勝負の決め手は、エンジニア・非言語・雇用創出
「海外挑戦は楽しい」ソラコム・Knot・SORABITO各代表が語った日本発の強み
日本のベンチャーには”残念”なところがある。起業から年数が経っても、結局のところ国内、もっと言えば地元にしか市場を展開できていないケースが非常に多いのだ。ある程度のインフラが整い、ビジネス展開するには十分な市場がすでにある日本特有の状況ではあるのだが、シリコンバレーのスタートアップが西海岸だけで商売をしているなんてありえない。グーグルやアマゾンなどのようにビジネスを世界規模にスケールさせる強烈な速度こそ、スタートアップが勝ちあがるために必要となる。
IoTビジネスプラットフォームのソラコム、純日本製ウォッチブランドのKnot、建機取引マーケットプレイスのSORABITO、以上の3社は、国内のスタートアップでありながらすでに海外展開に着手している。いずれも業界で注目を集めるトップランナーだ。
ソラコム玉川憲社長、Knot遠藤弘満社長、SORABITO青木隆幸社長の3人は、11月15日開催のビジネスイベント「経済産業省×ASCII STARTUP 日本発グローバル・ベンチャー公開選考会」に登壇。パネルディスカッション『日本発グローバルスタートアップの戦い方』で海外展開に対する考えを語った。ディスカッションでシェアされた3社3様の知見に学び、これからの時代を生きる方法を見つけたい。
日本発のグローバル・ベンチャーは、ないわけではないが、どうやらハードルが高そうだ。だがそのハードルを乗り越えビジネスを展開する3社について、まずは各代表に現状の展開を聞いた。
ソフトベースの世界規模プラットホーム
ソラコム玉川憲社長
ソラコムはモノ向けの通信プラットホームを提供している会社だ。IoTという言葉を聞く人も多いかと思うが、今後さまざまなモノがインターネットにつながり、人工知能で処理されて便利になる。
ここでいう「モノ」とは自動車や自販機やバイクや家電や時計などが含まれてくる。そういうときに最適な通信がまだないため、ソラコムは1日10円から通信できるSIMを販売している。どう実現しているかというと、NTTドコモの基地局を借りて、クラウドで動くソフトウェアを作り、資産をもたないバーチャルキャリアとしてIoTプラットホームを提供している。
グローバル展開ということで2015年9月にサービスインしてから1年が経ち、7月から世界中の携帯キャリアと提携して世界120ヵ国で使えるSIMカードを実証実験キットとして提供開始している。
「ITやスタートアップで使われる『プラットホーム』はもともと"共通基盤"という意味がある。ソフトウェアを使ったビジネスのためコピーしてもコストが増えない共通基盤ビジネスは、世界中で売っている会社のほうが競争力は強くなる。グーグル、アマゾン、フェイスブックなどがあるが、日本からはソフトベースのプラットホームビジネスがいまだ出てこない。ソラコムとしてはそこに取り組みたい」(玉川氏)
”日本製”武器にネット通じてアジア展開
Knot遠藤弘満社長
ジャパンクオリティで日本と世界を結ぶ、メイドインジャパンのカスタムメイドウォッチブランドがKnotだ。カスタムメイドといっても、手づくりのクラフトではなく、あくまでもブランドとして量産をかけている。日本国内では実に80年ぶりに生まれた時計ブランドだ。
遠藤社長自身、15年間ウォッチバイヤーとして世界中を飛びまわり、海外メーカーと契約して日本で広めていくことをやってきた。15年間海外に接してきた経験から、メイドインジャパンはアジアを中心に人気があることがわかっていた。「どんな業界もそうかもしれないが、時計業界は特に新規参入が難しい。ユニクロやJINS、Zoffなどが高品質な製品をリーズナブルな価格で提供してきた中、腕時計だけはどんどん高単価になってきた。同時に海外では、『300ドル以下で買えるメイドインジャパンが市場からなくなってしまった』という声を聞くようになった」(遠藤氏)
流通のムダをなくし、高品質な日本製を安く提供できれば海外でも展開できるのではないかという形で始めたのがKnotだ。約8000種類のカスタムオーダーが誰でも楽しめる。ネット販売から始めたが、すでに国内には3店舗の直営店がある。
海外展開については、店舗での体験の場であったり、ウェブサイトを使ったサービスだったり、ビジネスモデルやサービスそのものを海外に輸出していこうという戦略だ。2016年1月には台北に直営店をオープンしている。「海外からも問い合わせをもらっていたが、待ってもらっていた。秋から工場がようやく増えた。この2ヵ月で7ヵ国を回ってきた。2017年度は海外がひとつのマーケットの中心になる年と考えている」
建設機械のグローバルプラットフォーム
SORABITO青木隆幸社長
SORABITO(ソラビト)は、働く機械、建設機械を中心とした農業機械やフォークリフトを取り扱う売買プラットホーム運営会社。青木社長自身が建設業の家に生まれ、建設機械に触れて育ってきた。
海外挑戦のきっかけは、インターネットに建設機械を登録した際の海外からの問い合わせだ。つきつめて調べると、日本の建機市場は、多くの在庫にあふれ、毎月きちんと法定点検されていてコンディションがいい、世界でもまれな市場だった。だが、実際の建機のオークション会場はアナログで、会場に実物を持っていかなければいけない。購入には、遠方まで行かなければ買えないという状態だった。
同社が手がけているALLSTOCKERは、取引をシンプルにして、品質を保った独自鑑定基準を守り、金融機関とも提携し、安定した高額取引ができるようにした中古建機のECサイトだ。物流会社とも提携して、スタート時点から世界中にも届けられる物流体制を整え事業を展開している。
「海外展開は商習慣や行動意識を徹底的にわかった上で広めていくのが大事。我々の場合、パートナー制度を作ることできちんとフィードバックを得られるようにしている。販売されたあとに使い続けていただかなければいけないためアフターフォローの体制が肝心」
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