アドビ システムズは3月3日、同社がワールドワイドで提供しているストックフォトサービスについての説明会を開催した。最初に、弁理士の栗原潔氏から著作物の取り扱いについての解説があった。米国ではフェアユースという概念によって、法律的にはグレーゾーンの事例でも内容によっては使用が認められることがあるが、日本では厳格に法律が適用されることを紹介。
例えば、社内限定で配布する資料にウェブサイトから拝借してきた写真を著作権者の許諾なく使うことは、法律的にはアウトとのこと。著作権上の特例として認められている個人での複製の範囲を超えているためだ。実際には、社内のちょっとした資料作成のためにわざわざ許諾を得るというのは現実的ではないが、訴訟などのアクションを起こされた場合、故意や過失の有無とは無関係に法律違反となる。
もちろん、個人といえどもブログなどの公共に発信できる場で、著作権者の許諾を得ずに写真を転載するのは法律違反となるので注意したい。特例として認められるのは、報道を目的として掲載する場合だ。
このような状況を受け、これまでは出版や広告などの業界での利用が中心だったストックフォトサービスが、一般企業にとっても重要なサービスになりつつあるようだ。
実はアドビには、買収によって手に入れた「Fotolia」、Adobe CCシリーズに含まれる「Adobe Stock」いう2つのストックフォトサービスがある。いずれも、写真だけでなく動画、イラスト、ベクトルデータなどの使用権を購入できる。Fotoliaは、6種類のサイズ別に単価が変わるなど、細分化された料金体系が特徴。
Adobe Stockは、よりシンプルな料金体系でPhotoshopなどのクリエイティブソフトと連携できる。これら2つは料金体系なども異なるため、現状では別サービスとなっているが、利用できる写真や動画の内容については共通化が進められているとのこと。
アドビのフォトリアカスタマーケアコンサルタントの青野薫子氏によると「素材提供は現在、Fotoliaのみで受け付けていますが、同じ素材がAdobe Stockにも追加される」とのこと。なお、説明会では収録点数は4500万点以上という発表があったが、当日のウェブサイトでは5200万点以上という数字に変わっているなど、両サービスで扱う素材の点数は日々増えているようだ。
今回の目玉は、Adobe Stock側に加わった「拡張ライセンス」と4K動画コンテンツ。同サービスではこれまで、ロイヤリティーフリーで、使用する期間や地域の制限のない「通常ライセンス」で、写真や動画などの使用権を提供してきた。しかしあくまでも使用権に対して対価を支払う仕組みなので制限もあった。
このたび加わった「拡張ライセンス」によって、コンテンツの50万回(件)以上の印刷やウェブページへのアクセス、50万本以上を出荷する商品のデザインなどに使えるようになる。著作権は写真や動画の制作者にあり、ユーザーが得られるのはあくまでも使用権だが、「拡張ライセンス」によってほとんどの業務で利用可能になる。もちろん、色調の変更やトリミング、回転なども可能だ。
「拡張ライセンス」での制限といえば、著作権を放棄しなければならない場合の使用や、人物写真の不快な修正、使用権の又貸しなど。具体的には、著作権を主催団体が有することになるコンペや作品募集などには使えない。また、整形外科の手術サンプルなどに加工して使うのもNGとされている。使用権の又貸しについては、年賀状素材集など写真素材に文字を組み合わせるなどして改変したものを製品として販売する場合はOKだが、写真そのものを他社に貸し出したり、販売したりするのはNGとなる。
単品購入の場合の価格は、通常ライセンスが1180円、拡張ライセンスが7980円。ただし通常ライセンスの場合、月10点のコンテンツの使用権を含む、年間プランの月額3480円、月々プラン(都度契約でいつでも止められる)が月額5980円。月750点のコンテンツの使用権を含む、年間プランの月額2万4980円、月々プランが月額2万9980円。月10点のコースのみ使用権の繰り越しが可能で、年間トータルで120点の写真や動画の使用権を得られる。さらに、年間プランで契約した場合は契約初月の利用料は無料となる。
もう1つの目玉である4K動画は、犬や猫、ビジネスパーソンなどのシーンに適した5〜30秒程度の映像が多数を占める。もちろん同じ内容のHD動画も提供されており、使い分けが可能だ。通常ライセンスの価格は、HD動画(1920×1080ピクセル)が7980円(税別)、4K動画(3840×2160ピクセル)が2万4980円(税別)となっている。多くの動画は、再生時間にかかわらず一定の価格設定のようだ。
FotoliaにはないAdobe Stockの特徴は、前述したAdobe CCやアドビのモバイルアプリ群とのシームレスな連携だ。具体的には、PhotoshopやIllustratorの作業ウィンドウ上でAdobe Stockを呼び出せ、Adobe Stockで選んだ写真が、自動的にPhotoshopやIllustratorの画像エリアに埋め込まれるという仕組みだ。使用権を購入していない写真には、Adobe Stockのウォーターマークが入っているが、レイアウトが確定して実際に使う写真が決まったら、PhotoshopやIllustratorで写真の購入処理を済ませられる。もちろん購入後は、ウォーターマークが自動的に消える。
アドビでは、Adobe Stockに関する情報を、新設されたFacebookで発信していくとしている。
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