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スタートアップ×レガシー大企業の実態は?富士通アクセラレータプログラム第4期がスタート

 国内外の大企業でのオープンイノベーション関連の動きはますます盛んになっている。日々、新たなアクセラレータープログラムやスタートアップを巻き込んだビジネスコンテストが開催されている。

 肥大化した大企業が順応できないスピード感やコスト、さらにはとがった技術力を持ったスタートアップが、大手のアセットを使って急拡大を狙うというのは日本だけの傾向では決してない。とくにAIやIoT、セキュリティやライフサイエンスなど、先端的な技術シーズを国際的にリードできるように加速させるあり方、大企業側の責務と言ってもいいだろう。それが投資によるものか、協業・買収といった形を取るか、はたまた共同事業によるイノベーションか、企業内で行うのか企業外で行うか、選択肢は数多い。

 そんななか、第4期を数える富士通アクセラレータプログラムの募集がこの2月にスタートした。日立やNECと並んで国内のIT産業を代表する企業である同社だが、レガシーなIT大手であるがゆえに、いま迫りつつあるIoTやAIといった先端分野でのリードは課題の1つと言えるようだ。

富士通アクセラレータプログラムとは

 そもそも富士通アクセラレータプログラムとは、富士通グループの持つ製品やソリューション・サービスと、スタートアップが持つ技術や製品をマッチングさせて、新たな事業創出を目指したものだ。過去3期の開催で合計30社と協業検討実施を発表している。

 今回の第4期では、2017年2月13日よりスタートアップの応募を集め、3月21日に〆切、その後ピッチコンテストを経て、協業検討活動を開始。9月上旬のDemo Dayでその結果を発表する流れになっている。

 スタートアップにとって、富士通アクセラレータプログラムに参加するメリットはわかりやすい。ひとつは、富士通グループが持つさまざまなアセットを活用できる点だ。たとえば、同社の顧客基盤は国内最大級の17万社以上にのぼり、販売チャネルも豊富だ。リアルでの保守サポート体制やコールセンター、生産能力などの活用も期待できる。

 また、FUJITSU Cloud Service K5と呼ばれる同社のクラウドプラットフォームを最大1年間無償利用できるほか、六本木にある会員制オープンアクセス型DIY工房「TechShop Tokyo」の半年間の無償利用権を使えば、ハードウェアのプロトタイピングなどに活用できる。

 大企業ならではの幅の広さで言えば、富士通グループのコーポレートベンチャーファンドからの出資検討や、商品のPR、メディア露出なども見えてくる。

狙いは先端IT領域

 募集対象となるのは、プロダクトを持つアーリーからミドルステージのスタートアップとされている。募集カテゴリーは5つで、富士通の重点分野でテーマが設定されており、AI、IoT領域での新たなサービス・ソリューションの創生が目的となっている。

A
●様々な業種(金融、流通、自治体など)の大企業顧客の特定業務課題を解決するためのAI技術、ソリューション、API
●AIプラットフォームサービスを進化させるディープラーニング技術、オリジナルなAI技術など(富士通AIプラットフォームへの適用を想定)
●自然言語処理技術(音声認識、多言語対応、方言対応など)
※ロボットへの適用を含む

B
●サイバー攻撃を受けた際の被害を最小化するための技術、サービス
●セキュリティ対策の運用負荷を圧倒的に軽減する技術、サービス

C
●バッテリレスセンサー技術とLPWA/Sigfoxを組合わせた新たな事業展開
●製造業あるいは保守保全業務向けに用途開発した技術・サービス(データ入力の自動化/点検時、リアルタイムにアノマリ予測 など)

D
●クラウドプラットフォームサービスを進化させる技術(富士通クラウドサービスへの適用を想定)(サーバレスアーキテクチャの実現:アプリケーションサーバを必要としないアプリケーション実行基盤の技術/IaaS/PaaS運用管理の高度化:クラウドリソースを動的に構成、俊敏なハイパースケールを提供する技術/エッジコンピューティングにおけるクラウド-エッジ間連携の最適化技術 など)

E
●金融分野へ新たな価値を提供するための異業種サービスまたは先端技術
●食農バリューチェーンや地域活性化を実現するための技術、サービス
●シェアリングサービスを高度化する機能及び新たなシェアリングサービスの共同開発(SNS連携、多様な決済手段との連携(地域通貨、ポイント、クレジットカードなど)/地域課題解決への住民参加を促進するサービス/(ベビーシッター/子供の一時預かり、交通手段確保、住まいの確保など)/公共サービスの代替あるいは組合せによる新たな価値提供)

 参加企業は書類選考を経て、20社程度でピッチコンテストを開催。そして10社を目処に協業検討に入る。ピッチコンテンストの審査員兼協業検討責任者は富士通グループの各事業部門の責任者が担当する。権限を持つ幹部担当者と直接やりとりできるのも魅力のひとつといえるだろう。

最新の大企業アクセラレータプログラムの実態は?

 プログラム参加からの協業検討スタートアップの中には、各カテゴリーにおいて、すでに名前の知られた存在となっている企業も多い。

 パーソナルコミュニケーションロボット「BOCCO」を販売するユカイ工業株式会社の青木俊介代表取締役は、同プログラムに関して、「専任の担当者が組み合わせの良さそうな技術や事業部を数多く紹介してくれ、デモ用としてのライセンス費用も無償で利用できたことは大きかった」とそのメリットを語る。

 これまでASCII STARTUPでも数多くの大企業によるスタートアップ支援の動きを追っているが、なかなかビジネスのところでの結実で、簡単にいかない部分が多いこともわかっている。CVCなどのほうが、成果だけ見れば正直わかりやすいのが現状だ。

 そのような状況だが、富士通アクセラレータプログラムについては実際のスタートアップ取材を通しては、「サービスをし過ぎなのではないか」というほどの支援の動きを聞いている。たとえば、衣服生産プラットフォームである「シタテル」のシステム開発協力のケースでは、アセットが豊富な大企業ならではの、とことんスタートアップ側に付き合い切る本気度が垣間見えた。

 4期を数えたタイミングで、いよいよ同プログラムからは実際の協業やプラットホーム・アセット活用の動きも出てきたと聞く。大手企業側もまだまだ距離感を測りかねているところはあるが、大手とスタートアップ双方にとってのイノベーション創出の現場の最前線がどうなっているか、「大手によるスタートアップ支援」の取り組みとして、ASCII STARTUPでは今回から連続で富士通の取り組みを追いかける。各社の生の声を通して、スタートアップと国内大手企業とのあり方の現在を探りたい。

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