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アインシュタイン十字の発光から約1年、時間差の重力レンズ効果を確認

歴史上初、ハッブル宇宙望遠鏡が超新星の光を予測して撮影

2015年12月24日 17時21分更新

銀河団MACS J1149.5+2223。丸で囲まれた部分が超新星の光 (NASA & ESA and P. Kelly (University of California, Berkeley))

 ハッブル宇宙望遠鏡は12月11日、超遠距離の銀河団MACS J1149.5+2223において、超新星爆発の光を予測して撮影することに歴史上初めて成功した。

 MACS J1149.5+2223は地球から93億光年という遠距離にある銀河団で、ハッブル宇宙望遠鏡は昨年の2014年11月11日から、ひとつの銀河の周囲に超新星の光が次々と(回り込む距離による時間差で)と光り始めたのを確認した。

到達する超新星爆発の経路。銀河を大回りして到達するため、そのぶん遅れて観測される (NASA & ESA)

 これは「アインシュタイン十字(クロス)」と呼ばれ、光が銀河の重力によって曲がって周囲に複数見える重力レンズ効果で、アインシュタインが予測した天体現象。アインシュタイン十字自体はクエーサーの光などですでに確認されているが、超新星爆発によるものとしては初。さらに、一般相対性理論の発表から100年にあたる今年に観測されたということで話題となった。

 今回の観測も同じ超新星の光。スペインの研究チームは銀河団の配置から光が回り込むための距離と到達する時間の遅れを計算し、アインシュタイン十字が見える銀河の隣にある銀河の反対側にもうひとつ光が見えるだろうと予測した。ハッブル宇宙望遠鏡は待ち構えて銀河団を撮影。予測は見事に的中して新たな光点が生じているのを確認した。

 重力レンズ効果の実証に加え、正確に予測できたことは現代の天文学が銀河の位置関係や質量を推定できることを示している。また、この種の現象を観測する精度が高まれば、光によって観測できない銀河間の質量(ダークマター)の推測に利用できる可能性もあるという。

 なお、この超新星は正式名でないものの、重力レンズ効果と観測される時間の遅延に関する研究を進めたSjur Refsdal(ノルウェーの天体物理者、2009年没)にちなんでRefsdalと呼ばれている。

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