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超高性能GPSで作る空の道の精度は数cmオーダー!

空の安全を確保する飛行機「チェックスター」を見に行った

2016年12月24日 12時00分更新

電波で作った見えない道のゆがみを修正
なんとその誤差はcmオーダー!!

 道を作るにはどうしたらいいか? それは2つ以上の点を作ればいい。今でこそGPSが発達したので、地図上に「ここ!」と点をいくらでも設定できるが、以前はそんなことができなかった。そこで考えだされたのが、電波による(点)ポイントだ。それがVORという地上の無線施設。

特徴的な形をしているVOR。写真は後述する距離のマーカーも併設したVOR/DME。通称ボルデメ

 向かいたいVORに無線のチャンネルをセットすると、計器に飛行機の進行方向とVOR局の位置(ラジアル)が表示される。また2局のVORを捕らえると、その直線から左右どれだけ進路がずれているかも表示できる。

 目的のVOR局を通過したかどうかを見極めるのは簡単。VOR局を通過すると、計器の針が進行方向と正反対にクルッっと回る(通過したので進路の反対にVORがある)のだ。そこで改めて次のVOR局を指定してやれば、地球上のすべての陸地の上に電波の道が作れるというわけ。

これは検査機器の画面だがコクピットにも表示できるVORの計器。緑が2点のVORを結ぶ線で、他印に向きがVOR局の方向を示す。この場合、自機は道筋のちょっと左を飛んでいるという意味

 ただ、向きだけだと不便なので、DMEという局と飛行機の間の距離を示す電波局も併設している場合が多い。これで距離と向きがわかるので、巡航速度で割り算すればあと何分で次のVOR/DMEに到着できるかもわかるのだ(実際には高度が加味された距離が出るので、地上での距離をピタゴラスの定理や三角関数を使って計算する)。

飛行機の安全運航と円滑な輸送を可能にする無線局の数々。これらはすべて検査対象となる

 こうして真っ暗の夜でもVOR/DMEの電波をたどって飛行すれば、世界中のどの空港にもいける飛行機だが、それはあくまで「VOE/DMEが正しい電波を出している」という前提の元。老朽化で精度が低くなることもあれば、自然災害などで正しい電波を出せなくなる場合もある。

 そんな超重要な道しるべを日夜検査しているのが、国交省のチェックスター。中部セントレア空港に基地を置き、日本のあらゆる無線航行施設を検査する、いわば空の「ドクターイエロー」だ。

国交省が配備している全6機のうちの1機。プロペラ小型機で有名なセスナ社の小型ジェット、サイテーション525C-CJ4。キャビンは大型ワゴンぐらいなので立って歩くのは無理

超カッコイイ、コクピット!

いやー、飛ばしたいなぁー。着陸できんだろうけど……

 世界に名だたる大企業の社長が乗るビジネスジェットのようなこの飛行機。実は自機の位置をGPSや、それを補正する地上のさまざまな無線局やデータリンクを使って数cm単位で把握できるという、軍用機も真っ青のハイテクマシン。

 これを使って「本来のあるべき値」と実際のVORの向き、DMEとの距離を測定し、電波の誤差を発見・報告するのだ。

ミッションは測定器を使ってこんなデータを取ること

そしてこんな報告書を作ること。この地味さが国交省なのだが、これが飛行機の安全を守る基盤となっている

検査対象は数知れず。1週間のうち4日飛んで、1日3、4空港のチェックを行なうという。お疲れ様っす!

検査中の測定器。ここではVORとTACANの複合局のVORTAC(ボルタック)を検査中の様子

 また管制官と通信するための音声用無線通信局、飛行機のコンピューターとデータリンクするための無線施設など、さまざまな無線によって運航は見守れている。これらについても不具合がないかを、日夜検査している。

管制に利用するレーダーなども検査の対象となる

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