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カオスの中で光る自作魂のこもった作品の数々

ポタ研 2017で見つけた自作の平面駆動型イヤフォン!

2017年02月28日 18時00分更新

今度は平面駆動型イヤフォンが登場!

 ポタ研とヘッドフォン祭でメーカーに負けじと気炎を吐いているのが、伝統あるユーザーグループ「Music with 規格外」である。何十キロもあるポタアンとか、ハイブリッド3Wayヘッドフォンとか、既成の概念を打ち破る規格外の自作オーディオ機器が所狭しと展示されている。

 ここで最近注目の新人が2016年ヘッドフォン祭アワードで技術賞次点に輝いた「自作平面振動板ヘッドフォン」を作った大学生のKeiさんである。ヘッドフォンの自作と言っても、何とドライバーユニットから自作している。特殊な和紙に手巻きコイルを貼り付けて振動板を製作。さらに磁気回路を作るだけでなく、3Dプリンターを駆使してハウジングを作ったり、イヤパッドを縫ったり、漆で塗装したりと、多岐な分野にわたってその工作力を発揮しているのだ。

 前回、アクシデントで音が出なくなった平面振動板ヘッドフォン「水面」も復活して爽やかな高域を聴かせくれた。

 今回はポタ研ということでは平面振動板イヤフォンを出品。製作期間は3ヵ月の自信作である。早速、試聴させてもらうと、中低域は出ているが肝心の高域は平面振動板というよりはダイナミック型? と思わせるほど普通の音になっている。その原因は、モバイル用のイヤフォンなので音漏れを気にして密閉型にしたことだという。密閉するとハウジング内にこもった音をどう処理するかが難しく、中低域を出そうとすると高域を吸音しすぎてしまうようだ。Audeze「iSINE」のように開放型にすれば良かったのに。Keiさんのチャレンジ精神がそれを許さなかったに違いない。高域のピークを抑え、音圧を逃がすハウジングの内部は二重構造を採用。かなり凝った作りになっている。

 サイズは大きいが軽量化されているので耳に掛けても違和感は少ない。モデルはKeiさん、なぜかマスク着用。

 この耳かけフックがちょっと心許ない。壊れそうで心配である。Audeze iSINEの試作機のイヤーフックを折った私が言うのだから間違いない。

 左端が平面駆動型ヘッドフォン用のドライバー、隣がその振動板。今回、作ったのが右端のイヤフォン用振動板。この作業にかなり時間が掛かりそう。

タンデムドライブのヘッドフォンも聴いた

 Music with 規格外の主催者SILPHEED@規格外さんが作った新作ヘッドフォン。250円と100円のダイナミック型ドライバーをタンデムドライブしている。ピエゾフィルム形スピーカー+スーパーツイーターを足したバランス接続対応モデル。外見デザインはいつもと違って超地味。ハウジングは3Dプリンタで作られている。バランス駆動アンプで鳴らしみると、マルチウェイなのにワイドレンジ感があまり出ない。っていうか低域こもっているかも。高域もスカッと抜けるタイプではない。さらなるブラッシュアップに期待。

 さらに専用イヤフォンネットワーク付き試作機ポタアンも展示予定だったが、大人の事情により未完成。マルチドライバーのイヤフォンのネットワークをアンプ側に内蔵させるという斬新な発想の音を聴くのはお預けとなった。

 タンデムドライブを搭載した新作ヘッドフォン。ツインドライブも最初は不安定だったので、そのうちうまくいくことを祈っている。

 専用イヤホンネットワーク付きポタアンの試作機。右側のゲタの部分にネットワークが装着される予定だったが、間に合わなかったみたい。

 HAL900さんが作った新作ヘッドフォン。本人不在のため詳しい説明は聞き逃したが、AKG「K1000」を思わせる音場型イヤースピーカーのようだ。

完成度の高いアンバラ入力、バランス出力のポタアン

 はんてんさんが設計したバランス駆動ヘッドホンアンプキット「INV-Diamond2」を出品。オペアンプをバッファに使いたくないため、トランジスタ4個を使うダイヤモンドバッファを採用しているのがポイント。文化系に理解が難しいので、とにかく音を聴かせてもらった。これはいい! ドライブ能力が高く変なクセがなくて爽やかで繊細な音がする。部品とケースも付いてキット価格12000円はハイコスパである。私も欲しくなった。キットはBispaにて販売予定。

電源は単3ニッケル水素電池4本de、ケースはアルミ合金製

ヘッドフォン端子は3.5mmか2.5mmの4pinでバランス接続専用だ

純真空管ポタアンも開発中なのだ!

 超三結Ver.3回路、正式には超三極管接続にこだわる北川さんが開発中の純真空管ポタアン評価機も出品された。サブミニチュア管を6本使って、もちろん出力トランスは手巻き! 超三結のメリットは高級な真空管を使わなくても、安い真空管を2本使っていいとこ取りできるそうだ。また1990年と近年になって上条信一氏が発明した回路なので、使用する真空管に合わせて最適なNFBが掛けられるという。超三結の原理というのがなかなか分かりにくく、簡単に言えば、三極管で五極管のP-G帰還を行い、五極管の高出力をキープしつつ、三極管に迫る高音質を出そうという試みらしい。

 その音は高域が心地良く、低域は真空管らしい歪みが感じられ好ましい印象である。現在はバラックだが、最終的にはケースに収めて電池駆動のポタアンにしたいとのこと。このトランスのサイズだとかなり大きなポタアンになりそうだが、次回に期待したい。

 左が開発中の純真空管ポタアン評価機。右がその前の真空管アンプでケースに収めてポタアン化を果たした。

 ぽっけさんのNutubeヘッドフォンアンプも展示された。省エネで電源電圧75Vを実現した高性能モデルで魅力的な音質だった。基板とコイルのコアが販売される。つまりこちらも手巻き前提なのだ。自作はハンダ付けができるだけじゃダメ!

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