Xperia X Performance開発者インタビュー【前編】
Xperia X Performanceの背面メタル採用とFeliCaアンテナの移動による恩恵が明らかに
カメラやディスプレー、音楽といったソニーの持つ技術を詰め込み、高い人気を集めたXperia Zシリーズだが、直線的な進化は限界を迎えつつあった。スマートフォンを取り巻く状況も、初代である「Xperia Z」が登場したころから変わり、成熟期に突入している。
こうした中、ソニーモバイルは、2月に、スペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress 2016で、Xperiaシリーズのフルリニューアルを発表した。それが、「Xperia X」シリーズだ。日本には、その最上位モデルとなる「Xperia X Performance」が導入され、ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアから発売されている。
Xperia Xシリーズは、スマートフォンにインテリジェンス(知能)を加えるというコンセプト下で、より手にフィットする、使い勝手のいいデザインに一新。Zシリーズで培った機能にも、スマホの計算能力を活かした機能を付加することで、さらに磨きをかけている。そんなXperia X Performanceの企画経緯や開発秘話を、ソニーモバイルの開発陣が語った。
「Z」から「X」になって
人々の生活により溶け込めるように
──Xperia Xで、コンセプトを刷新しました。その結果として、デザインやUI、機能にも変化が合ったのだと思います。まずは、そのコンセプトを改めて教えてください。
矢部氏:Xperia Zは「Best of Sony」ということで、ソニーのテクノロジーをつぎ込んだシリーズです。そのZを幅広いお客様にご愛顧いただく中で、Xperiaとしてどういったスマホであるべきかを再考し、機能の進化に加えて、インテリジェンス……つまり、知能を詰め込むことで、持ちやすさなども追求しました。
元々、Xperiaとは、「体験」を意味する「experience」と、「場所」を意味するラテン語の「ia」を合わせてできた造語です。「Xperia X」の「X」はその頭文字で、人々の生活にもっと寄り添っていきたいというコンセプトの下、命名しています。
今回は、そのXperia Xシリーズの第一弾として、持ちやすさにもこだわりを入れています。世界中で調査をかけ、持ったときのサイズはどのぐらいがいいのか。さらにその中に、ソニーの技術やインテリジェンスを入れていきました。
──「Xperia Z5」は5.2型でしたが、Xperia X Performanceは5型で、しかも形状が丸みを帯びています。持ちやすさのためには、やはりこの形状が必要だったということでしょうか。
矢部氏:必ずしも5型を目指したというわけでなく、持ちやすさを追求した結果です。数字上の大きさだけでなく、丸みなど、さまざまな要素があり、そのバランスを調査した上で、5型になっています。
──とは言え、画面サイズが小さくするというのは、開発側からすると勇気がいることだったのではないでしょうか。
矢部氏:お客様としては持ちやすい方がいい。でも、ディスプレーは大きい方がいい。その中で、自信を持って送り出せるバランスになったと自負しています。数字上は確かに5.2型から5型へと小さくなっていますが、「思ったより大きく見える」という声もあります。持ちやすくて、手になじむところを、総合的に見ていただているのではと思います。
デザインのコンセプトには、人々の生活どう溶け込ませるのかというユニファイドデザインの考え方があります。どういったデザインや形、色がいいのか、UIも含めてどうなじませていくかを考えました。その結果、形としては丸みを帯びたものになり、背面にはメタルを採用して、より生活になじむようにしました。
色の面でも、より周囲に溶け込むことを考え、背面、側面、前面まで、同じ色にすることに挑戦しています。UIもボディと色味を同じにして、持ったとき、外観と中のUIの統一感を出せるようにしています。Xperiaは側面のボタンがアイコニックですが、ここを押すことで、「ふすま」が開くようにロックが解除される。統一感を出し、そこから新しい世界に入っていくことをイメージしています。
──確かに、ロック解除画面も、横方向になってますね。
矢部氏:(指紋センサーを搭載した)Xperia Z5がご好評いただいていた理由のひとつとして、手に取ったときから動かせるというものがありました。どういった挙動なら、よりスムーズに入っていけるか。ハードとソフトの両面から、それを考えていきました。
アイコンの改訂や取捨選択など
アプリ面でも「X」のコンセプトを追求
──その意味では、ホームアプリもリニューアルされています。
矢部氏:弊社のアプリのほかにも、グーグル製アプリやそのほかの会社のアプリがありますが、アイコンの整合性にもこだわりました。
これまではプリインストールされているソニー製のアプリの中でも、丸みを帯びているものとそうでないものがあったのですが、この度、ソニー製アプリに関しては丸いアイコンに統一しました。フォルダーもそうですね。こういう細かなところまで、ハードとソフトのすべてにおいて、デザインをしています。
──内蔵アプリもすっきりした印象ですが、一方でソニー製カレンダーアプリがプリインストールされなくなったのは少々残念です。あれは、使い勝手がよかったのですが。
矢部氏:プリインストールアプリや機能にも、どういったものが求められているのかを再考しました。弊社として出しているもののほかに、サードパーティーのものもあり、実際手に取ったときにどう感じるか。ご好評いただいていたことは確かですが、同じような使用用途のアプリが並ぶと混乱してしまいます。弊社としても取捨選択をし、より集中させる形にしました。
染谷氏:アプリがたくさん入っている混乱も生じてしまいますし、そのぶん、ストレージ容量も取られてしまいます。オペレーターさんとの話の中でも、お客様に対して容量を担保しつつ、レスポンスを加味して選んでいきたいという話になりました。
──なるほど。Google Playからダウンロードはできるので、その導線が分かりやすいともっといいかもしれません。
背面はガラスから金属へ
日本モデルの樹脂部分は、国内で快適に通信するため
──次に、ハードウェアについて伺います。これまで背面がガラスだったところを、全面金属にしています。その理由を教えてください。
矢部氏:生活に溶け込ませるということで、より上質感や高級感を出したかったからです。腕時計もそうですし、アクセサリーもそう。金属の見た目や質感を考え、持っていただいたときの感覚を含めて検討し、メタルを採用するに至りました。
──金属素材を採用するスマホも増えていますが、Xperia X Performanceはどういったコンセプトなのでしょうか。
矢部氏:極力きれいなデザインを目指し、元々は1枚のフラットなデザインを考えていました。ロゴのデザインも、かなりすっきりさせています。(生活に溶け込む)アクセサリーのようなデザインを目指し、ブラックとホワイトにはヘアライン加工、ほかはサンドブラスト加工と、加工の使い分けもしています。
──一方で、グローバル版にはなかった樹脂が下部にあり、1枚の金属ではなくなってしまいました。これは、アンテナの性能を上げるためでしょうか。
矢部氏:デザインに強くこだわりは持っていた一方で、日本はネットワークの環境がすばらしく、お客様が求めるスピードや安定感へのニーズも高いものがあります。そのバランスを見てですね。お客様にご納得いただけるかどうかで、差分も出ています。
染谷氏:グローバルでも、それぞれにアンテナのリクワイアメント(要求)があり、そこに合致させることは大前提です。当然、(リクワイアメントは)すべてが同じではなく、海外においてはスリットがなくてもそれを担保できました。もちろん、これがなければつながらないというわけではありませんが、国内ではキャリアもそこに力を入れています。(キャリアのうたう最大速度などの)実際とかい離が出てしまわないよう、そこにはこだわっています。
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