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AMD Polaris Tech Dayレポート

AMDがRadeon RX 480/470/460を発表、その戦略とは?

2016年07月01日 17時00分更新

GPUアーキテクチャー拡張とビデオ機能の強化

TrueAudio Nextなどの新API対応について説明するテリー・マケドン氏(Director of Software Stragety and UX)

 AMD独自のVR API「LiquidVR」も機能強化が図られた。GCNアーキテクチャーでは、命令発行ユニットとして、グラフィックス処理を制御するグラフィックス・コマンド・プロセッサー1基と、汎用コンピューティング処理を制御する4基のACE(Asynchronous Compute Engine:非同期コンピューティングエンジン)を搭載している。

 これに加えて、2基のハードウェアスケジューラーを搭載しており、グラフィックスおよびコンピューティング処理の、より動的かつ効率的なスケジューリング管理が可能だ。

AMD独自のVR対応API「LiquidVR」も強化

 Oculus Riftでは、ユーザーが急に顔の向きを変更したり、VR酔いしにくいと言われる90fpsでフレーム描画が間に合わないと判断した場合、「タイム・ワープ」と呼ぶ、前のフレームのデータを利用して、ヘッドマウントの位置情報に応じて描画エリアの傾きなどを補正させて表示させる処理を行なっている。

 この際、VRエンジンは、GPUに対して非同期タイム・ワープ(Asynchronous Time Warp)と呼ぶ描画の中止命令と、最優先処理として前のフレームに対する位置補正などのポストプロセシング処理を行なうように指示をする。

 AMDでは、この際に、ACEが一定のCUに対して非同期コンピューティング処理をかけられるため、より短時間で効率的な処理ができるとしている。

 さらに、第4世代GCNアーキテクチャーでは、こうした非同期タイムワープなどの優先度の高い処理が発生した場合、ほかの処理より最優先して動的に非同期シェーダー処理を割り当てる「Quick ResponseQueue」を追加。

最優先しなければならない汎用コンピューティング処理などに、動的にCUを割り当てられるようにするQuick Response Queue

 また、第4世代GCNでは、壁や地面の特性に応じた反響や吸音といった、より自然な音響効果を物理演算処理するTrueAudio Nextのサポートを追加しているが、こうしたGPUへの負荷が高い処理が生じるゲームやアプリケーションでは、一定数のCUを汎用コンピューティング処理に割り当てるCompute Unit Reservation機能も追加されている。

よりリアリスティックなサウンド表現を実現すべく、GPUを使った物理演算に対応したTrueAudio Nextに対応

TrueAudio Nextや、VRにおける非同期タイムワープのように、負荷が高い処理が必要とされる用途では、一定数のCUを汎用コンピューティング処理に割り当てられるようにもできる

 さらに、VRヘッドマウントディスプレーの接眼レンズ歪み補正の負荷を軽減すべく、複数のビューポートに分割描画できるようAPIを拡張。NVIDIAがPascalアーキテクチャーで拡張したSimultaneous Multi Projectionで実現したLens Matched Shadingと同様の機能を実装したことになる。

 ただし、AMDは、この処理をソフトウェアレベルで処理する一方で、次世代VRでサポートされると考えられている、視線にあわせて高解像度で描画すべきエリアを動的に変更する視線追尾対応のレンダリング手法も組み込んでいる。

NVIDIA同様、AMDも複数のビューポートを割り当てられるようAPIを拡張。また、視線追従を用い、常に描画領域の中央を高解像度で描画するのではなく、視線の先を動的に高解像度描画できるようにもできる

よりきめ細かな設定が可能になる新しいオーバークロックツール「WattMan」も、Radeon RX 400シリーズ発表にあわせて投入される

 一方、ディスプレー機能では、NVIDIAのGeForce GTX 1080と同様に、Display Port 1.3および1.4、そしてHDMI 2.0bに対応。Ultra Blu-rayがサポートするHDRコンテンツの再生や、HDRゲームタイトルへの対応も果たす。

 ビデオエンジンでは、4K60(4K解像度の60Hz表示)にも対応するHEVC(H.265)エンコード機能を追加。

 細かいオブジェクトや色差が少ないオブジェクトを高速エンコード処理すると、モザイク状のノイズが発生してしまうが、これを抑えた高品質なエンコードを可能にすべく、2パスのエンコード処理もサポートしている。

Display Port 1.3/1.4、HDMI 2.0b、HDRと、最新技術にフル対応を果たした

Display Port 1.3対応により、1080pであれば240HzのHDR表示がサポートされ、5K出力もシングルケーブルで対応可能になる

PolarisのHDRディスプレー対応

Polarisでは、最大4K60のHEVCエンコードに対応

高速エンコーディングでも、より高品質なビデオエンコードを可能にすべく、2パスエンコードをサポートする

デコード機能も強化

Radeon RX 480×2と、GeForce 1080をAshes of Singularityでベンチマーク比較するデモも披露。ただし、このあたりのパフォーマンスについては、より多くのゲームやベンチマークテストで検証すべきだろう

 正直なところ、絶対的なパフォーマンスということでは、現行のRadeon R9 Furyシリーズより見劣りがする。

 日本国内においては、特殊な流通事情と、初値はプレミア価格になりがちなことを考えれば、AMDが発表した199ドル、現在の円・ドル相場で言えば約2万円という価格で、Radeon RX 480が市場投入される可能性は低い。

Radeon RX 480発売時の日本国内での価格は約3万3000円前後

 しかしながら、将来的にVRシステムを構築可能なグラフィックスカードが、より低価格で入手できるようになる素地を作ってくれる可能性はゼロではない。

 また、NVIDIA、AMDともに新アーキテクチャ製品が出揃ったことで、従来製品の値崩れも期待できるのもうれしいポイントだ。

 あとは、同時発表になったRadeon RX 470や同RX 460の発売時期や価格が、早いタイミングで明らかになることを期待したい。

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