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「2時間後、この人が重症化します」NTTデータの人工知能が実現する予防医療は成功するか?

2017年01月30日 09時00分更新

 NTTデータは東京都内にて開催したNTT DATA Innovation Conference 2017に合わせて記者説明会を開催。自社の人工知能(AI)関連の新たな2つの取り組みについて発表した。

 冒頭に壇上に立ったNTTデータの木谷強 常務執行役員によれば、例年この時期に発表している広範なITトレンド状況をまとめたレポート「NTT DATA Technology Foresight 2017」のかなかで2017年に期待される技術トレンドとして、人工頭脳の浸透や、対話型コンピューティング、AIによる医療診断などの8項目を挙げた。

 ここにあがった項目は、見方を変えれば大半がAIが関連する技術領域ということになる。木谷常務は、特にAIによる医療診断を含む「プレシジョンサイエンス」に言及し、今後10-20年というスパンで非常に成長する分野だと語る。プレシジョンサイエンスの分野には、AIによる仮説と検証を高速に繰り返すことで実現する難病治療薬の発見なども含まれる。

NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長 木谷強氏

2017年の技術トレンド分析として挙がった8項目。人工知能に関連する内容が大半だ。

人工知能が重篤な合併症を予測する「スマートICU」の取り組み

 記者説明会で取り上げられた1月27日付発表の人工知能関連の取り組みは2つある。1つめが、NTTデータらが2017年1月30日からスペイン最大の病院「ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院」の協力で試験実施する、スマートICUの取り組みだ。

 IoT化された医療デバイスでセンサーデータを逐次収集し、データ分析をAI技術(人工知能)を使ってリアルタイムで行なう。これによって、高い死亡率になる場合もある合併症の症状を、より早期に発見し、発症前に医師にリスクを通知するスマートアラートを実現しようというもの。具体的には、継続的なデータ取得を通じて、2時間後に重症化しそうな患者を判別し、医師や看護師向けにアラートを提供する。

バイタルのモニタリングはすでに実施されているものの、症状が現れてからでは対応が難しい死亡率の高い合併症もある(敗血症ショックなど)。そうした症状に対応するために、AIを使って早期医療介入を行い、重症化予防を行う。早期退室による医療負担の低減にもつながる試みだ。

取得・参照するデータは特殊なものではななさそうだが、発症者/非発症者の記録データを参照しながらリアルタイムのデータ分析を行い、重症化しそうな患者をいち早く発見する。

記者説明会で披露されたアプリのデモ。リアルタイムに患者のバイタルデータを取得している。この裏で、実は人工知能がリアルタイムに分析をかけていて、重症化しそうな兆候がないかを見ている。

患者が重症化しそうだと判断された場合は、このような画面に切り替わる。アラートは2時間後の病状を予測すると説明。スマホでの通知のほか、看護師が日常的にチェックするベッドに据え置きのモニターなどへの通知も想定しているとのこと。

 スマートICUのテストにあたっては、既存のログデータやリファレンスデータなどを用いた事前検証を行っている。NTTデータによれば、対象(想定)患者のうち、合併症を発症しない患者の判別度(特異度)と、逆に発症した患者の判別度(感度)について検証した結果、特異度、感度それぞれが病院の期待値を上回る検出が可能だったため、このほどの実証テスト(PoC)を開始することになったという。

 最初の試験地がヨーロッパである理由は、まず日本ではまだバイタルなどの各種医療データの蓄積と、その利用が本格的にできる段階ではないことを挙げていた。すぐに実施できる環境が整っているスペインでテスト運用をはじめる形だが、日本でも各種環境整備や法整備が進めば、比較的スムーズにシステムを持ってくることは可能だという。

 中長期展望としてまずはICUからはじめるが、将来的にはより難度の高いERでの利用、続いて一般病院への適用といったロードマップを描いているという。

取り組みは、NTTデータが人工知能技術や計算資源などを提供、スペインの子会社であるエヴェリス(everis)が医療ITの提供と現地サポートを行う。

ステップ1として実施した感度、特異度の期待値が医師の期待値以上の結果が出たと説明。これが1月30日からのステップ2にあたる試験適用の実施につながった。

人工知能記者によるニュース原稿生成の実証実験を開始

Lv0は、旧来の記者が原稿をつくる手法。一部のメディア企業では、人が原稿化ルールを作成して半自動化することは行われていた(Lv1)。今回の取り組みでは、大量(2万件)の気象電文をもとに、それらの記事によって作られた気象記事を教師データとして学習させ、人工知能に天気予報記事を自動生成させるという実証実験だ。

 2つ目が人工知能を使ったニュース原稿の自動生成だ。すでに日経新聞が各社の決算サマリーに人工知能を使った自動生成をはじめたことが話題になっているなか、NTTデータは天気予報のニュース記事で実証実験をはじめている。提携先のメディアの詳細については、会見内では明かされなかった。

 この技術のポイントは、ニュース原稿化しやすい「構造化」されたデータではなく、気象電文の非構造化データを使って人間が見ても違和感がないニュース原稿を生成するところだ。

 深層学習(ディープラーニング)を使った人工知能で学習・生成を行うため、非構造データからどのようにデータを抽出し、ニュースとして表現するかという特徴抽出については、人間は一切タッチしない。人工知能が自ら学習して生み出していく。 日本語生成にあたっては、NTTグループのAI「corevo」の日本語解析技術も使っている。

人によるルール設計を不要にすることで、適用できる分野の自由度も高まる。定義を人間がつくる職人技的手法とは根本的に異なる人工知能ならではのアプローチ。

2万文を1回学習させただけでは相当におぼつかない日本語。それを100回繰り返す頃にはほぼそのまま使えてしまうニュースが生成されている(スライドでは赤文字の一箇所にエラーがある)。

 元にしたデータは2万件あまりの文章データで、これをリカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)の学習手法を使って100回ほど学習を重ねたところ、人間が読んでも違和感を感じない原稿が生成できるようになった。100回の学習に要した時間は「約1-2日間」(開発担当の小間氏)と短い。

 面白いのは、現段階では、生成したニュース記事の精度判定は人力であり、人が点数化してAIの完成度を判断していること。つまり、生成した記事(結果)からAIへのフィードバックはしていない状況だが、それでも十分なレベルの記事が生成できたということになる。

 株価情報ではなくなぜ天気予報なのか?という点については、元になる非構造化データが多数あり、さらにどのデータからどの記事が書かれたかの照合が完璧にできることが条件だった。それを満たしていたのが天気予報だったと説明する。

 その意味では、株価情報でもよかったし、実際株価情報にも応用は効くという。また野球などスポーツの得失点情報などからのニュース記事生成(国内でのニュース需要の見極めが必要なものの)も可能だという。

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