決め手は「人力フィルター」
── 具体的にはどういう障害を想定したんですか?
まず、どんなコメントがどれだけ来るかわからない。「あるコメントが来たらシステムが落ちる」ということも、実装によってありえます。それが読めないため、ニコファーレで使っているシステムを2式用意して動かしても、コメント由来のバグを踏んだら2つ同時に落ちてしまう。それじゃバックアップにならないと。
── どうしたんですか。
Unityでまったく同じ動きをするクローンを作ったんです。コード流用ゼロで。
── そんなことできるんですか!
別のスタッフがまったく同じ演出を動かして、コメントを出すところだけつくったんですね。コメントの出し方は決まってるので、その方法にのっとって生放送をすればいい。Unityで「副」を作ることで、正・副の2つができたんです。
── それでバックアップが担保できたと。
あとは、ネットワークが落ちたらコメントが落ちます。エマージェンシーとして、生放送じゃないけどそれっぽいデータを作った。「正・副・エマージェンシー」の3方向を作り、ボタン1発、マウス1つですべてを切り替えられるようにしたんです。これでシステム上に何が起きても大丈夫だと。
── その装備で本番に備えた?
いや、まだあります。コメントの中身です。
── NGワード指定じゃ足りないんですか?
いくらNGを強化しても変なコメントが出るのは避けられないんです。いわゆるネガティブワードだけじゃない「番組に出したくない単語」というのもあります。そこで99.999%の精度を求めるためにはそれじゃいかん。それで今回採用したのが、「全部人の目で見る」。
── じ、人力フィルター!
でも、人がチェックすることでリアルタイム性が落ちたら話にならない。実況コメントを現地に入れたい。盛り上がりで「すげえ」と入れたいし、サビの終わりには「88888888」と入れたい。そこにウソはつきたくなかった。タイムラグをおさえるにはどうすれば、いかに短い時間で人の目でチェックすべきかと考えたんです。
── どうしたんですか。
10人の監視員を置いて、来たコメントが入力された瞬間、空いているに端末に表示するようにしたんです。まっくらな画面にコメントがポンと表示されて、「アリ」「ナシ」を判定してボタンを押す。
── めちゃ人力ですね……その機構、今回のために開発したんですか?
はい。1から作りました。
── そこまでやる必要あったんでしょうか。
正・副と人力フィルターは、話を聞いたときから「やった方がいいだろ」と。個人的には「荒れることはないだろう、絶対盛り上がるはずだ」と思ってたんですが、そこに100%を求めていくことに紅白の重みを感じました。
── ツイッターではコメントに使ったフォントも話題になっていましたね。
あっ、あれはかなりわたしの趣味が入ってるんですけど……。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります