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FinTechスタートアップがメガバンクと本格連携

みずほの銀行口座が家計簿化!Moneytreeとの連携で取引履歴を一生見られる

2016年02月22日 18時15分更新

「みずほダイレクト」がMoneytreeのオープンAPI「MT LINK」を活用して新サービスを発表

 みなさん、こんにちは。ASCII(週刊アスキー+ASCII.jp)の吉田でございます。さて本日2月22日、3大メガバンクの1つであるみずほ銀行と、スマホ向けの資産管理アプリをリリースしているMoneytreeの提携が発表されましたよ。会見場所は、東京・大手町のみずほ銀行本店。登壇者は、株式会社みずほファイナンシャルグループ インキュベーションPT PT長である阿部展久氏と、マネーツリー株式会社の代表取締役社長であるポール・チャップマン氏。

「みずほダイレクト」では、従来は過去3カ月しか参照できなかった口座取引記録を、Moneytreeとの連携により無期限かつセキュアな状態ですべて取り出せるようになります

 チャップマン氏によると「大手金融機関とFinTech企業がこのように提携するのは初」とのこと。

マネーツリー株式会社の代表取締役社長であるポール・チャップマン氏

「みずほダイレクト」アプリの機能向上計画。2016年4月に提供されるのは「一生通帳」のみですが、今後は口座残高の合計表示など「Moneytree」アプリの機能を取り込んでいくようです

 FinTech企業と金融機関の連携の動きとしては、昨年発表されたマネーフォワードと住信SBIネット銀行との提携が記憶に新しいですが、こちらは「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行」という専用のスマホアプリを提供するカタチでした。

同様の資産管理アプリをスマホ向けにリリースしているマネーフォワードは、API連携ではなく住信SBIネット銀行向けにアプリをリリース。オンラインバンク用とは別のアプリになっています

 みずほ銀行とMoneytreeの場合は、あくまでもAPI提供のみで「みずほダイレクト」のユーザーは従来のアプリをそのまま使えます。ちなみに「みずほダイレクト」のアプリは野村総合研究所が開発しています。

「みずほダイレクト」アプリ内に「一生通帳 by Moneytree」として機能が組み込まれるため、アプリの別途インストールは不要

 既存のシステムに新しいテクノロジーを組み合わせる場合、データの互換性やセキュリティーの点がネックになってくるため、連携はなかなか難しいと思います。たとえばPOSレジは、iPadをはじめとするタブレット用のアプリが人気ですが、既存の大手メーカーのPOSレジのデータやシステムと連携させるのはいまだに難易度が高いですよね。ガチガチにセキュアな銀行の勘定系システムなんて、その最たるもの。しかし、API連携というカタチを採れば、既存の勘定系のシステムを一切いじることなくアドオン的な感じで組み入れることが可能になります。

 「みずほダイレクト」内に4月から用意される「一生通帳 by Moneytree」という機能は、まさにアドオン的なもの。一生通帳で参照できる取引履歴は、「みずほダイレクト」のもともとの機能で参照できる3カ月ぶんの取引履歴とは別に、 Moneytree側のサーバーに記録されます。もちろん、Moneytree側が取得している情報の大元は「みずほダイレクト」のデータですが、データの取得だけなので、銀行の勘定系システムと直接、というかディープに連携しないのがミソです。

 となると心配なのがMoneytree側のセキュリティーですが、こちらは一般社団法人日本プライバシー認証機構(JPAC)が国内で認証付与を実施している「TRUSTe」マークを取得しています。TRUSTe自体はワールドワイドで展開している認証マークで、第三者機関よりシビアに調査されたあとに認定を受ける仕組みです。IBMやインテル、ディズニーなどの世界的企業も取得しているマークです。

2016年4月から、「みずほダイレクト」アプリ内で口座取引情報を期限なくさかのぼって参照可能になります

すべての取引履歴を把握できるので「みずほダイレクト」を家計簿代わりに使えますね

 みずほ銀行の阿部氏によると、今後は、「みずほダイレクト」アプリのUI/UX、金融サービスなどについてもMoneytree、野村総合研究所と協力して開発していきたい」とのこと。

 現状では、みずほの預金口座の履歴を期限なく閲覧できるだけですが、「Moneytree」のアプリでは、他行の銀行口座情報やクレジットカードの利用履歴、ポイントカードの残ポイント数なども管理できます。阿部氏は、「今後はこういった情報も『みずほダイレクト』で利用できるようにしたい」とのことでした。このままMoneytreeのMT Linkと「みずほダイレクト」の連携が進むと、メインバンクを選ぶうえでの重要な判断基準の1つになりそうです。

チャップマン氏は、MoneytreeのMT LINKを「FINTECH OS」と表現。オンラインバンクと結びつくことで、サービスの向上が期待できますね

 可能性が高まるのが「みずほダイレクト」アプリ上での金融商品のレコメンド機能でしょうね。Moneytree(MT Link)では各種取引データを、住宅ローンや家賃、電気料金、クレジットカードなどに自動分析して記録してくれます。例えば、各種保険や住宅ローンの引き落とし額がわかれば、支払い額がより少ないオトクな金融商品を「みずほダイレクト」の利用者に勧めるといったことも可能になるかもしれません。

iOS版、Android版(β版)の「Moneytree」アプリでは、みずほ銀行以外の銀行口座やクレジットカード、ポイントカードの利用明細や残高などを一元管理できます

 阿部氏によると「みずほには2400万超の口座があるが、その中で『みずほダイレクト』を利用している人は数十万人」とのこと。つまり、全体の5%に満たない人しか使っていないわけです。みずほ銀行としては今回の提携による機能追加なども含めて、より多くの人に「みずほダイレクト」を使ってもらう取り組みを考えているそうです。

 なお、Moneytreeの既存ユーザーであれば、「みずほダイレクト」にログインしたあと、一生通帳の画面でMoneytreeのアカウントとパスワードでログインするだけで、預金口座の取引履歴を期限なしで参照できるようになります。

 ハードルが高いと思われるのが、Moneytreeを使ったことがないユーザーの新規登録。この点については、「みずほダイレクト」の一生通帳のページから新規登録できるようになるそうです。チャップマン氏、阿部氏とも「新規登録の手順などはまだ開発中」とのことですが、「みずほダイレクト」にログインした状態での新規登録なので、おそらくMoneytree登録用のメールアドレスとパスワードの入力ぐらいで利用可能になると思われます。その後は、「みずほダイレクト」はもちろん、「Moneytree」アプリ側でも登録状況が反映されるので、アプリの初回起動時にMoneytreeアカウントでログインするだけで、みずほの口座情報を参照できるようになるでしょう。

4月に「みずほダイレクト」アプリに実装される「一生通帳 by Moneytree」から、Moneytree(MT LINK)の新規登録が可能になります

 Fintechといえば、VISAカードがクレジットカード機能を他サービスで利用できるオープンAPIの提供を始めたほか、MasterCardもMoneytreeを含む世界のFintech企業と連携(MasterCard Start Path Partners)を発表済みです。

世界最大のクレジットカード会社であるVISAは、決済をはじめとするクレジットカードに備わるさまざまな機能をAPI化してオープンに提供していくことを発表済み

MasterCardは、全世界でMoneytreeを含む4社を「MasterCard Start Path Partners」に選抜して、今後さまざまなサービスを共同開発していく計画です

 IBMもBluemixと呼ばれるセキュアなPaaSを提供して、スタートアップ企業が開発したサービスを低コストで安全・安心して運営できる環境を整えつつあります。金融系(FInTech)だと、サービスを提供するプラットフォーム選びはかなり重要ですね。

スタートップ企業がクラウドサービスを展開するのに欠かせないのが、セキュアなプラットフォーム。IBMは「Bluemix」と呼ばれるセキュアなPasSを提供しています

 さらに、パッケージ型の会計ソフトの分野でトップシェアの弥生会計、税理士向けクラウド税務・給与システムでトップシェアのA-SaaS(エーサース)などもMoneytreeのMTLinkを活用しています。

会計ソフト、サービスでトップシェアの弥生会計もMoneytreeと提携しています

税理士向けクラウド税務・給与システムでトップシェアのA-SaaSもMoneytreeのデータを取り込むことが可能

 最大手のクレジットカード会社やエンタープライズ分野に強いIT会社、会計サービスを提供している会社などが続々と参入するFinTech業界、今年はさらに加熱しそうですね。

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