だんだんとPONANZAのペースに
昼食休憩後、対局を再開しても山崎叡王はなかなか指さず、何度もため息をついている。すでに自分が予定していたのと違う展開でちょっと苦労しているのだろう。評価値はほぼ互角で推移しており、PONANZA相手にいい感じではある。検討陣によると、山崎叡王は初手から意外な手が多すぎる展開とのこと。居玉は山崎叡王らしいそうだが、PONANZA相手に囲わないのはちょっと怖い。
しかし、終局後の話しでは、山本氏いわく居玉のほうがコンピューターが間違えやすいとのこと。囲いに入ろうと玉を寄せると点数が高くなるので、その前にコンピューターは攻めたくなるという。ただ、山崎叡王はそのことは知らず、ただ囲うより5筋の伸びのほうが気になったようだ。
山崎叡王は持ち時間をどんどん消費していって、PONANZAより約1時間多く消費しているが、長考はほとんどしていないので、第1局よりはいいペースに見えた。持ち時間を1日目に消費してしまうと、2日目がかなり厳しくなるため、序盤はあまり消費しないのが望ましい。
一方でPONANZAは28手目の☖8六歩のあと、☗同歩としたところ、10分以上の長考をした。このため持ち時間の差が40分程度となったが、逆に36手目の☖5四歩に対して山崎叡王が長考してしまったため、また差が広がってしまった。その後、山崎叡王は☗2四歩と指す。解説陣によると、タイトル戦で☖5四歩はなかなか出ない手だそうで、評価値はPONANZAの+180前後とここに来てちょっと開いてしまう。
ちなみに控室は非常に広くてゆったりしているが、記者の人数は少ない。NHKが山崎叡王を追う取材をしているとのことで、そのうち放送されるでしょう。控室の建物は延暦寺会館と対局場とはちょっと離れた場所にある。このため、対局場へ向かうのに時間がかかる。
検討室が近くにないのも痛い。もっぱら検討陣のコメントはニコ生の中継を通じてのもの。「いい手が見つかった」で盛り上がったりする場の雰囲気もほとんどなく、現地での取材は以前よりつまらない。これは中継が入るためと、検討室が狭いというのが主な理由だろうが、検討室と控室を一緒もしくは近くにしてほしいところだ。
なお、千田五段は非常にコンピューター将棋ソフトに関して長けており、PONANZAの考え方もかなり研究をしている。山崎叡王に対策を伝授しているそうだが、解説を聞いているとなんだか評価値を基準にしているコンピューターの考えを代弁しているようで、聞いているだけでもおもしろい。こういう研究熱心な人が、コンピューター将棋に勝つ可能性が高いのかもしれない。
さて、対局のほうは40手を超えても、大駒が動かず飛車角はどちらも居座った状態。44手目のPONANZAの☖5六歩に対し山崎叡王は☗同銀としたが、検討陣の間では☗2二角成りの角交換からの攻めが、即終盤の展開になるものの山崎叡王が有利と見ていた。逆に☖8八角とPONANZAのほうから角交換。ようやく大駒が動き出した。この手で評価値はPONANZAの+250程度に伸びてしまう。
残り時間は山崎叡王が4時間27分、PONANZAが5時間50分と1時間半弱の差がついた。この時点で17時をまわり、そろそろ封じ手の時間。封じ手は山崎叡王が18時を過ぎた時点で次の一手を封じるルールになっており、タイミングが難しい。角交換のあと☖6三金、☗5五歩、☖3一玉と進んだが、18時をまわってもなかなか封じ手を告げない。結局ここで長考してしまい18時39分にようやく封じ手の意思を示した。
残りの持ち時間は山崎叡王が3時間13分、PONANZAが5時間20分となった。前回と同様、2日目の持ち時間が厳しくなってしまった山崎叡王。評価値はPONANZAの+300前後となり、若干離されてしまった感じで1日目は終了した。
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