富士通研究所は11月7日、人工光合成において従来の100倍の効率を実現した材料を開発したと発表した。
人工光合成は、太陽光によって水や空気(とくに二酸化炭素)から有機化合物(糖・アルコールなど)を製造する技術で、将来的な再生可能エネルギーの重要な要素と期待されている。今回開発したのは水から酸素と電子を取り出す明反応電極で、いわゆる「水の電気分解」を光エネルギーで行なう部分。
大きなポイントは、光励起材料を基板に吹き付ける際に原料粉末を薄い板状に破砕しながら積層する薄膜形成プロセスを開発した点。これにより、原材料の結晶構造が原子レベルのひずみのある組成となり、太陽光のエネルギーを吸収できる最大波長が490nmから630nmに広がり、利用可能な光の量が2倍以上となった。
また、薄膜は欠陥がないことから結晶性がよく、粒子間の電子伝達特性が優れた電極となるため効率が上がる。さらにナノサイズの粒子なので水と反応する表面積が大きく、膜表面に規則正しく並んでいることから水と光の相互作用が大きく促進されるという。
使う光の量が2倍に、反応表面は50倍以上になったことから、全体の電子と酸素の発生効率は100倍以上となったことが確認された。富士通研究所では、今回開発した明反応電極の特性向上とともに、暗反応部(二酸化炭素の還元)にも取り組み、人工光合成技術の実用化を目指すとしている。
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