アウトドアスマートウォッチ 3月下旬発売予定
カシオ最強のスマートウォッチ発表 5気圧防水でMILスペックです(ニッコリ)「WSD-F10」
カシオ計算機が6日、ついにスマートウォッチを発表した。想像以上に異様だ。そして近未来的でもある。よって本稿は、わたしがお正月休みにはまった近未来SFアニメ「サイコパス」禾生壌宗局長を意識した口調でお届けする。
製品名は「Smart Outdoor Watch WSD-F10」。Android Wear OS搭載スマートウォッチでありながら、5気圧防水、MIL規格(米軍採用基準)の耐環境性能を備える製品だ。3月下旬発売で、予想実売価格は7万円。
カシオが設定したカテゴリーはスマートアウトドアウォッチ。スマートウォッチは汎用機であるという発想を逆転させ、野外専用ギアを開発した。
カシオファンの期待にこたえるヘビーデューティなスペック、画面に仕込んだ二層液晶のギミック、すいすい高速動作するインフォメーションセンターなど心惹かれる点の多い製品だが、まずはバッテリーの話から始めよう。
時刻を常時表示するスマートウォッチ
バッテリー持続時間は公称値で約1日以上。スマートウォッチ機能を切って時計だけを表示すれば約1ヵ月以上はもつ(タイムピースモード)。充電用の端子はマグネット圧着式、電気ケトルなどで見かける方式だ。
バッテリーの持ちが並みでありながら、画面を常時表示できるのは強みの1つ。「操作しないと時刻が見られないというのは腕時計として使い勝手を損ねている」という考えのもと、白黒の時刻画面をつねに表示している。
白黒画面の時刻表示は、ボタン操作でカラー表示のスマートウォッチに切り替わる。白黒画面は高コントラストで視認性が高い。同社のアウトドアウォッチ「PROTREK」などに使ってきた二層液晶技術を応用したものだ。
カラー表示のウォッチフェイスは変更可能。デジタル・アナログの切り替えはもちろん、高度情報などアクティビティ関係情報の表示もできる。液晶画面は手袋でも操作できるので諸々はかどるだろう。
カシオ社内のホールで見たかぎり、フェイスのガラス面はいささか蛍光灯の反射がきつい印象も受けたが、画面の視認性はとても高かった。
さて。本機でおもしろいのは、アウトドア専用機ならではの機能性だ。方位(磁気)・加速度・ジャイロ・圧力(気圧・高度)センサーを内蔵し、トレッキング・サイクリング・フィッシング、3種類の機能を搭載する。
方位・気圧・加速度・ジャイロセンサーを搭載
まずはプリインストールアプリ。カシオ独自開発またはパートナーのアプリによって、見たいときに情報を確認できる。登山なら方位・高度・気圧、フィッシングならタイドグラフ、サイクリングなら活動量などだ。
次が速度や経過時間、ペースなどの累積情報を確認できるアクティビティ機能。トレッキングなら往路までの残り高度。サイクリングなら現在速度。フィッシングなら気圧の変化などを表示し、自身の行動履歴を確認できる。
最後は通知機能であるモーメントセッター。日の入りが近づいたときに振動するといった通知ができる。
以上にくわえ、レンズ独立型デジカメ「EXILIM EX-FR100」とペアリングしてシャッターを切れる専用アプリも用意する。
たとえばザックの肩ヒモにEX-FR100をつけておけば、スマートウォッチで撮影画面を見ながら登山中の写真を撮影できる。スマホのように落下の恐れもなく、液晶画面は手袋をはめていても操作できるため、便利であろう。
チラリと見ればすぐに情報がわかる、どんな機能があるかわかりやすい。スマートウォッチを腕時計とおなじレベルのリストウェアとして使えるようにするため、カシオが凝らした最後の工夫はハードウェアだ。
マイクを搭載しながら5気圧防水
仕様については冒頭にも述べたが、防水・耐環境性能に優れる。マイクを搭載しつつ5気圧防水を実現するスマートウォッチは他社に類を見ない。耐環境性能はMIL-STD810Gに準拠、落下や振動などの衝撃に強い。
画面はカラーTFT+モノクロの1.32インチ2層液晶ディスプレイ、解像度は320×300ドット。操作ボタンを右側に3つ備える。アプリを呼び出す「TOOL」、電源、機能のショートカットを割り当てる「APP」だ。
なおアプリによっては操作ボタンをそれぞれに割りあて、たとえばカメラのシャッターをボタンで切るといった操作ができる。
TOOLボタンからコンパスや高度計、気圧計などのアプリを呼び出し、指先で動かすときの動作はとてもなめらかだ。「感応的に、いいものを使っているなと感じてもらう」(担当者)ため、調整に心をくだいたと話していた。
本機の未来感を担うのは、このTOOLだ。数値やグラフがシームレスにすいすい切り替わる様子は、まるでSF映画に出てくるインフォメーションセンターだ。学校や会社に行っているときも高度や気圧を確認していきたい。
無線はWi-Fiが802.11b/g/n、Bluetoothがv4.1(Bluetooth LE対応)で、ペアリング先のスマートフォンOSはAndroid 4.3以上、iOS 8.2以上だ。
なお、GPSモジュールは内蔵しない。ペアリングしたスマートフォンのGPSを活用する形だ。スマートフォンを使わなくても一部機能は使えるが、情報蓄積にはスマートフォンを使うためペアリングが必要になる。
以上のとおり本機はかなり異様なスマートウォッチだ。思想・設計・発想・機能すべてにおいてアップル「Apple Watch」にはない高揚感がある。それはデザインについても言えることだ。
アップルにはない高揚感がある
本機のサイズは幅56.4×高さ61.7×厚み15.7m、重量はベルトをふくめて約93g。カラーバリエーションはブラック、レッド、グリーン、オレンジの4色。その印象は、とてもごつい。
発表会場を訪れていた写真家・荻窪 圭氏が装着していたApple Watchと比べてみると、分厚く、でかく、硬そうだ。しかし装着感は悪くはない。わたしが保持するカシオの腕時計「Edifice」より軽く、手首が疲れることもないだろう。
なによりその動作とデザインには、心をくすぐる「モノ感」を強くおぼえる。子供のころに夢見ていた未来に近い感覚がある。
ここからはわたし個人のかなり勝手な見方だが、Apple Watchは左腕に装着するiPhoneのようなものであり、さながらiPhoneの再発明である。触覚技術の発展には期待したいが、心を動かすにはいささか距離がありすぎる。
一方、本機はスマートウォッチ機能をフル装備した腕時計である。アップルがiPhoneによって携帯電話を再発明したとすれば、カシオは本機によって、アウトドアウォッチを再発明したと言ってもいいのではないか。
ビジネスとして考えれば、スマートウォッチをiPhone/Androidスマートフォンの延長線上に位置づけるのはセオリーだ。生体情報を記録する優秀な個人情報送信機として、次なる高度情報化社会を形づくる可能性さえ秘めている。
もう誰も読んでいないと想定して脱線するが、冒頭に述べたSFアニメ「サイコパス」は、人のストレス状態を監視できる時代の話だ。アニメと現実の区別がつかないわたしはスマートウォッチがその端緒に感じられて恐ろしい。
一方、本製品はその恐ろしさが薄い。明るく、健やかで、子供のように無邪気な技術者の笑顔が浮かんでくる。時代が何を選ぶかはわからない。カシオが儲かるのかどうかもわからない。だがわたしはカシオの味方でありたいと思った。
Smart Outdoor Watch WSD-F10
防水性能:5気圧
耐環境性能:MIL-STD810G
画面:1.32型静電容量式タッチパネル 2層液晶(カラーTFT+モノクロ)
解像度:320×300ドット(カラー)
バッテリー:約1日以上(通常使用)、約1ヵ月以上(時計のみ)
充電方式:マグネット圧着式充電端子(充電時間は常温で約2時間)
センサー:方位(磁気)/加速度/ジャイロ/圧力(気圧・高度)
無線:Wi-Fi(802.11b/g/n)、Bluetooth v4.1
操作ボタン:3個(TOOL/電源/APP)
マイク:あり
サイズ/質量:幅56.4×高さ61.7×厚さ15.7mm/約93g
OS:Android Wear
対応スマートフォン:Android 4.3以上、iOS 8.2以上
カラー:ブラック、レッド、グリーン、オレンジ
発売予定:3月下旬
予想実売価格:7万円
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