Document CloudはOneDriveやBoxと連携
デジタル署名を導入すれば印紙代は不要!Adobe SignがMarketing Cloudと連携
アドビ システムズは4月26日、同社のクラウドプラットフォームの一角を担う「Adobe Document Cloud」の新サービスの発表会を開催した。Document Cloudとは、PDFを核とした電子書類/デジタル署名の統合ソリューション。今回、Document Cloudとクラウドストレージの「Box」「OneDrive」との連携を発表。具体的には、Box上やOneDrive上にあるPDFファイルを「Adobe Acrobat DC」や「Acrobat Reader」といったアプリから直接開いて、編集や保存が可能になる。Box上にあるPDFに、後述する「Adobe Sign」を利用して電子署名することも可能だ。
Boxとの連携機能は、デスクトップ(Mac/Windows)版のAdobe Acrobat DCとAcrobat Readerに2016年5月末に実装される予定。またiOS(iPhone/iPad)版の「Acrobat Readerモバイル」で保存先にBoxが選べるようになるのは、6月末になる見込み。さらに、BoxのウェブサイトからAcrobat DCやAdobe Signへアクセスも可能になる。こちらは5月末に機能が提供されるほか、2016年秋までに機能が順次強化されるとのこと。
OneDriveについては、アプリから直接OneDriveにアクセスできる機能が備わるのは、デスクトップ版/iOS版とも2016年6月末になる予定。
Document Cloudはモバイルアプリを含む4つで構成
発表会ではまず、アドビ システムズ(株) 副社長 マーケティング本部 木ノ本尚道氏が登壇し、アドビの3つのクラウドプラットフォームを紹介。Document Cloudのほか、Creative Cloud、Marketing Cloudを連携させることで、さまざまなソリューションを提供できると語った。
今回の発表の中心となるDocument Cloudは、Acrobat DC(PDF作成や編集)、オンラインサービス、Adobe Sign(電子署名/デジタル署名)、Acrobat DCモバイル版(iOS用アプリ)の4つで構成されるとのこと。
企業では依然紙ベースの文書のやり取りが主流
続いて登壇した、米アドビ システムズ社 バイスプレジデントDocument Cloud製品マーケティング担当 マーク・グリリ氏は、電子署名/デジタル署名の有用性を解説。文書のやり取りを紙ベースのアナログからPDFベースのデジタルに変えることで、機会損失や顧客体験に与える悪影響を回避できると力説。
とはいえ現在でも企業内では紙に依存する書類のやり取りが約80%を占めるとのこと。
前述のDocument Cloudを構成する4つのアプリやサービスや関連するAPIを利用することで、現行の紙ベースのフローを大幅に変更できる。
提供開始から1年を経過したDocument Cloudのソリューションを導入している企業はすでに多数あり、国内ではリコーやNECが採用しているそうだ。
グリリ氏は、Adobe Signの新機能についても触れ、Adobe Marketing CloudやSalesforce、Workdayなどと連携できることを発表した。2016年5月に提供されるAdobe Signのモバイルアプリにより、文書の送信や署名、トラッキングがより容易になるとのこと。また、現在は欧州にあるデータセンターの稼働が始まっているが、日本国内とアジア太平洋地域にも2016年末までにデータセンターを設立することも発表された。
Adobe Signを活用した人事管理システム
続いて、アドビ システムズ(株) 執行役員 Document Cloud製品マーケティング 大矢博文氏が登壇し、Adobe Signを活用した人事管理システム「Workday」をWorkdayの担当者とともに解説。Workdayは、社員の募集から面接、内定、契約までのスケジュール管理や文書のやり取りをすべてクラウド上で処理できるのが特徴のサービス。
企業側がWorkdayのサイトにアクセスすれば、現在の社員の募集状況を一覧できる。書類審査(レビュー)中なのか、面接が終了したのか、内定を出したのかなども視覚的に把握できる。
クライアント(応募者)側では、現在の自分の活動状況をクラウド上で確認できる。
企業側をステータスを変更すれば、応募者側にもその内容がすぐに反映される(面接審査中→内定条件提示中)。
内定がおりると、給与などの条件が提示されたPDF文書が企業から応募者に送付されるので、こちらに署名すれば一連のやり取りは完了となる。
Adobe Signは、この契約書の電子署名の部分に使われており、手書きやスタイライスでの署名はもちろん、キーボードからのタイピングで署名することも可能だ。
電子文書・署名の導入コストや時間を大幅削減
アドビ システムズ(株) 法務政府渉外本部 本部長 弁護士 浅井孝夫氏は、電子署名とデジタル署名の概念などについて解説。一般的な電子署名は本人性の確認と非改ざん性の確保だけだが、デジタル署名では認証局発行の電子証明書や暗号化された電子署名が加わるとのこと。
デジタル署名を企業の各種承認システムに取り入れることで、書類作成や契約締結などの期間短縮ができるのはもちろん、印紙税も約80%節約できることを紹介した。
印紙税とは紙にかかる税のことで、契約書に収入印紙を貼り付けることで税金を納付するかたちとなるが、電子文書はこの税法の適用範囲外。国税庁も電子文書に印紙税が不要な点を公式に認めており、契約関連業務に電子文書/デジタル署名を導入するだけでコストが下がるわけだ。なお浅井氏によると、一部の契約書類は紙ベース以外が認められていないため、すべての印紙税を節約することはできないとのこと。
Document CloudとAdobe Signによるデジタル署名は、契約当事者双方にPDF文書と暗号化された電子署名が残るほか、そのやり取りがサーバーに記録されるので、改ざん・悪用される可能性が非常に低い。アドビでは社内文書はもちろん、取引先との契約などについても電子文書/デジタル署名を進めているとのことだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります