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盛り返しを計るJolla、セキュリティー重視時代にオープンなモバイルOSは必要だ

2016年02月25日 17時00分更新

 フィンランドのJollaは2月24日、スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2016」でプレス発表会を開催。アフリカのmi-FoneとのOEM契約、それにモジュラースマートフォンプロジェクトFairphoneとの協業を発表した。OEM契約を発表済みのインドIntex Technologiesについては、Jollaの「Sailfish OS」を搭載したスマートフォン「Aqua Fish」が今春にインドで登場することも発表した。

インドのIntex TechnologiesからリリースされるSailfish OS搭載スマホ「Aqua Fish」

NokiaのMeeGoチームが独立してスタートしたJolla
経営危機からの盛り返しを目指す

 JollaはNokiaのMeeGo開発チームがスピンオフして立ち上げたベンチャーだ。創業から5年、当初からOSの開発とライセンスを事業モデルとすることを図ってきたが、ライセンス事業の立ち上がりに時間がかかった。2013年には自社が作成したSailfish OS搭載のスマートフォン「Jolla」を発売、2015年のMWCでは「Jolla Tablet」を発表した。

 Jolla TabletはIndiegogoで出資者を募るというクラウドファウンディングモデルをとったが、部品調達などが予定通りに進まず、出荷が遅れた。Jollaは最終的に一部の出資者に出荷後、現在払い戻しを行なっている。平行して資金調達が遅れ、2015年末には経営が危ぶまれる事態となった。

 2015年はMWCでブースを構えたが、今年はなし。コストを最小限に絞っていることがうかがえるが、24日の発表会で共同創業者で会長兼取締役のAntti Saarino氏は、笑顔でIntexの「AQUA Fish」の発売を告知するとともに、アフリカのMi-Fone、そしてオランダベースのモジュール式スマートフォンプロジェクト「Fairphone」との提携を発表した。

Intexの幹部(左、右)とJollaのAntti Saarino氏(中央)

 Aqua Fishは、5型HD液晶、8メガカメラ、1.3GHz動作のクアッドコアプロセッサ、16GBストレージと2GBメモリーを持つ。Sailfish OSのカスタマイズ性を生かして音楽サービス「Gaana」、ECの「Snapdeal」など地元インドのモバイルサービスを事前に搭載する。この点はIntexにとって大きなポイントとなるようだ。4〜5月にインドで発売予定。同社はインド国外でも展開するが、AQUA Fishについても可能性はあるようだ。

 新たに発表されたmi-Foneは“FIRST AFRICAN Mobile Devices brand”とアピールするアフリカのスマートフォンメーカー。Jollaとの提携の下、第2四半期にもSailfish OSベースのスマートフォンを発売するという。

モジュラースマホ「Fairphone」

 Fairphoneはモジュラー式のスマートフォンで、フェアトレード、サステナビリティを重視したスマートフォンを提供する。モジュラースマートフォンはGoogleの「Project Ara」などもあるが、2年前に発売した初代のFairphone(Androidベース)は「市場で発売された初のモジュラースマートフォン」とFairphoneのCTO、Olivier Hebert氏は語った。

 2015年末に出荷を開始した第2世代の「Fairphone 2」では、まもなくAndroidかSailfish OSかを選択できるようになる。背景についてHebert氏は、「コミュニティーからのJollaのニーズがあった」と明かした。

FairphoneのCTO、Olivier Hebert氏

Firefox OSは脱落、Jollaも厳しい状況
それでもモバイルOSには可能性がある

 前回のMWCからこの1年、苦戦を強いられたのはJollaだけではない。「Firefox OS」で同じく新しい選択肢を目指したMozillaはスマートフォンからIoTに切り替えることを発表している。

 それでもSaarino氏はJollaの存在意義はあると強調する。「Androidはクローズドになってきた。新しいビジネスモデルを構築しにくい。一方Jollaは柔軟性があり、合理的なソリューションを見出すことができる。モバイルOS上でのイノベーションが可能になる」とする。技術的にはIntelとARMの両CPUに対応し、Androidアプリケーションも動かすことができるので、魅力的な選択肢になるいう。

 Saarino氏はモバイル業界のトレンドが変わりつつある点にもふれた。現在のスマートフォンはインターネットブラウジングとソーシャルメディアの利用が中心の「広告モデル」だが、EC/IoT/金融といった3番目の波が迫っているというのだ。新しい時代ではプライバシーにも関心が集まっており、Sailfishは政府、金融などにメリットがあるとした。オペレーターとデバイスメーカーについては、「どこも利益が圧迫されている状況。Sailfish OSはAndroidのクローズドなモデルに対してオープンさを提供できる」と述べた。

 今後は、地理的にはインド、ロシアなどのBRICs諸国とアフリカ地域を、そしてセキュリティーデバイスなどをターゲットにライセンス事業を育てていく戦略だ。「Jollaは今後も存在するし、Sailfish OSも存在する」(Saarino氏)。

 このように、フォーカスはライセンス事業にあるようだが、スマートフォンのJollaで最新機種を開発する計画はあるのだろうか? 会期中、共同創業者のSami Pienimaki氏に話を聞いたところ、「初代機種の登場から2年が経過した。まだユーザーは使い続けているが、2機種目が必要と感じている」と述べる。だが、「デバイスビジネスは簡単ではない」とPienimaki氏、リソースに限りがある中で実現可能なモデルを探しているところだという。

Jollaの共同創業者のSami Pienimaki氏


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