アドビ システムズは9月に、「Adobe Stock」のサービスを大幅にアップデートした。
Adobe Stockは、5500万点以上の写真やビデオ、イラスト、ベクター画像などを、単品購入で1180円、年間プランで1カ月あたり10点を3480円、年間プランで1カ月あたり350点を2万1980円などで利用できるフォトストックサービス。
利用者(コンテンツ購入者)向けのアップデートとしては、プロの写真家による10万点におよぶコレクション「The Premium Collection」を利用可能になった。
そのほか、「Make a Msterpiece」によって再現された名画も閲覧できる。これは、盗難や焼失してしまった名画を、Adobe Stockに登録されている素材だけを使って再現するという取り組み。例えば、レンブラントの「ガリラヤの海の嵐」という作品は、ポルトガルのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に所蔵されていたものの、1990年に盗難にあい消失。しかし、この作品のデジタルコピーが残っていたので、イラストレーター/グラフィックデザイナー/フォトグラファーとして活躍するアンクル パター(Ankur Patar)氏によってデジタルで再現されており、利用者は名画の再現に使われたAdobe Stockの素材の確認や利用ができる。
もちろんAdobe Stockの利用者は、上記を含む5500万点以上の画像やビデオなどのコンテンツを、Photoshop CCやLightroom CC、Bridge CCなどから直接検索して、ダウンロード、購入まで可能だ。
コントリビューター(コンテンツ提供者)向けのアップデートとしては、新しいポータルサイトの開設により、コンテンツの投稿や売上管理が簡単になった。
Lightroom CCやBridge CCでコンテンツを選んで、Adobe Stockに直接投稿することもできる。アップロード時のスプレー機能を利用して、複数のコンテンツに同じタグを付けるといったことも可能だ。
注目なのが機械学習による自動タグ付け機能。コントリビューターがコンテンツを投稿すると、Adobe Stock側が機械学習によってコンテンツに適したタグを自動で付けてくれる。
Adobe Stock関連のイベントに参加するために本社から来日していた、Adobe Stockコンテンツ戦略担当を務めるスコット・ブラウト(Scott Braut)氏に話を聞いたところ、現在のところAdobe Stockで公開されている写真やイラストについては世界共通のルールで運用されており、国別に異なったコンテンツが提供されることはないとのこと。
投稿するコンテンツは、真実、カラフル、ファッショナブル、ストーリー、整った構図、クリエイティビティ、シンプルなどのキーワードで表せるものが望ましいとのこと。写真の加工については、報道写真なのか芸術作品なのかで許容範囲が変わってくるそうだ。コンテンツの選別は複数のキュレーターが担当。事前に機械的にふるいに掛けることも可能だが、現在はキュレーターが人力で審査しているそうだ。投稿する作品については、Adobe Stockのサイトでガイドラインを確認できる。
アドビは先日、米マイクロソフト社と戦略的な提携を発表し、人工知能や機械学習などでも協力することが明らかになったが、Adobe Stockの自動タグ付け機能における機械学習についてはサードパーティーのテクノロジーを利用しながらも、アドビ独自の実装になっているとのこと。マイクロソフトとのシナジー効果が出るのはもう少し先のようだ。なお、機械学習による自動タグ付け機能は、まずは英語で解析されて各国語に翻訳される仕組みになっているそうだ。
最後にブラウト氏に、アドビが買収してAobe Stockの基となったフォトストックサービスであるfotolia(フォトリア)との棲み分けについて聞いたところ、Adobe Stockのコントリビューターになるための資格はfotoliaとほとんど同じとのこと。また、欧州、特にドイツなどではfotoliaのブランドが強いので、いまのところAdobe Stockに完全統合する予定はないようだ。
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