第1期電王戦の第2局が比叡山延暦寺の大書院・旭光之間で行なわれ、コンピューター将棋「PONANZA」が118手までで勝利。これでプロ棋士との対戦成績は5連勝と、もはや人間に負ける気がしない。さらに終局後の第2期叡王戦が5月28日より開幕するにあたり、開催概要を発表。その席でなんと羽生善治名人がエントリーしていることを発表。トーナメントに勝ち抜き優勝すれば、第2期電王戦で対局……という、人類の夢が実現するかもしれない。そんな電王戦第2局の模様を現地の取材をもとに振り返ってみよう。
序盤は評価値が優勢だった山崎叡王
5月21日、22日の2日制で行なわれた電王戦第2局は、第1局の関山中尊寺から比叡山延暦寺に場所を移してとり行なわれた。また、第2局の棋譜が公開されている。滋賀県大津市の山中の東塔(とうどう)エリアは延暦寺発祥の地であり、標高はおよそ700メートル。本堂にあたる根本中堂を中心に、大講堂や阿弥陀堂など重要な堂宇が集まっている。今回対局が行なわれた大書院・旭光之間は根本中堂からほど近い場所に建つ建物で、電王戦恒例のステージを室内に設置。いつもは閉鎖された空間が多いが、今回は庭の見える広い部屋だった。
第2局は先手が入れ替わり、10時に山崎隆之叡王の先手で始まった。初手☗7六歩、これに対してPONANZAは第1局と同様15分ほど考えてから☖8四歩と応じた。今回検討室には山崎隆之叡王の師匠である森信雄七段門下が集結。千田翔太五段、大石直嗣六段、澤田真吾六段、糸谷哲郎八段が検討していた。また、第1局同様、第3回将棋電王トーナメントで上位に入賞した開発者たち、「nozomi」の大森悠平さん、「大樹の枝」の平岡拓也さん、「技巧」の出村洋介さん、「超やねうら王」の磯崎元洋さんもそれぞれのソフトで検討している。
初手の☗7六歩に対し、千田五段は事前に検討した手順でなく「対PONANZA対策はしたんだけど指さなかった」とのこと。山崎叡王の得意な戦法ではなく、違う展開になっているとのことで、先手が矢倉、後手が急戦矢倉になるのではと予想していた。結局はどちらもそうならず山崎叡王にいたっては居玉で金銀も離れた状態で進んでいった。
終局後の山本一成氏(PONANZAの開発者)との会話では、角交換し飛車先を突いて相掛かりにしたかったようで、通常の手順でなかったのは、対人間と同じで空中戦になるのを避けたかったようで、矢倉のような形にしてから相掛かりにしたかったらしい。千田五段からは、横歩取りになる手順を示されていたそうだが、やりにくかったのでやめたという。
序盤は13手目の☗5七銀はどうなのか、という検討陣の評価もあった。千田五段によると、PONANZAは序盤の持ち歩はあまり高く評価しない傾向があり、米長流急戦矢倉になると、勝率が下がるという。終局後の話しでは、飛車先を突くべきだったと後悔。5筋を攻めて幅が狭まってしまったという。
それでも序盤は、評価値が山崎叡王の+100前後を示していた。ちなみに今回の評価値はnozomiを使用している。前回よりゆっくりとした展開で、山崎叡王は一手一手慎重に読んで進めている感じだった。一方PONANZAは、10分以上考えたりノータイムで指したりと柔軟な戦いをしていた。
しかし、山崎叡王は長考こそしなかったのだが、昼食休憩までに持ち時間を1時間9分も消費している。対してPONANZAは39分。PONANZAの16手目☖7三桂に対して、9分考えて昼食休憩に入った。
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