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旅人から複業家、そしてコミュニティマーケティングの伝道師へ

AWSだった小島英揮さん、パラレルキャリアの道をただいま爆走中

元AWSの小島英揮さんがパラレルキャリアへの道をばく進している。昼間はInstaVR、Stripe、Rider's Garage、EventRegist、Moongiftの5枚の名刺を持ち歩き、夜はコミュニティマーケティングのノウハウを「言語化」するCMC_Meetupを主催する小島さんに、AWS退社後の動きやパラレルキャリアという新しい働き方、コミュニティマーケティングについて聞いた。(以下、敬称略、インタビュアー:アスキー編集部 大谷イビサ)

休みが1週間しかなかったら、冬のシベリアなんて行かない(笑)

大谷:まずは昨年8月のAWS退社後、どんなことをやっていたか教えてください。

小島:基本的にはいろんなインプットを増やしていかなければならないと思ってました。AWSでのキャリアは僕にビジネスの幅をもたらせてくれたけど、あくまでクラウドという領域だったし、Amazonというベンダーの視点での仕事でした。その枠を取り去って、いろんなインプットがほしいなと思っていました。見聞を広める手っ取り早い方法ということで、まずは旅行につながりました。

大谷:JAWS Festa 名古屋まで自転車で来たり、冬のシベリアでボルシチ食べてたり、Facebook見ていて楽しかったです(笑)。

小島:1週間しか休みがなかったら、冬のシベリアとか行かないじゃないですか(笑)。でも、自由に使える期間があると思うと、普段できない行動ができるんです。行ってみたら、発見もあるし、新しい理解もあります。シェアハウスだって、AirBnBだって、泊まってみたら、やっぱり楽しかったし、なんだか腹落ちするんですよ。

バイクとともに地の果てにまで向かった旅行

とにかく「やってみたら、なんでもできるな」というのは、旅の中で実感しましたね。それまでは、先回りしてやらなかったことがけっこうあるんですけど、旅を経た後は、だいぶなくなりました。たとえば仕事の場でも、まずはこちらの主張を言ってみます。「ノー」と言われるだろうというバイアスがかかって、口にしないということがかなり減りました。

大谷:こういう時間は久しぶりだったんじゃないですか?

小島:久しぶりでしたねえ。ひたすらインプットの時間でした。本をずっと読んでいるとか、旅先でどこに行こうか、どんなおいしいモノ食べようか考えたり。特に考える時間だったとは思ってないのですが、なんだかアイデアがいろいろ出てきて、帰ったら自分のやりたいことがすっきり見えてくる感じでした。旅行だけではなく、マイクロソフトさんをはじめいろいろなイベントなどにも出させてもらいましたが、Amazonの社員としては得られなかった経験もできてよかったし、いろんなフィードバックもいただけました。家にずっといたら、今のような考え方にはならなかったですね。

オープンリーチ作戦でパラレルキャリアの本気度が伝わった

大谷:旅に行ったり、イベントに登壇したり。なぜインプットが必要だったんでしょうか?

小島:次に僕が進む領域を決めたかったからです。

長らくクラウドの発展を見てきたのですが、今のモバイルやビッグデータも、クラウドのエコシステムがあったからこそ成長したと思います。多くのスタートアップがこのエコシステムの成長エンジンでもありました。ここまでは異論のないところだと思います。では、この次になにが来るのかというのが、自分の関心事でした。

クラウド自体は分散化や仮想化といった技術自体が新しかったわけではなく、調達方法や使い方が新しかったんです。AIだって第3次ブームと言われているし、VRだって歴史をひもといていけば、パリ万博のときから試されていたもの。IoTもしかりで、構想としてはずいぶん以前からありました。とは言っても、あくまで実験室や限定された環境での話。一般の人が気軽に消費できる技術やコンテンツではなかったんです。でも、クラウドやモバイル、ビッグデータを使うのが当たり前になり、これらの技術は必ず次の世界を作るという確信がありました。

大谷:なるほど。マーケターとしての小島さんとしては、技術自体よりも、技術がコモディティ化するところに興味があったんですね。

小島:おっしゃるとおりです。「民主化」というは自分の中での大きなキーワード。自分のキャリアを棚卸ししてみると、一部の人のものが民主化するところに自分のスキルとか、手法が活きるのかなと。アーリーアダプターは、いただけるフィードバックも刺激的ですし、自分の性にもあってます。成熟したマーケットより、アーリーアダプターに対するマーケティングの方が自分は向いていると思いました。

ただ、クラウドほど包括的な領域がないので、できれば複数の事業で、自分のマーケターとしてのキャリアを試してみたいとは思っていました。でも、そんなパラレルキャリアで働き方をしている人は全然いなかった。

大谷:確かに私が周りを見回しても、本気で複業やっている人って、IoT農業でリコピンニンジン作りながら、サイボウズやダンクソフトでもお仕事している中村龍太さんくらいしか思い浮かばないですね。

小島:そうなんです。どうしたもんかなと思って、考えたのが手札を全部明かしてしまう「オープンリーチ作戦」です。つまり、会う人、会う人に「年内は仕事しません」と話して、次に仕事する際は複数の事業に関わりたいですという希望だけお伝えしたんです。オープンにした結果、いろんな会社からオファーがいただけました。そして、4ヶ月間いろんな話をする中で、5社にコミットすることになりました。

大谷:昨年、小島さんがAWSを辞めたとき、多くの人の関心は「で、次はどこに行くの?」だったわけですが、結局複業という選択になったんですね。

小島:はい。8月末で辞めたあと1ヶ月はそんな話をしても、「そうは言っても、次は決まってるんでしょ」みたいな感じで、実はオファーはあまりいただけなかったんですよ(笑)。あまり本気だと思われてなかったんですよね。でも、10月過ぎまで旅を続けているのを見て、ようやくお話しが来始めた。

大谷:言い方は失礼ですけど、外から見たら「小島さん、まだ仕事探してるんだー」みたいな(笑)。

小島:そうです。でも、オープンにすることで、本気でパラレルキャリアを目指していることが伝わった。こういう選択も可能なんだというのは自分の中でも大きな気づきでした。

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