ハイレゾ音源が一定の市民権を得ている。しかし、様々な事情からいま手元にあるCDをなるべく高音質に聴きたいというニーズもあるはずだ。
そんなユーザーに対して面白い選択肢になりそうなのがイギリスのChord Electronicsが開発した「Blu MkII」だ。CDトランスポートと呼ばれる、CDに記録された情報を読み取り、デジタル信号のままD/Aコンバーターに送る機器。すでに販売されている高級DAC「DAVE」との組み合わせを想定している。
Blu MkIIの特徴は、ザイリンクスのFPGA「XC7A200T」を活用し、CDの情報を最大705.6kHzにアップサンプリングしてDAVEに伝送できることだ(伝送には、BNC×2のケーブル接続が必要)。一般的なCDに収録されているデータは、44.1kHz(毎秒4万4100回)の精度でサンプリングされているため、時間軸方向の情報量(サンプリング周波数)が16倍に増えることになる。
そのために新規に開発したアルゴリズムを同社は“WTA M-Scaler”と呼んでいる。アップサンプリングの過程ではFPGAが内蔵する740個のDSPコアを使う。100万タップを超える精度のWTAフィルターによる処理だ。
編注:発表時に搭載されていた光デジタル出力は製品版ではなくなり、代わりにPCなどで再生中の音源をM-Scalerにより、アップサンプリングできる、USB入力となることが代理店のタイムロードから発表されました。(2017年2月9日)
Chordの製品は、特にDACの評価が高い。独特なのはそのアプローチで、通常はデジタル信号をアナログ信号に変換する処理に、市販のDACチップを使わない。その代わりに、FPGA上で独自のアルゴリズムを動かし、市販のチップとは桁の違う、膨大な計算を通じてより高精度なD/A変換をする点だ。
ちなみに過去の取材でWatt氏は「普通のDAC ICは100タップで、8倍か16倍のオーバーサンプリング」(Watt氏)だとコメントしていた。DAVEのWTAフィルターのタップ数は16万4000で、166個のDSPを使った並列処理となる。ちなみにDAC64では1000タップ。QBD76では1万8000タップ、Hugoでは2万6000タップという数字だった。
特に重視しているのは、音の立ち上がりや過渡特性(トランジェント)に関係する“タイミング情報”をより正確にすること。人間の耳や脳は、こうした時間軸方向の情報に敏感で、“音程”や“音色”、“リズム”“空間の表現”(音の遅延や反射、左右の位相のズレ)などに大きく影響するためだ。Blu MkIIでは100万タップを超える高精度な処理で、より正確なタイミング情報の再現を狙っている。
なお、BNCもしくはUSB経由で入力したデジタル信号をアップサンプリングする機能も持ち、アップサンプラーとしての利用も可能とのこと。
本体はアルミ削り出しで、サイズは幅335×奥行き170×高さ105mm。重量は7kg。リモコンが付属する。Blue MkIIの価格は140万円(税抜)で3月下旬の発売を予定している。
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