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Uberのデザインチームが行なったグロースハックのすべて

2016年12月20日 09時00分更新

Reproが手がけるグロースハックジャーナルより、海外の著名ユニコーン企業が行なっているグロースハックの手法記事をまとめた集中連載をお届けします。

 Uberに入るまではグロースチームなどという言葉は聞いたことがありませんでした。Uberがグロースチームを作った時、私たちのCEOであるTravis Kalanickは、ビジネスをグロースさせることに集中するチームの重要性を強調しました。これに興味を持ち、私はリードデザイナーを買って出ました。グロースチームはたった2人のデザイナー、数人のエンジニア、プロダクトマネージャー、アナリストという小さなチームでスタートしました。2年間で300人の組織にまで拡大させ、デザインチームは30人にもなりました。

 このチームにおいて、デザインはビジネスのグロースを加速させるための中心的な役割を担っていました。私たちはUberのあらゆる点-プロダクト、マーケティング、内部ツールなど-に手を加えました。私たちはUberが進出している地域である68ヵ国の乗客、運転手、オペレーションチームのためにデザインしました。Uberが進出しているすべての地域でグロースを最大化させるために、実行したことのすべてをテストし、追跡し、計測しました。

 2年前は、指標に重点を置いたこのようなチームにデザインをどうフィットさせるべきかまったく自信がありませんでした。それから、チームメイトたちと私はハイペースでスピード、クオリティー、インパクトを成し遂げるグロース環境を作るというアプローチをとってきました。下記が私達が行なったことです。

サイエンスとアートの融合

 グロースチームのデザイナーたちはすべてのプロジェクトで実証的なアプローチをとります。私たちはまず、デザインが成功したと言える基準を定義します。この定義は定量的なもの(乗客の増加数、運転手の登録者数など)か定性的なもの(利用しやすさなど)、あるいは定量と定性の組み合わせです。成功を定義したら、どうやったらそれを達成できるか仮説を立て、その仮説に基づいてデザインします。デザインが終わったらテストをします。リサーチチームと共同でユーザー調査を行なったり、小規模なユーザー群に対してデザインを適用したり、全ユーザーに対してローンチし成果を詳しく観察することなどがテストに含まれます。ゴールを達成したらその仮説が妥当だったと考え、そのデザインを全ユーザーに対して公開し、次のプロジェクトに移ります。ゴールを達成できなかったら、無効だった仮説から得られたインサイトを用いてソリューションを繰り返します。

 このプロセスはキャンバスに気まぐれにペンキを塗りたくるアーティストというよりも、研究室で方法論に則って働く科学者に近いです。偶然が起こることは滅多にありません。デザインの決定は証明された事実と失敗から得られた学びによってなされます。このアプローチによって、私たちはグロースをコントロールし理解可能な方法で加速させることができるのです。

データの海にダイブする

 グロースチームのデザイナーはデータが大好きです。プロジェクトに関連した指標を深掘りするために、データアナリストとプロダクトマネージャーとは密接に仕事をします。実際の分析は彼らに任せていますが、クリック率や顧客獲得コスト、統計的重要性などのコンセプトは私たちも理解しています。定期的に数字を振り返り、分析レポートから得られたインサイトをデザインの決定に生かします。

 プロジェクトが始まるときは、私たち自身の見解とユーザー調査から学んだことを組み合わせ、データから傾向を読み取ります。もしプロジェクトを製品ロードマップに乗せたいと主張する場合は、常にデータを用いて事例を強化します。これによって適切な問題に常にフォーカスし、次にするべきことを最大限できる推測から導き出したりはしないのです。

 プロジェクトが始まってからは、データによってデザインのインパクトを検証します。鍵となる指標を計測し、デザインが意図したものになっているか確かめます。例えば、新規サインアップ画面の変更に取り組むときは、ボタンのクリック数やコンバージョン率、新規アカウントの作成数などを計測します。デザインのテストでそういった指標に改善が見られなければ、その機能変更をすべての顧客に適用する前にさらなるテストを繰り返します。これによってデザインで行なったことの効果を最大化させ、次のプロジェクトに移る前に正しい理解を得ることができます。

より多く

 私達のアプローチはABテストにかなり依存しています。なので各問題に対して1つ以上のソリューションをデザインしなければいけません。ユーザーを惹きつけたデザインが何かを見るためにランダムに選択肢を提示するという意味ではありません。よく考えて複数のバリエーションを作り、それぞれにはっきりとした仮説を設けます。デザインは完成されていてクオリティーの高いものを用いるので、どの選択肢もうまくいきますが、うまくいく理由はそれぞれ異なります。そういったバリエーションの異なるデザインを小さなユーザー群に対して実施し、全ユーザーに対して最高のソリューションをローンチする前にさらなるテストが必要であれば繰り返し行ないます。

 例を挙げると、新規で運転手となってくれる人を惹きつけるためにFacebook用の広告をデザインする時は常に、運転手にサインアップしてもらうために異なるベネフィットを説いた複数の見出しを選択肢として設けテストします。何が1番注目を集めるデザインかを把握するために、しばしば視覚的に異なる誘導をします。写真、イラスト、コピーライティングの強調などです。どの選択肢もUberを正しく表現していますが、それぞれがUberの異なる側面とブランドを強調しているのです。

 こうしたテスト方法には2つの目的があります。1つ目は、デザインを最大化できるという点です。もし自分たちがベストだと思ったデザインだけを出していたら、実はベストなソリューションはアイデア・ボードに貼られたままになっているというリスクを抱えることになります。もし複数のコンセプトを考えてすべてを世に出せば、顧客にとってベストなデザインをリリースできる見込みがあります。2つ目は学びになるということです。何を実行したか、何からはインサイトが得られなかったか、顧客ごとの適したメディアは何かを追跡するのです。私たちはこれらの学びを将来のプロジェクトに生かし、次回ではよりスマートで適した選択肢を作ることができるのです。

より少なく

 私たちは最小の労力で最大のインパクトを生むために効率的にデザインします。もし小さな変化が大きな改善をもたらすのであれば、プロダクトや機能を1から見直したりはしません。私たちは問題に対して常に最もシンプルで、簡単で、軽いソリューションから探し始めます。

 例えば、乗客用のUberアプリでUberに招待する機能のアクセス数を改善したいと思ったら、シンプルにメニューのリンクを「シェア」から「乗車無料」に変更します。アクションの説明から機能を利用した場合の価値の説明に変えることで、友人を招待するユーザーの数は大幅に増えました。この改善でデザインに費やした時間は0です。その結果デザイナーは代わりにほかの異なる新機能開発に時間を割くことができました。

 逆説的ですが、こうして労力をかけないことに注力することによって、より多くのことを行なうのです。ABテストでより多くの変更ができますし、各プロジェクトでより多くの繰り返し検証ができますし、より多くのプロジェクトを手がけることができます。労力をかけないというのは大規模なデザインプロジェクトをしないということではありません。(インドの決済画面を見てみてください)まず最も簡単なソリューションから考え、1から見直す必要のない機能を1から見直す無駄な時間を費やさないということです。

早く動く

 素早い動きはインパクトを拡大します。素早くリリースすればするほど、調査やABテストの結果を素早く得ることができます。こうして得た学びが将来のイテレーションに影響を与え、プロジェクトにおいて成功を素早く見つける役に立つのです。成功をより素早く見つけることができれば、より短い期間で次のプロジェクトに移り、ほかの領域でインパクトを生む改善ができます。

 スピードもUberが成功するための戦略です。より多くの人がサービスを使うようになるほど、エコシステムが改善されます。より多くの運転手が道路にいるようになれば、乗客が待つ時間はより短縮されます。乗車リクエストの数が増えれば、運転手の1時間あたりの乗車数は増え、乗客を乗せていない間の時間は短くなります。私たちはすべての顧客の体験を向上させるために急激に成長しています。

 素早く動きながらも問題について深い考察をし、さらにデザインを洗練させるというのは大変です。これを実現するために仕事のプロセスを刷新しました。多くのプロジェクトはアイデアとソリューションを生むためにすべてのチーム知恵を活用する横断的なブレインストーミングから始めます。定期的にラフスケッチを一緒に行ない、デザインを磨き上げて洗練させるのに時間を使う前の完成度の低い状態で複数の選択肢を探ります。間違った方向に進んで時間を無駄にするということを無くすため、作ったデザインは早い段階でレビューしています。

マジックを忘れない

 データと指標にフォーカスしていますが、感情的なインパクトを仕事に取り入れようともしています。 Uberの文化の1つに「マジックを起こそう」というものがあり、私たちは成長のゴールとマジックが起きた感覚を両方達成するまでデザインは成功していないと考えています。このマジックはビジュアルの素晴らしい改善、美しいイラストや写真、あるいは楽しいアニメーションとインタラクションなどによって生じるものです。

 マジックは計測するのが難しい指標ですが、その価値は同じだと思っています。私たちは仕事につけ加えるプラスアルファは何があるかを常に考えるように努めています。このチームで働く事の醍醐味がここにあります。

 グロースデザインチームをスタートさせてから2年が経ち、かなりの成長を遂げてきましたし、その成長を止めるつもりはありません。世界中でUberの成長を加速させ続けるという私たちのミッションを手伝ってくれる素晴らしいデザイナー、ライター、リサーチャーが必要です。もしあなたが素早くプロダクトや体験を世に出して世界中の人々にインパクトを与えたい、そしてさまざまな街を生産的で効率的にしたいと思ったら、Uberのデザインチームのキャリア採用をチェックしてみてください。


 この記事は、Medium上の記事”How We Design on The Uber Growth Team”を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。

※本記事は「グロースハックジャーナル」からの転載です。転載元はこちら

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