スマホの販売が好調なファーウェイ。2015年は1億台以上の端末を販売し、サムスン、アップルに並ぶ「年間億を売るメーカー」となりました。しかし、同社は端末だけを製造する会社ではありません。インフラなどキャリア向けの設備も手がけるほか、ネットワークを含めた総合ITソリューション企業としてさまざまな分野に進出しています。
そんなファーウェイの最新技術をアピールするイベント「Huawei Innovation Day」が年に数回開催されています。2015年は6月にミュンヘン、11月にシンガポールで開催。毎回テーマを絞った内容で開催されており、シンガポールのイベントは「スマートシティー」でした。スマートシティーと言う言葉はたまに聞くことがあるかもしれませんが、その目指す世界はどのようなものなのでしょうか?
すべての物と人がつながり実現する
スマートシティーの特徴とは?
スマートシティーと聞いてもピンと来ないかもしれませんが、携帯電話が高機能&多機能なスマホに進化したように、都市のスマート化を目指したもの、それがスマートシティーです。街中にある広告(デジタルサイネージ)や監視カメラから、バスの運行、水道などのエネルギー管理など、あらゆるものがつながり、そしてスマホを通じてそこに住む人々がそれらの情報をシームレスに利用できる、そんな世界を実現するのがスマートシティーというわけです。
いまやIoT機器の登場で身の回りのものが次々とつながる時代ですが、スマートシティーはそのIoTがより広い範囲で利用され、都市機能そのものが相互に接続される、そんなイメージで考えるとよいでしょう。このスマートシティーの構築は1社が行なうのではなく、政府機関に加え、業種を超えた企業間の協業が不可欠です。
Huawei Innovation Dayでは各国の通信事業者や政府関係者がスマートシティーへの取り組みの説明を行ないました。インドネシアからはTELKOM Indonesiaがそのフレームワークを紹介。インドネシアは急激に都市化が進んでいますが、大雨による洪水の被害が都市部でも年中あり、それによる都市機能の障害が大きな問題になっています。また、地方からの流入者増によるゴミ増大に処分が追い付かず、道路は常に渋滞しています。さらには教育や医療の拡充も追いついていません。
TELKOM Indonesiaは有線/無線ブロードバンドの構築、交通機関用ブロードバンドのバックボーン整備、クラウド・データセンターやビッグデータ解析ソリューションを2020年までに構築して、都市のスマート化を進める予定です。そして、インフラを整備するだけではなく、それを管理するソリューションも構築します。
ファーウェイはこれらいずれの分野にも製品を持っており、インドネシアのスマートシティー化を後押ししているとのこと。たとえば、ゴミ箱にセンサーを内蔵すればゴミの量に応じてすぐにゴミ回収車を手配できますし、バスやタクシーにGPSを完備し、信号と連動させれば渋滞を減らすことも可能です。また、雨量センサーと排水システムを直接接続すれば大雨を察知し洪水を防ぐことも可能になるわけです。もちろん道路や排水管の整備など、政府側の対応も必要です。
すでに上海などでは実証実験が進む
センサーの配備とビッグデータの解析が要に
スマートシティーが現実のものになれば、旅行者が現地を訪れても高速なインターネット回線を自国のように自由に利用できますし、天気予報やバスの時刻、渋滞情報、果てはレストランの空席情報などをスマホで即座に手に入れることができるようになるわけです。アプリやインターネットサービスとしてそれらが提供されるのではなく、都市そのものがあらゆる情報を人々に提供できる環境を構築する、それがスマートシティーの狙いなわけです。
ITIF(Information Technology and Innovation Foundation、情報技術イノベーション財団)によると、実際に中国の上海などではすでにスマホを使ったスマートシティーソリューションの取り組みが始まっているとのこと。病院の予約からスーパーでの買い物までを、スマホやスマートTVを使って行なう実証実験が実施されています。
ここまで説明したように、スマートシティーの構築には高速な通信環境に加え、あらゆる物へセンサーを搭載することが必要となります。温度、湿度、騒音、光量、紫外線、雨量、振動、重量、さらには臭いのセンサーが街中のあらゆるところに取り付けられるようになっていくでしょう。そして、センサー同士が高速回線でつながり、データを収集した後はそのデータの解析、すなわちビッグデータ解析が必要です。ファーウェイはその中でもインフラの構築部分で世界的に大きなシェアを持っており得意としている分野です。
また、データセンターの運営構築にも力を入れています。スマホメーカーとしてのイメージが強いファーウェイですが、スマートシティー分野でも今後重要なプレーヤーになっていくようです。
スマートシティーの狙いは豊かな生活を提供するだけではありません。もうひとつ重要なテーマは「安全」です。最近では、都市で犯罪が起きても街中に設置された監視カメラの映像から犯人が割り当てられるケースも増えています。スマートシティーは監視カメラやIP電話を活用し、街中の様子をリアルタイムに監視、異常事態にはすぐに対応できるようになるとのこと。
実際にファーウェイが提供するソリューションを利用したドバイのUCC(City Unified Control Center、市内統合コントロールセンター)のソリューション例が紹介されました。なお、この監視ソリューションはあくまでも犯罪や異常事態を速やかに把握するために利用されるもの。人々を監視することが目的ではなく、今後スマートシティーを構築していく際は個人データの扱いなどプライバシー保護の取り組みも重要になっていきます。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります