週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

ソシャゲ課金マンガプロジェクトの裏側を探る(前編)

「エロゲの太陽」作者がクラウドファンディングでマンガを描く理由

 “美少女ゲーム業界”の裏側を描いたマンガ「エロゲの太陽」(週刊ビッグコミックスピリッツ)の作者、はまむらとしきり氏と村正みかど氏が、クラウドファンディングサイト「FUNDIY(ファンディー)」で新作漫画の募集をしている。新作のタイトルは「スマホゲームの大地」。スマートフォンゲーム(いわゆる“ソシャゲ”)業界の裏側を描くマンガだ。

FUNDIY(ファンディー)で資金調達中の「スマホゲームの大地」

 彼らが募集をスタートしたのは2016年3月16日の正午。ちょうどこの時期、世間ではソシャゲのニュースが話題だったこともあり、新作ソシャゲマンガプロジェクトの情報はいくつかのニュースサイトやブログにも取り上げられ、瞬く間に話題になった。その効果もあり、なんと12時間43分という短時間で目標金額の70万円を達成した。その後も支援者の数は増え続け、第二目標の130万円、第三目標の200万円も達成している。

 募集を行なった「はまむらとしきり氏」と「村正みかど氏」はどんな人物なのだろうか。彼らは「武礼堂」というコンビ名でも活動しており、約20年前からいくつものマンガやイラストの執筆、ゲーム開発を行なってきた。現在ではウォーゲーミングジャパンのオンラインタンクバトル「World of Tanks」とオンライン海戦ストラテジー「World of Warships」のイメージキャラクターも手がけている。

脚本担当のはまむらとしきり氏と作画担当の村正みかど氏

小学館ビッグコミックスピリッツ連載の「エロゲの太陽」は単行本化された

「World of Warships」公式サイトにて連載中の「ぷかぷか艦隊」 (C) Wargaming.net

 漫画家がなぜクラウドファンディングでサポーターの募集を開始したのか、その理由と漫画家という特殊な職業にも迫っていく。

出版社に持ち込むアテがあるのに
クラウドファンディングを始めた理由は

 はまむら氏と村正氏は20年もマンガ業界で仕事をしており、小学館だけでなくKADOKAWAなど、いくつもの出版社にマンガの持ち込みができる。そんな彼らが、なぜ新作マンガをクラウドファンディングでスタートさせたのだろうか。

――クラウドファンディングでマンガを描く決心をした理由は?

 はまむらとしきり(以下、はまむら):小学館で「エロゲの太陽」の連載をしていたとき、ゲーム関連ということでソーシャルゲームについてもたくさん取材していたんです。ソシャゲっておもしろいんですよ。みなさんご存じかと思いますが、今までのゲーム業界にはなかった「課金」や「ガチャ」とか、ネタの宝庫なんです。

――いい意味でも、悪い意味でも話題ですね

 はまむら:そう! 特に“悪い意味で”おもしろい。裏側の黒いトコロを知ってしまうと、僕らの性分でマンガに描きたくなっちゃったんです。でも、そんなマンガは雑誌には持ち込みにくいんです。

――なんとなく予想はつきますが、あえて聞きます。なぜ?

 はまむら:雑誌は売上と広告で成り立っているモノが多いです。当然、今の雑誌にはソシャゲの広告がたくさん掲載されています。そんな雑誌で、ソシャゲの黒い世界のマンガを掲載できるワケがないですよね。

――なるほど

エロゲの太陽 4巻」のこのシーンは、一時期あちこちのウェブサイトに転載された。このころから、はまむら氏は「マンガネタとしてのソシャゲ」に興味を持ちはじめた

 はまむら:おそらく持ち込んだとしても、企画段階でボツになるでしょうね。僕らは売れっ子じゃないから(笑)。きっと世界観の説明をしている最中に、担当編集者に逃げられちゃう。どんなにおもしろいと思っていても、話の展開を聞いてもらえないワケです。

――厳しい世界ですね

 はまむら:でも、僕らはアイデアが思いついちゃったら、もう描くしかない。だったら「きっちり描いてからダメ元で持ち込もう」と思ったんです。そうしたら、どこかの優しい編集者さんが「ここまで描かれちゃったら仕方ない……話だけでも聞いてやるか」って言ってくれるかなぁって。これが僕らのような中堅漫画家の生き残り術です。

はまむら氏はアイデアが浮かぶと、すぐにスマホや愛機「ポメラ」にメモを残すという

――実力行使ですか

 はまむら:それともうひとつ理由があります。「エロゲの太陽」の連載が終わってから、ファンの方から「もうゲーム業界の漫画は描かないの? もっと読ませて」というメッセージをたくさんいただいたんです。期待されちゃったら描くしかない!

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事