クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。
第4回テーマ:電子カルテ x トータルコスト
電子カルテはトータルでいったいいくらかかるものなのだろうか。大手電子カルテメーカーの場合、価格帯がおよそ350万円前後で、メンテナンス料は年間40万円程度だといわれている。
しかし近年、クラウド技術の普及により電子カルテの低価格化が進んでいる。クラウド型であれば、サーバーやプラットフォームを用意する必要がないため、そのぶん導入しやすい価格になっているのだ。
以上が基本的な部分だが、ここからはクラウド電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。
お得なのはクラウド型電子カルテ
電子カルテの導入にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか? 少し古いデータになりますが、2009年にエムスリー社が行なった調査によると、平均購入費用が440万円で、月の保守費用の平均は4.9万円でした。最近では価格競争が進み安くなっているものの、それでもまだ初期導入費用が約300万円、月の保守費用が3~4万円ほどかかるとされています(レセプトコンピューターを含む)。さらに、通常5~6年ほど経つとハードウェアを更新することを求められ、そのたびに300万円ほどの費用がかかります。仮に20年間で4回更新する場合、300万円×4回+50万円×20年=2200万円が総費用となります。
電子カルテ導入にかかる費用はこれだけではありません。院内の各種検査機器、PACSや予約システムなどの電子カルテ以外のシステムなどとの連携をする場合、それらの機器やシステムとの接続費用がかかる場合があります。(しかもユーザーごとに!)接続費用はメーカーやシステムによっても異なりますが、数万円~数十万円ほどかかるのが相場です。そして、片方のシステムがバージョンアップすると、そのたびに再度接続費用を請求されるなんてこともあります。
ビジネスで使用されている多くのクラウドサービスでは、APIによる連携が主流となっています。これはお互いのデータの受け口を公開することで、システム間でのデータのやり取りをする仕組みです。つまり、最初から接続することを前提としているため、ユーザーごとに接続作業をする必要が無いのです。クラウド型の電子カルテは、初期費用、維持費用だけでなく、連携にかかる費用も下げることができます。長期に渡って使う場合の総費用で比較すると、クラウド型が圧倒的に安くなります。
記事監修
裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長
1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。
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