「ASCII STARTUP 業界ポジトーク」は、ベンチャー、スタートアップ、テクノロジー業界で活躍するインキュベーターらを著者に迎え最新情報を共有する“ポジショントーク”連載です。
はじめまして、POL代表取締役CEOの加茂倫明です。本連載で私は、POLが運営する理系人材学生を企業と結ぶ「LabBase」と、現在在学中の東大学生ベンチャーサイドの動きに関しての寄稿を行っていく予定です。ただし第1回目となる今回は、運営として関わっている2016年12月にリリースされた、趣味と人を軸にした旅メディア『しゅみたびと』について語らせてください。
『しゅみたびと』は「趣味を通して行きたい旅が見つかる」をコンセプトに、趣味に関する旅をした人を取材してその旅プランを紹介するメディアで、その運営体制はスタートアップ5社による共同運営というかなり珍しいものになっています。今回はその実情と狙いを、企画者である吉田行宏氏(アイランドクレア代表取締役)のメッセージも交え、紹介したいと思います。
趣味と人を切り口に、新しい旅との出会いを
趣味と人を軸にした旅メディアしゅみたびとでは、趣味に関する旅をした人を取材し、その人の趣味へのこだわりや趣味歴を添えて、趣味を満喫するためのオススメの旅プランを掲載している。趣味ベースで共感を生み、「刺さる人には刺さる」コンテンツをもくろむ。オリジナリティと記事のクオリティを担保するため記事はすべて手作り。12月のリリース以降の反響はまずまずで、行政や旅行代理店とのタイアップの話も出てきている。
各社の強みをかけ合わせ、効率的に事業創造
しゅみたびとは、アイランドクレア、ドットライフ、京橋ファクトリー、LIFE PEPPER、POLのスタートアップ5社によって共同で企画・運営されている。役割分担して運営し、利益が出ればレベニューシェアという仕組みだ。果たしてこのスキームはうまくワークしているのか。狙いは何なのか。しゅみたびとの企画者である吉田行宏氏に話を聞いてきた。
吉田氏は、元ガリバーインターナショナル(現IDOM)専務取締役。創業期から拡大期のガリバーのフランチャイズ事業部を始め、人事、教育、経営戦略、CIO、CFOなどの担当役員を歴任し、創業4年で同社を全国展開させ株式公開に導いた、プロの経営者だ。現在はアイランドクレアの代表取締役としてしゅみたびとを企画推進する傍ら、FiNCやPOLの取締役も務めている。
しゅみたびとを共同で運営している各社は、全て吉田氏の投資先や支援先のスタートアップである。吉田氏は言う。「各社の強みをかけ合わせる形で、全社とシナジーがある事業を作れないかと思って考えました。例えばドットライフは編集部のリソースが余っていたし、京橋ファクトリーは開発のリソースが余っていたし、LIFE PEPPERはマーケティング関連のノウハウを持っていました。スタートアップはなかなか長期的な事業への投資がしにくい中で、しゅみたびとでは、リスクは自分が取る形で、各社の強みやリソースをうまくかけ合わせて進めています」
企業単位にとらわれない事業創造の形
実際筆者もしゅみたびとの運営に関わっているが、このスタートアップ複数社による協業というスキームは、一定の条件下ではかなり上手くワークするのではないかと感じている。その条件とは2つある。
まず、各社の事業やリソースとのシナジーがあること。これがないとなかなかリソースを割きにくく、各社のモチベーションに差が出てしまう。もう一つの条件は、最終的な意思決定者が決まっていること。しゅみたびとの場合は、基本的に企画や機能などの議論は共同運営している各社の社長で話し合って進めているのだが、大まかな戦略等について最終的に意思決定するのは吉田氏、という形で明確化している。これによって、協業でありがちな軸のブレを防ぐことができる。
働き方の多様化が脚光を浴びている昨今、事業創造のあり方も今後は多様化していくのかもしれない。
■関連サイト
しゅみたびと
加茂倫明(POL)
株式会社POL代表取締役CEO。採用市場に出てきにくい理系人材のダイレクトリクルーティングと共同研究の提案が可能な『研究室と所属学生/研究員のデータベース LabBase』および、趣味を通して自分の行きたい旅に出会える旅サイト『しゅみたびと』を運営している。東京大学在学中。
●お知らせ
研究室と所属学生/研究員のデータベース『LabBase』(関連サイト)の法人事前登録を募集しております。採用市場に出てきにくい理系人材(エンジニア、物理専攻学生、化学専攻学生など)のダイレクトリクルーティングに関心がおありの企業様や、共同研究を検討したい企業様は是非事前登録をどうぞ! サービスの詳細をご説明させていただきます。
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