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NEC PCはパソコン市場をどうとらえているか

なんでもできる箱だけなら、いずれパソコンは消えてしまう

2016年06月06日 13時00分更新

結局パソコンは難しいという話をわれわれは繰り返すだけなのか

── 車のカーナビは単純なナビではなくて、車の情報を知るものに変わっています。そのため汎用品ではなく、専用品をつけるというのが主流になってきていますが、高機能な専用品としてパソコンを使うという方向性もあるのかもしれませんね。例えば家の機能を利用するためにパソコンがあるんだといった形で。

そこでIoTの話になってくると思います。いろいろなものがつながり、状況が分かる。ただしその情報がわかるだけでも、コントロールできるだけでもない。そこで何をするかを考えないといけない。

── パソコンが汎用的になりすぎたということでしょうか?

メモに使うだけならキーボードとスマホだけでもいいわけですよね。シーン、シーンの提案が必要だということです。私たちとしてはディスプレーの有用性を感じているので、ここに集約していく。そしてクラウドともつながっていく。電話もバイタル・デバイスもここを経由してつながっていく世界を作れると思います。しかし、ユーザーの発想を刺激するには、「こういうことができる」という提案をひとつひとつ続けていくしかないのです。

── 媒体としても楽しみ方を提案していかないといけないですよね。

多くの人にとって、クラウドって何。ハイレゾの音楽は何、ファイルをHDDじゃなくてNASに入れる? など分からないことだらけでしょう。

安心・簡単・快適といっている以上、これをやれば安全だし、楽しいですよと言っていかなければならないわけです。LAVIEチャンネルを作ったのもその理由のひとつですね。子供たちに不適切な動画を見せたくないという相談はよく受けます。先日も「どうやったらタブレットを取り上げることができますか」という質問を受けました。しかし、取り上げるのではなく安心で快適な環境を与えるにはどうするかを考えたほうがいい。LAVIEチャンネルの裏では人海戦術で安心な動画を選んでいるのですが、これを見ている分には大丈夫です。

リテラシーを高める作業は必要ですが、フィルタリングをかけるといっても、パソコンの使い方がわかる人のものになっている側面がありますから。何でもできるというメッセージは乱暴すぎるのかなと。

あれを復活させたら面白いよねという社内の声を大切にする

── 今後NEC PCの製品ラインナップはどう進化していきますか?

まずは正当な進化を遂げていくように整備していきます。ソフトはより使っていただけるようインフォボードを進化させていく。IoTとつながる世界も必要です。ハードはより軽さを追求し、最上位の850に至るまで、選択肢を整備していく。特に850では4Kのディスプレーをはじめとして妥協をしないこと。コストとのせめぎあいもありますが、フラッグシップであれば何もそぎ落とさない、妥協しないがあってもいい。だからすべてを一度見直しませんか、という話を中で進めています。

── インフォボードは大事なソフトだったんですね。パソコンの時代は終わったという話もありますが。

それはないでしょう。コンピューティングパワーはもっと要求されてしかるべきものだし、クラウドという世界に移行したとしても、手元に集約する世界もあるはずです。ますます必要になっていくのが正しいと思います。

── パソコン=Windowsではない?

はい。Androidもプラットフォームとしてあり得るし、何をやりたいかによって選択していくべきでしょう。

── 逆に言えば、いまとは違うパソコンというものもあり得る。

考えられます。いろいろ考えていますが、それはお楽しみに。例えば「あれを復活させたら面白いよね」とか。特化したパソコンがあってもいいと思います。昔のように最大公約数をとれば、多くの人にバンと売れる時代ではないし、パソコンの利用方法を見てもOffice、動画、ブラウジングを除けば、どれもロングテールなんです。何かをしましょうという提案がないと切り口は増えないんです。だから業種別のパソコンがあってもいいかもしれません。

── 音楽専用パソコン……とか?

そうですね。ハイレゾ専用パソコンがあって、電源部分がセパレートになってノイズが入りませんという提案があってもいいわけです。ほかにも写真を撮る人に向けた製品など。写真を保管するストレージはたくさん売られていますが、並べて使うと統一感がないそのデザインを考えたら面白いのではないかなど。デザインや組み合わせを含めて、一度見直しましょうというのが今の活動です。

── 理想的なパソコンを再定義するわけですね。一方でずっと変えずに保守的なパソコンの姿を続けているメーカーもあります。レッツノートだったり、ThinkPadだったり。実はアップルもMacBookに関しては非常に保守的な印象があります。逆に、NEC PCは新しい提案もたくさんしていて、デザインもどんどんブラッシュアップしていますが、逆にそれが伝わりにくさにつながっているのでは? LAVIEならこのデザインだというイメージづくりが必要ではないでしょうか。

それは考えています。例えばLAVIE Hybrid ZEROはそうする意味がある製品です。ZEROといったらこれを思い出す。

── 色も消費者にとっては、重要な要素になると思います。

色とかも奇抜なものを出す必要があると思いますし、乞ご期待です。

何が正しいかは分かりませんが、自動車でいえばMAZDAのように統一感のあるものもありますよね。ベンツも不思議なもので、個々に見ればだいぶ違うデザインでも、統一感がある。

── 機能の追加でパソコンを買う時代ではなくモデルチェンジのサイクルもゆっくりとして来ているから、このブランドにする意義を示していく必要があります。

今までは年に2~3回のサイクルでモデルチェンジを繰り返してきましたが、そういう時代ではなくなっていくでしょう。

── そういう意味ではLAVIEのアイデンティティはここだというのがほしい気がします。いい製品だから印象に残る売り方をお願いします! 店頭にたくさん並んでいる中で、これがLAVIEだ、LAVIEらしさはこれだという。

言い方は悪いですが、ロゴを変えたらどこのメーカーかわからなくなる。そういう製品ばかりではだめです。そうではない製品を作らないとだめです。パソコン業界はこうしていかないとダメだという動きを、1社だけでなく他社とも連携しながら進められるといいですよね。

── 最後に2016年のNEC PCについて一言お願いします。

業界を元気にしたい。そのお手伝いをしたいですし、自分たちもその先頭を走りたいです。とにかくパソコンを楽しみたいですよね。作るほうも使うほうも。現在、楽しんでパソコンを作っていますか?と聞かれると、どこのメーカーさんも違うような気がします。

── 苦しんでいますか?

いや(笑)。市場規模の関係で無理がしにくくなっているのは事実です。モノづくりなので人も投資も必要ですから。では何をするかといえば、市場の分母を上げるしかない。そのために何をするかは、ほかの国内メーカーを交えて考えていくべき課題だと思います。

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