KDDIは8月2日、2016年度第1四半期年決算を発表した。売上高は前年同期比8.0%増の1兆1304億5300万円。営業利益は同19.1%増の2751億1200万円で増収増益。通期予想に対する進捗率はそれぞれ24%、31%となり、田中孝司社長は「今期の目標に向けて順調な進捗」とアピールする。主力のモバイル通信事業が好調で、サービス、コンテンツなどを含めた“au経済圏”のさらなる拡大に注力していく。
そのほか、EBITDAは同478億2200万円増の4153億1700万円、設備投資額は878億6000万円だった。au通信ARPA(1契約当たりの月間収入)が147億円増加するなど、好調だったことに加え、販売奨励金の減少などで端末販売コストが減少したことで増益につながった。
au契約数は第1四半期に22万1000契約増の4659万契約。スマートフォンの新規契約増加だけでなく、マルチデバイス戦略によってタブレットやルーターなどの複数端末の契約が増加した。ひとり当たりのモバイルデバイス数は1.42となり、2台持ちユーザーが着実に増加。通信ARPAは同210円増の5810円に拡大した。
総務省のタスクフォースなどによって販売奨励金などが抑えられたことで、MNO3社間の流動性はほとんどない、と語った田中社長。その結果、利益貢献につながったこともあり、KDDIでは長期利用者向けに新たな会員プログラム「au STAR」を8月から提供する。
「au STAR パスポート」では、auショップの来店予約をネット経由などで行なうことで、待ち時間を削減する取り組み。予約者はau WALLETカードで識別するため、カード発行と利用にもつなげる狙いがある。
「au STAR ロイヤル」は、従来の利用ポイントに加え、利用年数とデータ定額料に応じたWALLETポイントを毎月還元する仕組み。長期利用者ほどポイントは高額になり、販売奨励金削減などの利益は、このロイヤルの仕組みで還元するという。
「au STAR ギフト」は、「世界データ定額」の1日ぶん利用券を毎月提供するほか、エンターテインメントコンテンツ、3000円ぶんのギフト券提供などを実施する。長期利用者向けのサービスを充実させることで、さらなる囲い込みが狙いだ。MNO3社間の動きが減った代わりに、MVNO向けの転出は増えているということで、メリットをアピールすることで、MVNOへの転出を減らすことを目指す。
それに伴い、グループ内のMVNOであるUQ mobileの取り組みを紹介。取扱店舗を約1000店舗に拡大し、料金プランでもキャンペーンで月額1980円になるなど、サービスを強化。不足していた端末ラインアップを充実させ、MVNOの受け皿として機能させたい考えだ。KDDIの決算でMVNOのUQ mobileを紹介するのは初めてで、今後、MVNOへの移転でKDDI回線を利用するUQ mobileなどのMVNOを選択してもらうことをさらに目指していく。それによって、ユーザー転出による収入減を、回線利用料による収益で賄いたい考えだ。
新市場としては、IoTを強化。トヨタ自動車との協業によるコネクテッドカーへのグローバルな通信プラットフォームの提供やスマートメーターといったジャンルで、まずはIoT市場での収益確保を目指す。
au IDとWALLETカードをベースとした“au経済圏”では、従来の食品や日用品の販売から、auでんき、生命保険、損害保険、住宅ローンを開始。ユーザー層の拡大に加え、この支払いにクレジットカードタイプのWALLETカードを利用してもらうことで、収益の拡大を狙う。プリペイドカードのWALLETカード事業は単体ではまだ赤字だが、クレジットカードタイプは黒字化しており、毎月の支払いで利用できるクレジットカードタイプの拡大によって、利益を確保したい考えだ。
auかんたん決済とWALLETカードによる決済プラットフォーム、ユーザーから得られたビッグデータをもとにしたレコメンデーションやプロモーション、au STARなどのポイント還元プラットフォームを駆使することで、au経済圏をさらに拡大して“ライフデザイン戦略”を打ち出し、通信事業以外でも収益を拡大していく。
グローバル戦略では、ミャンマー、モンゴルにおける通信事業を継続。「引き続き推進していく」(田中社長)。
田中社長は、中期計画の初年度として、進捗は順調であることをアピールしつつ、達成に向けて国内外の事業戦略を進めていくと話している。
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