HP初のWindows 10 Mobileとして、発表前のリーク情報から大きく盛り上がった「HP Elite x3」。スペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2016には、HPもブースを出展し、実機を展示しています。
HP Elite x3の面白いところは、ハイエンドスペックもさることながら、徹底的に「Continuum」にフォーカスしている点にあります。たとえば、外部ディスプレイやキーボードを使えるとはいっても、それが使える環境は限られています。それならば「ノートドック」を持ち歩き、どこでもContinuumができるようにすればいい、という考え方です。
またContinuumでは外部ディスプレイを使えるとはいえ、実際に動くアプリはWindows 10から登場した新しい「UWP」アプリに限られます。当面はアプリが不足すると思われるものの、HPはこれをクラウドで解決。クラウド上で動作するWindows環境にリモートデスクトップ接続するようなソリューションを提供しており、必要に応じてフル機能のWindowsやOfficeを使える環境を提供しています。
HP Elite x3は「IS12Tの後継機種ではない」
その一方で、「国内ではKDDIが販売する」という点にも注目が集まります。KDDIは2011年にWindows Phone 7.5端末「IS12T」を発売しており、HP Elite x3はそれに続くWindowsスマホの新機種として期待されるからです。
ただし、KDDIはHP Elite x3を「IS12Tの後継機種ではない」と強調しています。たとえばIS12Tはauのロゴが付き、IS12Tという型番が与えられ、全国のauショップなどで売られるauスマートフォンでした。
これに対してHP Elite x3は、ターゲットを法人向けに絞り込み、グローバル向けの端末と同じものを日本国内に展開するという違いがあります。KDDIが販売するモデルも、SIMフリーになる予定としています。
しかし通信機能については、KDDI向けにしっかりと最適化されています。国内向けWindows 10 Mobileとしては初となる、VoLTEに対応。LTE通信はKDDIのキャリアアグリゲーションに対応し、国内の接続試験も実施しているとのこと。HPはアジア地域の通信事業者としてKDDIをパートナーに選んでおり、KDDIのネットワークで使うことで最大のメリットを得られる仕様になっています。
HPからの発表にあたっても、auの顔ともいえる田中孝司社長ではなく、法人向け事業を担当する執行役員常務 ソリューション事業本部長の東海林崇氏がコメントしています。KDDIの説明によれば、これも意図的なものであるという印象です。
販売チャネルについても、auショップなどでの一般向け販売の予定はないとしています。これまでの多くの法人向け製品と同じく、個人が入手することも不可能ではないと考えられるものの、あくまでKDDIは法人向けと位置付けており、その理由として「法人にとってご利用しやすい端末だと考えている。現時点では個人のお客様に楽しんでいただけるアプリやサービスもない」とKDDI広報は説明しています。
国内法人展開から見えてくるWindows 10 Mobileの可能性
IS12Tは当初から個人向けにも販売したものの、キャリアメールやCメールの対応は品質が低く、アプリやサービスもない状態で、一般のユーザーに大きな不便を強いるものでした。その後、国内におけるWindows Phone市場がどうなったのかは周知の通りです。
そのため、日本で再びWindowsスマホを立ち上げるためには、同じ過ちを繰り返すことがないという根拠が求められます。そういう意味では、KDDIはもちろん、NTTドコモと組んだVAIOを含め、国内への本格展開を狙うWindows 10 Mobile端末は法人向けを主眼に置いており、先行事例をよく研究していることがうかがえます。
もちろんその先には、一般向け展開も期待されるところです。日本HPは法人スマホ市場において、2019年度にはWindows 10 Mobileが14%のシェアを獲得するという、調査会社の予測を引用しています。新たなプラットフォームが立ち上がり、これからの3年でしっかりと存在感を示すことができれば、さまざまな可能性が開けることになりそうです。
【2016年2月25日12:00】一部、記事を追記致しました。
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