラウド型電子カルテを中心としたシステムを構築することで、上記のようなデータが抽出・分析でき、患者と保険者双方にとってメリットが出せるというエビデンスを政府や自治体に提案していくことだと考えています。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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