米国など海外を中心に展開しているアップルのモバイル決済サービス「Apple Pay」が、いよいよ日本にも上陸するのではないか、との観測が高まっています。
これまで、ハワイまで行って銀行口座とデビットカードを作り、ロンドンなど海外でApple Payを利用している筆者としても、この流れには期待しています。
NECの新しい自販機向け決済端末が面白い
3月に入ると、またひとつApple Payの上陸を予感させる発表がありました。NECによる自動販売機向けの決済ソリューションの新製品で、3月8日から東京ビッグサイトで開催中の「リテールテックJAPAN 2016」にも展示されています。
日本は治安がよく自販機も十分に高性能なので、あまり自販機でクレジットカードを使いたいという発想はなさそうですが、海外では防犯上の理由などから紙幣を受け付けないものも多く、普及が進んでいるようです。NECも「訪日外国人向け」と打ち出しており、空港や駅など、外国人がよく訪れる場所から普及していくことになるでしょう。
このNECの決済端末は「Apple Pay対応」をうたっているわけではないものの、着実に外堀が埋まってきた印象はあります。MasterCardの「PayPass」やVISAの「payWave」といった非接触決済が利用できれば、Apple Payもおそらく使えるだろうと考えられます。
先に挙げたスペインやデンマークも、Apple Payに正式対応した国ではないものの、実際には利用できています。日本国内だと、PayPassを導入している舞浜のイクスピアリ(スターバックスコーヒーと成城石井)や、決済マニアの間で有名(?)な沼津港において、筆者はApple Payを利用できています。
Apple Pay開始後に起きること
とはいえ、Apple Payが広く一般に普及するためには、日本での正式対応は必須といえます。なぜなら、現時点では日本国内のクレジットカードやデビットカードがApple Payに対応しておらず、iPhoneに登録することができないからです。
これができなければ、米国のカードなどを持っていない多くの日本人にとって、Apple Payは無用の長物になりかねません。
また、使える場所が増えることも重要です。自販機のような少額決済ならば、現金や電子マネーでも代用できます。しかしレストランや小売店舗での数千円、数万円といった高額決済を考えると、Apple Payが便利な場面が出てきます。
従来のクレジットカードでは、店員によるスキミングや、盗難や紛失時の不正利用といった不安がありました。しかしApple Payはカード番号ではなくトークン化された情報がセキュアな形式でiPhoneに保存されており、実際の利用時にはTouch IDによる指紋認証が求められるなど、安全性を高める工夫がいくつも入っています。
Apple Payの普及により、従来のクレジットカードやデビットカードをこれまでになく安全に持ち歩けるようになることが期待できるわけです。
電車の改札問題は、おそらく考える必要がない
逆に、ネット上でよく指摘される「電車の自動改札に導入するには遅すぎる」という点はどうでしょうか。たとえばロンドンでは、Apple Payで改札を通るのに最速でも2秒程度、指紋認証からやれば3~5秒程度はかかりました。
この遅さは、ロンドンですら不安になるほどです。ロンドン・ビクトリア駅やオックスフォード・サーカス駅など主要駅のラッシュはかなりの混雑であり、全員がApple Payを使えば大混乱になるはずです。しかし2015年末の時点では、しばらく改札を見ていても誰もApple Payを使う様子がなく、まだほとんど影響は出ていません。
少なくとも、日本の大都市におけるラッシュに耐えられないのは明らかです。新しいiPhoneがFeliCaに対応するなどのウルトラCがない限り、Apple PayがSuicaやPASMOの自動改札を置き換える可能性はないと考えてよいでしょう。
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