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機能を削りシンプル化することで、操作性を最優先

発売直後の新GPSウォッチ「TomTom Adventurer」の実用性を検証

2017年01月28日 12時00分更新

ランナーが知りたいのは、進む方向と戻る方向

 ルート機能に関しても、驚くほどシンプルである。GPSに詳しいメーカーなら、もっと色々な機能を盛り込めたと思うのだが、ウォルター氏によれば「ランナーが最も知りたいのは、どこへ向かっているかと戻る方向はどちらなのか」なので、これらのルート機能に特化。多く過ぎる情報はランナーを惑わせるという。

 目的地を決めずに走り出すと、トラッキング機能で自分が走った軌跡がラインで残されていく。折り返し地点まで来たら、今度はスタート地点を目指して走り出せば、ラインが表示され正しい方向に向かっているかどうかが分かる。ウォルター氏が来日した際には宿泊先のホテルから列車で東京駅まで移動して、そこから12kmのコースデータを使って皇居を1周したそうだ。その際にちょっと興味をひかれる道があり、ルートを逸れてもAdventureを見れば戻る方向が分かるので「初めて訪れた日本の道を楽しめた」そうだ。

 ルート表示は100m、500m、1km単位で切り換えられ、自分が走ってきた距離も表示できる。走りながら素早く確認できるシンプルなルート表示こそ、ランナーには頼りになる道しるべなのだ。詳細ルートは「Strava」「ヤマレコ」などのデータベースを利用できる。また、ウォルター氏は「Footpath Route Planner」というアプリを使ってオリジナルルートを作成、GPXファイルとして保存してAdventureにインポートしている。また「NIKE+RUN CLUB」「Runkeeper」「Strava」などのアプリへアクティビティデータの自動エクスポートにも対応。データの利用などを含めればTomTomのスポーツウォッチは100以上のアプリと連携して使えるという。

「Footpath Route Planner」を使って作った周回コース。出発地点に指を置いてなぞるようにトレースすると道に沿ってルートが設定できる。完成したルートは指を使って修正可能だ

 AdventureにはGPSの他に心拍計が内蔵され、睡眠時間も自動的に記録されるが、他社のアプリと比較して、あっさりとした結果しか表示されない。これに対してウォルター氏は、「ユーザーが知りたいのはセンサーが測定した厳密な数値ではなく、その結果が自分の体にどう反映されたかであるから、我々も数値ではなくアドバイスを伝えたい」と答えた。

 例えば心拍センサーがあれば、血中酸素濃度も表示できるが一般的な必要性が少ないため、機能としては搭載していない。また、睡眠については日々、研究を重ねているがREM睡眠とNONREM睡眠の割合が、どう眠りの質に関連するか、また年齢、性別、環境などの関連性が明らかになるまで、いたずらに表示項目を増やすことはせずに、シンプルに睡眠時間の自動記録に止めているという。

ハイキング、トレイルラン、スキー、スノーボード用の専用モードを搭載

 これに対してランニングウォッチとしては、細かいデータまでウォッチ側で表示が可能、さらにさまざまなアウトドアスポーツに対応している。走っている途中で心拍ゾーンを確認したり、心拍数のグラフを表示して数字を見ずに直感的に自分のペースを把握できる。目標の設定も歩数、距離、タイムが選択できる。

 アクティビティの結果は本体に記録されるだけでなく、専用アプリに転送され、さらに詳しく分析できる。GPSを使ったルートと高度のデータも保存される。ワークアウトやトレッドミルでは、音楽を聞くという人も多いだろう。Adventureには3GBのメモリーが内蔵され、mp3やAAC形式の音楽データを「iTunes」や「Windows Media Player」のプレイリストと同期することで転送、Bluetoothイヤフォンで再生できる。また日本語の音声ガイドにも対応する。

Adventureは一般的なBluetoothイヤフォンに対応。ボタンを押すだけでペアリングできる。曲名表示は日本語対応だった

TomTom Adventurerをハイキングモードで使ってみた

 TomTom Adventurerを使ってトレランに挑戦と思ったのだが、山に行く時間的余裕がないため自宅から近所のスーパーまでの買い物をハイキングモードで測定した。ゴールを定めないフリーランスタイルを選択。自動的に距離、経過時間、消費カロリー、ペース、累積標高、累積下降、心拍数が記録された。

ハイキング、トレッキングを選択すると高度と累積標高が記録される

地図はスマホのフル画面で表示可能。Googleの地図データが使われており拡大縮小に対応、衛星写真に切り換えられる

高度と心拍数など2つの異なるデータを同じグラフ上に表示できる。これにより高度と心拍数の関係などを分析可能だ

心拍ゾーンを表示でアクティビティによってどんな効果が得られたかが把握できる。ハイキングでは39%の時間が脂肪燃焼に効果があった

フィットネスクラブでサイクルトレーナーを漕いだ記録。瞬発力向上が17%、筋力向上が37%と運動強度が高いことが分かる

睡眠時間は自動記録され、心拍数も記録される

 GPSを使ったルート表示は、歩いている途中でも見やすく棒状にルートが伸びて行き、ユーザーは矢印で表示されGoogleMapを使った時のように、矢印が進行方向を向く。これに対してGPXファイルで作ったトレイルデータを読み込むには、アプリのみでは完結せずPCでWebサイトの「MySports」にアクセスする必要があり、さらにAdventureをUSBケーブルでPCに接続して同期しなければならない。かなり面倒な作業になる。スマホのアプリだけで完結できるようにして欲しい。

 スマホ内でトレイルデータを登録するには、Dropboxなどの他社製クラウドアプリとウェブブラウザー経由でMySportsにアクセスすれば可能となる。ウオッチに同期もワイヤレスでできる。

PC用の「MySports」を起動するとiTunesにあるプレイリストが自動的に表示され、プレイリスト単位で同期できる

 音楽データはiTunesのプレイリストと同期するため、まずiTunesでTomTom用のプレイリストを作成して、聴きたい曲を入れる。あとはPC用の「MySports」を起動してAdventureと同期すればいい。この作業は比較的簡単だった。ただし、ウォッチ側では曲名のリスト表示はできず、1曲進むか戻るしか選択できない。いくらシンプルと言っても、プレイリストの中身ぐらい表示して欲しいものだ。その代わりにプレイリストを選択する機能とシャッフルがあるので、気分やコースによって複数のプレイリストを作って使い分けられる。

 Bluetoothイヤフォンとの同期は、ボタンを押すだけでおこなえた。またイヤフォンからのリモコン操作にも対応した。というか、音量調整はイヤフォンからしかできない。音質は悪くないが、ハイエンドモデルなら高音質コーデックの「aptX」に対応してもらいたいと思った。

 数日間しか使っていないが、TomTom Adventurerは直感的に使える優れたインターフェイスが特徴で、限られた機能を素早く呼び出せるのがポイントである。ほとんどのスマートウォッチは機能が沢山あり過ぎて使いたい機能になかなかたどり着けないとか、面倒でその機能を使わなくなることがあるが、Adventureにその心配はない。製品ラインナップにはフィットネスウォッチもあるが、アウトドアウォッチのAdventureがハイエンドモデルであり、他の製品にできることは全てできるため本機を選択すれば間違いない。


製品名 TomTom Adventurer
動作環境 Android 4.4以降/iOS 8以降
ケース寸/手首周りの寸法 およそ縦60×横34×厚さ12mm/130〜206mm
質量 約55g
ディスプレー 22x25mm
タッチパネル 非搭載
画面解像度 144x168ドット
CPU 非公開
メモリー 非公開
ストレージ 3GB
センサー モーションセンサー(加速度計 + ジャイロ)、気圧計、コンパス、光学式心拍計
GPS GPS搭載(ロシアのGLONASS、日本のみちびき)
バイブレーター 搭載
通信 Bluetooth Smart
バッテリー 最大約3週間(アクティビティ・トラッキング)、最大約11時間(GPS/ハイキングでは最大約24時間)、最大約5時間(GPS+心拍数+音楽)
アウトドアスポーツモード ハイキング、トレイルランニング、スキー、スノーボード
マルチスポーツモード ラン、バイク、スイム、ジム、トレッドミル、サイクルトレーナー、フリースタイル、ストップウォッチ
ライフログ 睡眠時間、アクティビティ時間、消費カロリー、歩数、距離を自転車で追跡
バックライト ○(画面タッチ式)
言語 日本語ほか18言語以上に対応
防水 40m/130フィート(5ATM)
発売ステータス 2017年1月27日
価格 4万3740円

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