ダークウェブを使っても、捕まるときは捕まる
今回、警察庁の情報技術犯罪対策課に取材し話を聞いた。Torは匿名性があると述べたが、完璧とは言いがたい。色々と穴があり、身元の特定も可能だ。まずは、ダークウェブ上での販売で検挙した事例について。
愛知県警が逮捕した事案では、ダークウェブ上で銀行口座を売り渡そうとした輩がいた。掲示板で銀行口座や住民票、社会保険証などを売ると書き込むと、客がアプローチしてくれるのだ。実際、現在でもそのような書き込みを確認できる。
警視庁(東京)は、ウイルスを販売していた輩を逮捕している。ダークウェブで数万円で購入したコンピュータウイルスをカスタマイズし、ダークウェブやLINEで知り合った人に売っていたのだ。今回は個人の犯行だったが、組織的に行われる可能性もあるという。筆者が確認したところ、ウイルスの価格は5万円前後で、9万円も払えばカスタマイズツールが購入できそうだった。
3件目は児童ポルノ。手持ちの画像を集中的にアップロードし、販売していたのだ。こちらは京都府警が逮捕している。3件とも、違法にお金を手に入れようとしていたのが、垣間見える。
「匿名性が確保されている」と信じられていたTorの日本の利用者を、逮捕した事例は上記のほかにもある。日々、情報が警察庁に集まり蓄積されているので、全国の県警が、手法やスキルを開発しているとのこと。サイバー犯罪は国境が無い犯罪で、県境なんかもっとない。そのため全国のサイバー対策犯罪課は横でつながって協力しているという。警察の部署の中では、最も一体感のある部署のようだ。
今後、ダークウェブ犯罪を厳しく取り締まっていくのか、と聞いたところ
「ダークウェブだからやるとか、やらないということではありません。事件化できる証拠が揃えば、どんどん検挙していきます」とピシッと答えてくれた。
実際、素人がTorを自分のPCにダウンロードし、そのままの設定で自宅からアクセスするような場合、身元を突き止めることはそれほど難しくない。それにアメリカ政府はすでにTorを解読しているとも言われており、大規模な犯罪組織をいくつも摘発している。そもそも、銃やドラッグを購入しても税関で摘発されるに決まっている。
警察庁の担当者も、「実際に逮捕されている人が何人もいるわけですから、Torを使っても犯罪者として検挙されないという保証はありません。面白半分で、そんな犯罪に手を染めることはしてほしくないですね」と言っている通り、馬鹿なことはしないにこしたことはない。
ダークウェブの壁はすでに穴だらけ、悪いことをすれば普通に捕まると言うことは肝に銘じておこう。興味本位でダークウェブを使うことはやめておくことをお勧めする。
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