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導入するだけで、使い込んだシステムが蘇る

品薄で入手難、個人的にも興味があった「Sonica DAC」の実力は?

2017年03月09日 20時00分更新

最新DACが“使い込んだシステム”をよみがえらせた

 といいつつも、最新のハイエンドシステムと比べると多少の物足りなさがあった。それは質の高いハイレゾ音源の再生時に強く感じる“奥行きの深い空間表現”だったり、“立体的な音像”の再現だ。Menuet IIは小型スピーカーでありながら音がよく広がるのが利点だが、最新のソースを再生するなら、より“高解像度”で、より“細かな音の変化”も克明に再現したいという欲求も出てくる。

 そんなシステムに、Sonica DACを加えたところ、最後のピースが揃ったような感じがした。女性ボーカルや小編成のジャズ、クラシックの器楽曲、ポップスなど様々なジャンルの曲を聴いてみたが、美音が広がるシステムシステムに、絶妙のアクセントを加えてくれると実感した。聴く音源すべてのフォーカスがきゅっと合い、“現代的で実在感のあるサウンド”に変貌するのである。これまでも10万円クラスのUSB DACや単品のプレーヤーなどと組み合わせてきたが、ソース機の差でここまでの違いが出る点に驚いてしまった。

 映像の世界でも、フルハイビジョンから高精細な4Kに変わると、映像がより立体的に見えるようになる。それに近い感覚がある。Menuet IIについては音色がよく音場も広くて包囲感があるが、定位がやや不明確になりがちなのが不満だった。しかし、Sonica DACを導入したことで、スピーカーの存在が消え、音がぐっと奥に定位するようになった。まだまだその性能を生かし切れていなかった、まだまだ改善が可能だったのだ。

 ここで冒頭の話に戻る。Menuet IIとTRV-A300SEの組み合わせには、最新機種が出ても陳腐化しない“味”がある。この味をキープしながら、再現できる情報の質自体をグレードアップできれば理想だが、そうすると味やキャラクターがスポイルされることも多く、意外と難しい。そんなジレンマをSonica DACが解消してくれる。しかも高いはずのハードルを楽々と乗り越えた。これが自宅でSonica DACの音を最初に聴いた時に感じた感想だった。

 もしすでに単品コンポのシステムを持っており、ハイレゾ時代に合った性能にグレードアップしてみたい。そんな風に考えているのならソース機の見直しは重要だ。そしてSonica DACはその最善の選択肢のひとつになりそうだ。

高級機の証、バランス出力も持つ

 感動が先に出て、少し饒舌になってしまった。伝えたかったのは、すでに一定水準以上のクオリティで単品のシステムを組んでいる人にとっても、Sonica DACの導入は確実に意味があるという点だ。

 もちろん、ポータブルオーディオなどでハイレゾの魅力を実感し、スピーカー再生にもチャレンジしてみたいと思う人にとってもお勧めだが。

 それではSonica DACを導入するにはどうすればいいか、どのような機能を利用できるか、高音質を実現できる理由は何か、などについて紹介していこう。

くっきりとした仕上げのヘアラインをあしらったフロントパネル

 まずはSonica DACの役割について。製品カテゴリー的には“D/Aコンバーター”と呼ばれるもので、パソコンなどで再生したデジタル信号を、ほかのHi-Fi機器が扱えるアナログ信号に変換する役割を受け持つ機器となる。

 一般的に単品コンポでオーディオシステムを組む場合、3種類の製品が必要だ。第1にプレーヤー(ソース機)、第2にアンプ、第3にスピーカーだ。D/Aコンバーターはソース機の一種で、デジタル(Digital)信号を、アナログ(Analog)信号に変換(D/A変換)する機能を持つ。

 CDプレーヤーとの違いは、ディスク(デジタル信号)の読み取り部を持たないことだ。ここは外部の機器で読み込み、USB、無線/有線のネットワーク、同軸/光デジタルのいずれかの端子から入力する仕組みだ。

 背面にはアナログ入力端子も1系統持っているが、ここに接続した信号は入力時にいったんデジタル化したのち、再度アナログに変換して出力されるようだ。

 変換後のアナログ信号は背面の「PRE OUT」からアンプに出力する。一般的な“RCA出力”(赤白のピンジャック)と“Balanced XLR”の2系統がある。Balanced XLRは構造上、ノイズに強くケーブルを長く引き回せるため、スタジオなどにある業務用機器やホームオーディオ製品の中でもハイエンドの機種のみが搭載する端子だ。

 アナログ出力が「LINE OUT」ではなく「PRE OUT」と書かれているのは、ボリューム調節が可能であるためだ。設定によって、Sonica DACから出力する信号の出力レベルを最大に固定する“Bypass”(バイパス)モードも選べる。標準は音量調節あり(Variable Volume)だが、アンプ側で音量調節する際はバイパスモードを選ぶ。アナログ入力だけ固定で出力する設定と、デジタル入力も含めてすべて固定で出力する設定がある。

 Sonica DACは音量調整機能を持つため、パワーアンプに直結できる。

 一般的に販売されているプリメインアンプは、音量調整やトーンコントロールの機能を持つ「プリアンプ」と、スピーカーを駆動するための「パワーアンプ」を一体化している。ハイエンド機種では、プリとパワーを別筺体で提供している場合があるが、Sonica DACであればプリアンプを省略し、パワーアンプだけを用意すればいい。構成がよりシンプルとなる点がメリットだ。

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