Cerevo岩佐×VAIO中田 IoT/ハードウェアの”生産”を語る
シャープ買収の衝撃 日本が出遅れた「作り手市場」の逆転
日本は遅すぎる、技術にあぐらをかきすぎる、態度がデカイ
── 意地悪な質問かもしれないですが「日本のEMSが海外のEMSと戦う方法は?」を聞きたいんですよね。日本はすごく特殊な技術を持っているし。
岩佐 日本は、遅すぎる、技術にあぐらをかきすぎる、態度がデカイ。これだけだと思ってて。
まずベンチャーの仕事を受けはじめたのが遅すぎますよね。今の海外EMSトレンドは、ベンチャーを支援するしくみをつくり、ベンチャーのためだけにもう1つ工場をおこし、ベンチャー支援のためだけに人材を育成し、ファンドをつくる、投資する、というところからすべてやっている。それで囲い込むんです。
極論、MoffさんにVAIOさんから出資していなければ「次のモデルからフォックスコン(鴻海)でやるからね!バイバイ!」となったらそれで終わりになってしまう。あらかじめ投資を入れていれば「どうぞどうぞ、どこでも行ってください」ということになる。「それで大成長して上場してくれたら、うちはキャピタルゲインでしっかり儲かりますよ。でもね」という交渉ができるじゃないですか。
フレクストロニクス(Flextronics)という、シンガポールにある世界トップ5に入るくらいのEMSが、ベンチャー支援のためだけに、シリコンバレー郊外にわざわざ工場をつくって、試作ラインをつくっている。なぜそんなものをつくるのというと「あいつらを助けるために作ってるんだ」というわけですよ。もちろん慈善事業じゃない、しっかり金を張りまっせと。専門のラボナイン(Flex Lab IX)というベンチャー投資組織まで作ってるんです。もうだいぶ先いってるなと。
技術があれば勝てる、そういう日本人的な思考が個人的にはものすごく嫌いで。もっとハングリーになって、下手(したて)に出て、でもその代わり、したたかに株は持っていく。そういうことを、もっとやっちゃっていいんじゃないかなと。そうして中国・台湾と同じレベルまで持っていった上で「うちは技術がありまっせ、スピードが速いでっせ」と言えば「だったら!」となるんですけど。
うちは最近フォックスコン(鴻海)さんとご一緒していて「Hackey」(IoTガジェット)とかもフォックスコン(鴻海)さんと作ってるんです。フォックスコンさんにはFITとFIHっていう部門があるんですね。FITはスタートアップ支援をやっている部門、FIHはいわゆるモバイルをやってるところなんですけど。別々の部門から案件をとりにきてくれる。こういう感じ、日本人は苦手じゃないですか。グイグイ来る、リスクも取る。ものすごいトップダウンで、企業トップ何十人(幹部)みたいな人が来る。あのハングリー感があれば戦っていけるんじゃないかなと思うんです。
中田 我々もEMSに関してはスタートアップといえばスタートアップなんですけど、もともとPCをやろうということで会社ができたんですね。その中でPCだけでなくEMS事業に活路を求めてニュービジネス事業部(NB事業部)を立ち上げたというのは、ある意味チャレンジだと思っています。
岩佐 ぜひ投資してほしいなと思いますよ。うちにじゃなくて頑張っていこうとしているスタートアップに。投資といってもキャッシュつっこむだけの話じゃなく、たとえば試作をタダでやるとかね。あるいはEMSの試験をタダでやる。EMC、ESDの試験を全部タダでやってやると(それぞれ電子部品試験の名称)。代わりに、たとえばストックオプションくれよとか。そうすると人件費だけだから持ち出しないじゃないですか。そんなのがおもしろいんじゃないかと思うんですけどね。
── 今度は逆に中田さんからの質問で「スタートアップは海外EMSに満足していますか」と。これはまず中田さんに、質問の意図を聞きたいんですが。
中田 VAIOはずっとPCをやってきました。当然国内だけでなく海外、中国のODMさんで作ってきた経験があります。わたし自身も最初デスクトップPCを作ったときは、台湾のEMSさんと十数年やってきたんですが、正直苦労しました。
たとえば品質面やデリバリーです。そういうところで、海外EMSさんのコントロールに労力をかけてきた経緯があります。実際いまでも海外EMSさんをコントロールする部署があったりするくらいで。われわれは日本の工場を持っていて、そこで提供できるサービスは、われわれがこれまで苦労してきたことを、苦労しない形で使ってもらえるように提供していきたいなと思っているんですよね。
いまCerevoさんのように海外のEMSさんを使ってモノづくりをされている方に、どんなサービスを提供したらいいかと。
岩佐 実はうち、国内EMSはけっこう使っているんですよ。ただし、日本企業だけど工場はフィリピンとかドングァン(中国・東莞市。深セン市の隣に位置する)にあるようなところを。
逆に言うと、日本企業の国内工場では「コストが合わない」と言われることがある。海外工場があるところも国内工場を持っていて、話を聞きに行くことがあるんですけど。別にぼくらが海外生産にこだわってるわけじゃなく、コストと日数を伝えると「うちの国内じゃ無理だよ」と言われるんです。それで「うちのドングァン工場だったら、ベトナム工場だったらなんとか」と言われる。
シンプルに言うと使い分けてます。中国はけっこう満足してます。フォックスコンさんを含めて中国系・台湾系・シンガポール系・香港系には満足してますね。
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