週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

mineoのコミュニティはギブアンドテイクを維持できるのか

2017年01月27日 10時00分更新

 ケイ・オプティコムが運営するMVNOサービス「mineo」が、「契約件数100万件突破に向けた事業戦略」を1月19日に発表。mineoのユーザーコミュニティである「マイネ王」を原動力に、あと1年強で100万件を達成するという強気の戦略を打ち出しました。

mineoは「コミュニティ」を原動力とした成長を狙う

 mineoはMVNO市場について、「今後は淘汰の時代になる」と見ています。裏を返せば、「我々は淘汰される側ではない」という強い自信が見て取れます。

MVNO淘汰の時代を予見する、ケイ・オプティコム 取締役 経営本部 副本部長の橘俊郎氏。

 mineoが100万契約達成を見込むのは2018年3月期。2017年1月時点で50万契約を超えたばかりなので、あと約1年で契約数を2倍に拡大するという強気な見通しです。

2017年1月13日に50万契約を超えたばかりだが、2018年3月時点では104万契約に達するという。

 mineoが急成長の原動力として位置付けるのが、ユーザーコミュニティの「マイネ王」です。こうしたコミュニティによりMVNO初心者にとっては敷居が下がり、普段は見えにくいユーザー同士の横のつながりができることがポイントです。

 たとえば筆者の場合、2015年6月から個人的にmineoを使っていますが、これは当時、au系のMVNOがほかになかったためです。新たに魅力的なMVNOが登場すれば、いつ乗り換えてもよいと考えています。

 しかしコミュニティで他のユーザーとつながっている場合、ちょっと安い程度の理由では他のMVNOに移りにくくなります。そうしてmineoに熱心なユーザーが増えれば口コミも広がり、ますますユーザーが増えていくというのがmineoの目論見です。

コミュニティを原動力に成長するというロジックには説得力がある。

 新たな紹介キャンペーンとして、ユーザーを紹介した側とされた側の両方に2000円分のAmazonギフト券をプレゼントするという施策も、その延長にあります。普通のMVNOなら値引きや容量追加で還元するところを、同じお金を使うならユーザー同士のつながり強化に投資しよう、という意図が伝わってきます。

ギブアンドテイクはどこまで持続的なのか

 まさにロジックとしては完璧に見えるコミュニティ戦略ですが、ほころびも見え始めています。それを端的に示しているのが「フリータンク」の残量です。

 フリータンクは、余ったデータ容量をユーザー全体で共有する「タンク」に戻すことで、データが足りない人が引き出せるようにする仕組みです。

 全体として採算が合えば良いというMVNOのビジネスモデルをうまく生かし、コミュニティ内でのデータ量の融通を促すというアイデア自体は、非常に秀逸なものです。

 しかしフリータンクから容量を引き出す人ばかりになれば、この仕組みは立ちゆかなくなります。mineoが公開しているデータによれば、かつては月末に数十TBの残量があったものが、2016年12月ごろから引き出しが急激に増え、2017年1月末には容量が枯渇する可能性が出てきたことから、スタッフブログで今後の方針表明が出される事態になっています。

2016年7月の様子。引き出しが可能になる20日以降は残量(グラフの緑色)が減っていくものの、月末でも約20TBが残っていた。

2017年1月は25日時点で残りは約2TBになり、枯渇が見えてきた。

 こうした現象は、どのようなコミュニティにもみられるものと筆者は考えます。ユーザー数が増えるにつれ、コミュニティに貢献しようというユーザーよりも、メリットだけを享受しようとするメンバーの割合が増えていきます。フリータンクから容量を引き出せることを前提にmineoと契約するユーザーも増えているのではないでしょうか。

 mineoができる対策として、運営側からフリータンクに容量を追加することで、コミュニティでの助け合いを人為的に演出するという手もあったはずです。しかしmineoは、こうした運営からのデータ供給は行わないと宣言しています。

 今後、コミュニティを持続的なものにするためにはユーザーの動機付けを見直していく必要がありそうです。すでにmineoには、投稿数などに応じてコミュニティ内での「レベル」が上がる仕組みがあります。これをフリータンクと連動させたり、高レベルのユーザーに金銭的なメリットを与えたりするなど、新規ユーザーがコミュニティに貢献したくなるような施策が待たれるところです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事