ソフトバンクグループは11月7日、2016年度第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比0.2%減の4兆2718億3400万円、営業利益は同3.5%増の6539億4400万円で減収増益。ただし、米Sprintの売上が円高の影響で目減りしているためで、ドル建てではSprintも増収となり、実質的には増収増益になるとしている。
その他の指標では、調整後EBITDAが同7%増の1兆3338億6600万円、純利益は同79.6%増の7662億4900万円だった。国内通信事業が堅調で、ヤフー事業も増収によって収益を押し上げた。営業利益はヤフー以外が増益となったことで、順調な増加を示した。
国内通信事業は、売上高は同3.1%増の1兆5545億6600万円、利益が同9.4%増の4659億3300万円と好調。移動通信サービス自体は「おうち割 光セット」による割引額の増加やPHS契約数の減少などによって売上が減少したが、端末保証サービスやコンテンツなどの収入が増加。「おうち割 光セット」でブロードバンドサービスの契約数が増加し、解約率が0.22ポイント改善となる1.06%になったことなどで、利益が増加した。これによってフリー・キャッシュフローが大幅に増加した。
移動通信サービスの契約数は26万3000増の3230万1000件、ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は同150円減の4570円、端末販売数は490万4000台だった。通期としては増益を継続し、フリー・キャッシュフローは5000億円規模に達する見込み。
事業立て直しを図っていた米Sprintは、米ドルベースでは売上高が同1.6%増、利益は47.9%増だった。円ベースでは売上高は同11.5%減の1兆7225億3700万円、利益は同28.5%増の1045億6500万円だった。ポストペイド型の契約が35万の純増となり、コスト削減も順調に推移した。
ドルベースでは売上、調整後EBITDAなどの指標が改善しており、孫正義社長は「今まではソフトバンクグループの足を引っ張るという重荷だったが、これからは直接な利益の成長エンジンになると自信を深めている」とアピールする。
ヤフー事業は売上高が同64.6%増の4094億9700万円、利益が同34.1%減の993億7100万円だった。利益の減少は前年同期のアスクル子会社化にともなうもので、ディスプレー広告が順調に成長しているなど、業績は順調だとしている。
ARMの子会社化によって、今期の決算からARM事業が加わった。売上高は143億5600万円、利益は14億5800万円だった。同四半期のライセンス契約は20件締結され、ロイヤリティー額は2億2800万ドル、ARMを採用したユニットの出荷数は同11%増の40億個だった。
スマートフォン向けにはほぼ独占状態のARMだが、サーバー向けは1%程度で、これを5年で20%まで拡大させるほか、IoT向けは現在の8割近いシェアを維持しつつさらなる拡大を目指す。
孫社長は「いまだ成長期で1株も売りたくなかった」という中国アリババの株式を売ってまでARMを買収した。これは「今すぐ本格的に取り組まなければならないビジョンがある」(孫社長)からだという。「コンピュータの知的能力が人間を圧倒的に超えていく」(同)という“シンギュラリティ”に向けて投資を強化していく考えだ。
ただし、ARMの買収でソフトバンクグループの純有利子負債は拡大しており、この借金を増やさずに投資を行なうために「SoftBank Vision Fund」を設立。今後5年間でソフトバンクが250億ドル(約2.5兆円)、サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)が450億ドル(約4.5兆円)規模を出資。その他の投資家とも交渉しており、最終的には1000億ドル(約10兆円)規模のファンドとなる。今後、数百億円以上の投資はファンド経由で行なうことで、ソフトバンクグループ本体の借金を増やさずに、戦略的な投資を行えるとしている。
孫社長は、「守りをしっかりと固めながら攻めていく」と強調し、グループとしての利益を確保して借金を返済しつつ、シンギュラリティに向けた投資を加速していく考えだ。
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