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関西大手メーカーに学ぶオープンイノベーションの思いや悩み

2016年06月28日 06時30分更新

新規事業とスピードアップが目的

 オープンイノベーションをとおして、他社やベンチャーとつながる目的はなにか。各社の考えるオープンイノベーションの果たす役割や狙いは新規事業の創出とスピードアップだ。村田製作所やパナソニックは、明確にオープンイノベーションを新規事業を創出するための手法として捉えている。

 ダイキンは猛烈な勢いで変化する技術に対応するため、社外の最先端技術を呼び込み、自社のコアな技術と融合させたいという。ヤンマーも主力とするビジネスだけでは大きな成長は難しく、研究開発、商品企画に新しい方法が必要と考え、そのためのひとつの手段としてオープンイノベーションを取り入れようとしている。自前主義が強い体質を、スピードと高い価値で変えていきたいという。

 とはいえ社内が一丸となってオープンイノベーションを歓迎し、推進していこうとしているかは決して“そう”ではないという。もともと日本はクローズド、いかに情報を外に漏らさないようにするのが企業として大切なことだった。あくまでオープンイノベーションはひとつの手段としてみており、全面的に取り入れようとしているわけではない。

オープンイノベーションは人の意識を変える取り組み

 今までになかったことを社内に取り込むのには、たとえトップダウンでやれといっても難しいものだ。オープンイノベーション推進に向けて、具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。

 豊富な経験をもつのがNTT西日本だ。今までも社外のハッカソン、アイデアソン、他社とのビジネスワークショップ、ビジネスコンテスト、アクセラレータープログラム、ビジネスマッチングなどを開催してきた。イベントをとおして、社内のメンバーがメンターや審査員などで参加して社外に関わる仕組みだ。参加したメンバーは何も言わずとも自主的に社外とかかわっていくようになったという。そのほかの企業でも同様の取り組みで、自主的に外へネットワークをつくりにいくような社員の意識が変わっていくケースが出ていた。角氏が「参加した人がどんどん変わっていった」とコメントもしていた。

フィラメントの角勝代表

 また担当者の熱意がおもしろい結果を生むケースもある。NTT西日本の張ロウ氏は、部署的に関わりのなかった担当者の取り組みに共感して、長文のメールを送信。部の枠を超えてオープンイノベーションの取り組みに関わっている。そんな人材を社内からあぶり出せたことも、取り組みの効果のひとつとなった。

NTT西日本の張ロウ氏

取り組みを成果につなげる

 イベントをベースにした取り組みはわかりやすく、”社外の人とやるおもしろさ”を感じることもできる。ただしそのような外に目を向ける意識の変化の一方で、オープンイノベーション自体が“イベント”と勘違いされてしまうリスクもある。NTT西日本も、初めはただのイベントだと勘違いされてしまっていたという。あくまでやりたいことは事業創造で、会社は結果しか求めない。

 具体的な名前はふせられたが、NTT西日本もすでに製品やサービスなどで成果につながっている他社との取り組みもあるという。社外の活動は成果、実績を上げることが、その意味を会社に伝えやすいという。

 村田製作所もオープンイノベーションによる実業での結果を求めて、国内中小企業を中心に技術を求めマッチングイベントなどを展開。その際には、お互いに自分たちの持っている技術を出しあってていかないと新しいものは生まれないという。話している中でも、黙っているとふわふわしたものになってしまうところを、技術について話すことでアイデアが生まれたケースもあった。成果を出すための試みであって、結果がともなわなければダメなのだ。

 企業間でお互いに紳士協定になってしまう部分もあるが、それをどこまで広げられるかは手探り中だという。ヤンマーも外部に技術を求めるマッチングにベンチャー投資と、社内に向けても風通しのいい組織づくりを考えている。

 各社まだ道半ば、これから推進していく部分も多いが、このような取り組みも結果や成果を伴わなければ、“オープンイノベーションブーム”だけで終わってしまうと、警鐘を鳴らしていた。

■関連サイト
フィラメント

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